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メンバー型、ジョブ型・・・そして第三の案「ミッション型」 【伝えきれるか!?後編】

2020年10月20日の記事「メンバーシップ型、ジョブ型・・・そして第三の案 ■■■■■■型 【やむなく前編】」で、メンバーシップ型やジョブ型の特徴や、ジョブ型に移行するフェーズと注意点、そして非ジョブ型=メンバーシップ型人事か?という疑問から、ミッション型(造語)という人事制度を第三の選択肢としてお伝えしました。
本当はもっとサクサクと、1つの記事で5000字くらいで伝えたかったのですが、表現力と要約力の問題で前後編にわたってお伝えすることになりました。
↓↓↓ 前編の記事はこちらをご覧ください ↓↓↓

前回の振り返り

メンバーシップ型やジョブ型を「何で会社と社員が繋がっているのか?」ということに着目し、就社的なつながり方=メンバーシップ型、就職的なつながり方=ジョブ型と考え、私たちNBCコンサルタンツは「会社のミッションや、役割に求められるミッションを通じて、会社と社員を繋げる」人事評価制度の構築・運用のご支援を行っており、それを「ミッション型人事」という第3の選択肢と表現しました。

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ミッション型人事とは、経営ビジョンや中期経営計画を通じて、社員も自らの将来のビジョン(=キャリアプラン)を描き成長し、その結果として報酬を高める、という善循環を目指す人事評価制度です。

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9.「ミッション型」とは?

メンバーシップ型×ジョブ型×ミッション型の特徴を表で要約してみました。

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ミッション型の雇用契約は、基本的にジョブ型ではないので労働条件ですが、メンバーシップ型のように就社型とも違い、その会社のミッション、ビジョンという社会的な意義に共感することが前提になります。
上記もあるため、採用の特徴はその企業文化にあっているか?いわゆるカルチャーマッチでの採用です。カルチャーマッチと言っても同質の人材を採用してては組織硬直化するので、変化を楽しめる人材がキーワードではないでしょうか。
次に仕事の幅は、ジョブ型ほど細分化するのではなく、役割グレードに基づいて、求められる役割と果たすべき職責、期待成果が定義されます。ミッション型と名付けた所以は、経営目標・組織目標の達成(=ミッション)のため、役割・職責・期待成果(=ロール)に基づいて、ヒトにミッションを落とし込んでいくためです。
評価・報酬は、経営課題の解決や組織のミッションの達成、役割・職責で定義された期待成果の範囲でその達成度を評価したり、カルチャーを体現する独自のコンピテンシー(行動特性)で評価をします。
最後に雇用形態としては、長期雇用ですが年功序列ではなく、役割グレード制度やキャリアパスに基づいて、自らのキャリアプランを考えたり、マネジメントとエキスパートを選択出来たりと、複線的な人事制度に基づいて、持続的な変化・成長を促す仕組みを取り入れ、中長期的な人材育成に繋げる施策を持っているのが特徴です。

10.組織にミッションを落とし込もう! その具体的効果は?

では具体的に、どのようにミッション型の人事制度を展開しているのか、少し事例を見ながらお伝えしていきます。

組織にミッションを落とし込む際、まず大事なのがロールを明確にすること、つまり組織のどの階層の役割に、どのような責任があるのか、どのような権限があるのかを明確にすることです。
↓↓↓ こちらの記事でも書いています ↓↓↓

組織の階層が部門によってバラバラ、役職ばかりが増えて役割・責任が不明確など、組織の課題がある場合には、上記のリンク記事に目を通していただくと、具体的事象や原因と対処法をまとめていますのでご参考下さい。今日はサクサク進めたいので、少し事例を交えます。

【 ロール(役割と職責)を明確にする 】

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組織の階層に合わせて役割グレードとそれぞれに求められる職責を、私たちの場合、組織運営の責任、業績達成の責任、部下育成の責任、業務改善の責任という4つのフレームで明確にします。
ジョブ型のように職種別の職務一覧をつくるのとは異なり、役割グレードに合わせた役割、範囲、責任、権限をまとめることです。これに多少、部門ごとに合わせて補足する程度です。

組織の分析により役割・職責表を作成し、ディレクターやマネジャーを交えて議論をすることで、自分たちの役割範囲や職責の理解を深めて頂きます。今はディレクターが担っているけど、本当にそれはディレクターの役割・職責なのか?本来はマネジャーの範囲ではないか?など議論をすることで、曖昧な役割・責任を具体化するとともに、自身の棚卸、組織設計の在り方を理解することで、組織の課題を共有したり、認識を共通化できていきます。

