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中小企業はジョブ型の前に「ロール」が大事

クラウド・シップが6月にリリースされ、リリース説明会に参加された企業に、会社の組織・人事評価シートに合わせたデモを作成する特典をご案内しており、ご利用頂ける企業が増えてきております。

デモをつくっていると「この組織は、人事評価を進めにくそうだなぁ」と思う企業があり、その多くに共通するのが組織の単位・階層と、役職(または等級)が、整理されておらず、役割や責任が不明確な肩書が増え、組織との整合性が取れなくなっている実態です。恐らく給与を上げるために役職名(肩書き)で報いてきたというのが、経営者の本音、又は先代から連綿と受け継がれてきた組織になっているのだと感じます。今回はそれらの実情から人事評価の前に整備すべきことをお伝えしていきます。

日経comemo様#管理職は必要ですか に取り上げて頂きました。有難うございます!

中小企業の組織のナゼ

ご覧になっている皆様の会社で、下記のような組織になっていませんか?

✅ 役職者が社員数の3割を超える 
✅ 係や課はないけど係長、課長がいる
✅ 肩書きの上下関係が不明確
✅ 肩書きは変わっても役割と責任は変わらない
✅ 組織図は事業部・部・課・・・と所管が細分化されているが、兼任している組織が多い
✅ 役職手当は同じ役職でも、金額は人によってバラバラ

ナゼそうなってしまうのか?「給与での報い方が明確になっていない」ことが主な要因で、シンプルに構造化すると下記のような感じです。(風が吹けば桶屋が儲かるの理屈で、ちょっと大袈裟に書いています)

報い方が明確ではない
⇒ よく頑張ってくれている人を昇給させたいがため、役職に就ける
⇒ ポストが足りなくなる
⇒ 新しいポストを作る
⇒ なんとかリーダー、副や代理、補佐が増える
⇒ 組織の戦略までないから役割が不明確
⇒ 給与だけは上がる
⇒ 中高年の人件費が増える
⇒ 若手への昇格・昇給のためのポストと人件費枠が不足する
⇒ 若手のモチベーションが下がり、退職率が高まる

等級制度や、それに伴う昇格ルール、基本給やその他手当のテーブルが不明確なことが多いので、役職に就けて役職手当で昇給するのが最もシンプルな手法です。「君も●年、頑張ってくれてるし」と労をねぎらい、本人が納得すればいい訳ですから、経営者・幹部にとっても都合がよかったのです。
これが昨今、いわれる「メンバーシップ型」雇用の一端でもあります。

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メンバーシップ型雇用に対し、最近ではジョブ型雇用への転換が人事業界では話題になっていますし、皆様もよく耳にする言葉だと思います。
豊富に人材がいて、組織の機能と階層が明確で、その組織の中で各自の職務(=ジョブ)が明確で、業務シェアリングができ、それぞれの仕事のフローや課題解決フローが確立されていれば、ジョブ型はもっともな話だと思います。それらのジョブをアウトソーシングした場合の価格や、そのような職種・ジョブの市場での給与平均などから、職務給というかたちで報いることも可能でしょう。
しかし中小企業では下記のような実態がジョブ型への移行を妨げる、または取り組むには時間が掛かる(数年単位)経営課題になっていると感じます。

✅ 人員に余裕がないため
✅ 上記のためジョブを細分化して、誰がどの範囲の職務と割り切れない
✅ マネジャー陣も組織の中の職務の全体像を把握できていない
✅ 業務リストや業務フロー、解決フローが曖昧(又は特定の人に偏る)
✅ 上記を言語化して、標準化できる人が稀有(けう)
✅ 突発的な対応業務にマネジャー陣は時間を取られ、標準化やルール化に取り組みづらい
✅ 自分の仕事を抱え込みがち、合理化のための再アサインが進みづらい

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「ジョブ」の前に「ロール」を明確化

前述のようなことがあるため個人ごとのジョブを明確にすることすら大変ですので、人事評価を見直したり、再構築する際には、「組織のレイヤー」を明確にすることと、各階層の人たちに求められる「ロール」を明確にすることから取り組んでいます。そうしないと人事評価の際に、役割と責任にあった目標設定すらできず、その後の評価結果にも不公平さがでるからです。以降では「ロール」を明確にするフレームワークをお伝えします。

ロールを理解するために必要な考え方として「役職(=肩書き)」と「職位」を分けて考えるということです。以降は「職位」という言葉を使いますが、