それらの議論をするからこそその後の組織運営でも
 ・ 役員とライン責任者の指示のダブルスタンダードが解消されたり
 ・ これまで何でも現場の責任だったのが、ディレクターやマネジャー
   が責任をもって解決に臨むようになった
 ・ 上記の副次的効果として、現場からマネジャーへの信頼性が
   高まり報連相と解決のスピードが速くなり、組織が活性化した
   などのお話をよく聞きます。

現在の給与と、役割・職責の範囲が、あるべき役割グレード、役割・職責との間に負のギャップ(現在<あるべき姿)がある場合、降格や降給、または猶予期間を設けた処遇などを検討する必要が出てきますが、それが組織の健全性を保つポイントでもあります。これが従来は不明確であったため、メンバーシップ型によくある年功に繋がっていたのです。
会社-人事-ギャップがある社員のお互いが、フェアにテーブルの上で、真摯にロールや自分のミッションに向き合うことが重要です。曖昧にしてきた会社にも責任があるわけですし、フリーライドしてきた本人にも責任があると思います。

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【 組織のミッションを明確にする 】

ミッション型人事の最重要ポイントは、いかにミッションを組織に落とし込むかということで、一つは形式的な落とし込み、もう一つは実質的な落とし込みです。

①形式的な落とし込み
まずは組織のミッション(=共通目標、経営計画など)を、それらを展開する役割の部門責任者に共有し、部門責任者間で各部門の目標、戦略、計画を策定します。
加えて重要なことは各部門のミッションを部門責任者間でつまびらかにし、お互いにその目標、戦略、計画が適切なのかをディスカッションして、納得して取り組むことです。

次の段階では個人に落とし込み、評価指標として取り組むので、会社のミッションの実現の成否にもつながるし、評価の成否、ひいては賞与や昇給にもつながるので、このステップを飛ばすと検証の段階で、そもそもこの目標が妥当だったのか?とか評価の段階で、そもそも目標が甘かったから高い結果に繋がったなどの後出しジャンケン、水掛け論になってしまいます。

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上記のように重点目標と、人事評価に直結する場合には達成水準などを、部門間で協議して、赤字の補足のように各部門からの意見を反映して、合意形成してコミットすることが重要です。

 「どういう物差しで検証するの?」
 「そのチャレンジ低くないですか?」
 「それだと、範囲が広くないですか?そこまで責任持てますか?」

たまに議論を促すこちらがヒヤヒヤすることもありますが、お互いに思ったことを言える、議論をして納得するプロセスは、議論をする本人たちの間で心理的安全性も同時の高まりが目に見えて分かる瞬間だと思います。

この段階で、部門間で協力し合えるポイントを見出したり、他部門からのアドバイスによってさらに内容がブラッシュアップされるとベターです。

②実質的な落とし込み
形式的な落とし込みが、組織に基づいて 全社→ 部 → 課 とブレイクダウンしていくものに対し、実質的な落とし込みは、組織のメンバーに腹落ちさせるということです。(自分事化
最近、オンラインでの経営計画発表会や部門別の目標落とし込みのためのミーティングを行うことが多いです。

その中では
 ・ なぜこの目標に取り組むのか?
 ・ なぜこの目標値なのか?
 ・ これが達成出来たら社員の皆さんに賞与や昇給に
   どのように反映されるのか?
1.5~2時間ほど説明会を行い、個人目標の設定に取り組んで頂きます。

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(オンラインでの全社・部門の目標説明の一場面)

人によっては聞いていないとか、理解の差がでたりとありますので、図のようにクラウド人事評価の画面共有しながら、前期の振り返りや今期の目標などを見せて、共通認識を作っていくこともあります。

↓↓↓ クラウドの人事評価についてはこちら ↓↓↓

クラウド人事評価であれば、明確に部門や全社の目標が、1人ひとりの画面に表示されるので、方針や目標を落とし込むには良いツールだと思います。

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ジョブ型人事評価を組織に落とし込むにあたって重要なことは、部署別のジョブリストとジョブの標準化をいかに進めるかだと思いますが、ミッション型人事評価を組織に落とし込む際の重要なことは、組織のコミュニケーションを怠らないことだと感じます。
明文化はされているが、誰も自分事化できていなかったり、認識と理解の差に大きくバラツキがあるというのが、組織の常です。取り組み例を挙げながらお伝えしてきましたが、どの例をとっても繰り返し、様々なツールを使ったり、機会を設けて伝えていく、会社と社員との溝やズレを埋めるためにコミュニケーションをとり、ミッションに向かっていく組織となっていくことが重要です。

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11.ミッション型に移行するフェーズは?

 これまで事例を通してお伝えしてきたポイントを、フェーズに落とし込むと下図のようになります。

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会社によっては人事評価に、目標達成度に加えて「行動特性評価」を設けたりしています。成果に繋がりやすい行動特性(コンピテンシー)に近い項目になります。
ミッション型の人事評価を取り入れる企業では、行動特性評価の項目は、その企業のバリュー(企業における共通の価値観)を取り入れて評価項目を作る場合もあります。業績貢献度だけではなく、カルチャーマッチした行動特性を発揮しているのかという観点です。
とはいえ、バリューは文章化されており、少し抽象度が高かったりするため、要素分解したり、定義や評価基準にブラッシュアップするため、日常の仕事の中でどういうことを体現して欲しいか具体化する必要があります。そして大事なことは、評価する人によってバラつきを少なくするため、抽象的な表現にしないということも大事です。

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これはある製造業の人事評価フォーマットで、行動特性評価項目の一部ですが、当該企業では医療系の製品を取り扱っていたため、作業上の安全性や5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)などの基本的なことを徹底してやる風土をつくるため、評価項目にもそのような基準を取り入れました。

どのような貢献をしてほしいのか、日常業務でバリューに基づいて、どのような言動を行ってほしいのか、人事評価を通じて会社にとっての期待人材を明示し、それを評価と人材育成につなげることも、組織としての大切なメッセージではないかと思います。

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最後にはなりますが、ジョブ型にせよ今回お伝えしたミッション型にせよ、活用しブラッシュアップし続けることで、人と組織の持続的な成長を促す仕組みとして機能させる必要がありますので、一度制度を作って終わりではなく、そこからがスタートです。

持続的な成長のため、組織のビジョンと、社員のビジョンをすり合わせる機会をつくり、双方にとっての幸せな未来を描くことが重要で、社員にとってはいわゆるキャリアプランやライフプランに繋がります。

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よくWill、Must、Canの3つが重なるところが重要と言われますが、個人的には思考の順番が重要だと思っています。

まずはスタートのWillが最重要。例えば時間を忘れて集中できる仕事、最も価値を感じる仕事、自分らしく働き甲斐を感じる仕事、成長や成功体験を得られる仕事・・・人によって大事にしている価値観は異なるはずですから、カルチャーマッチした会社であれば、最も自分の心が動く仕事でパフォーマンスを発揮して、それが成果に繋がり認められキャリアップしていくことがミッション型では大事だと思います。

次にMustが重要で、Mustは「やるべきこと」ですから、自分のやりたいこと(Will)が、会社や自分が所属する組織の経営課題や事業領域を見て未開拓分野、事業のWeakPointを補完したり、会社や部門が掲げるビジョンで自分が貢献できる分野があれば、「やりたいこと(Will)」と「やるべきこと(Must)」が一致するわけですから、納得して取り組めるわけです。
これが一致していないと、Willが強すぎると会社からの期待値とずれるわけですし、Mustが強すぎると確実性は高いけれどもチャレンジ度が低いものになったり、モチベーションが続かなかったりします。会社と個人が納得して取り組むためのMustとのすり合わせだと思っています。

最後にCanですが、個人的にはWillとMustでベクトル一致した未来に向かって歩み始める第一歩で、自分の出来ること(Can)から着手することかなと思っています。出来ること(Can)からキャリアプランや将来ビジョンを考えると、目先のできることに行きがちでブレイクスルー思考が生まれてこないと思っています、なのでCanはスタートの第一歩の踏み出し方だと思っています。自分の持っている資源(Canの領域)が分かっていれば、それを活かして取り組み始める、何事にもスタートが大事で、スタートで出来ないと思ってしまっては先にも進みません。

私自身、クラウド人事評価に取り組み始めて商品企画、商品開発、マーケティング、セールス、コンテンツ作成、パイプライン・マネジメント、カスタマーサクセスと、弊社にとっては新規事業で多人数を割けないため、一人で何役もやることになりましたが、これがCanから考えていたら、自分のキャリアの幅を狭めていたでしょう。Will、Mustで自分と会社の折り合いをつけて、納得したから一人何役をこなしながらも、試行錯誤を楽しんでいるのが、今ここですね。

ということで、ミッション型人事評価の最後のポイントとしては、ミッションに基づいて人と組織の持続的成長を促すためのWill、Must、Canの使い方をお伝えしました。

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「~型」というモデルを議論することは、これまでの人事制度の是非を問ううえで大事ですが、それ以上に「~型」の制度を使って、会社と社員がどのような繋がりをもって事業を展開し、どのようなユニークな人と組織づくりをするか、どのような未来を共に歩んでいくのか、前回と今回の記事が御社での議論の一助になれば幸いです。


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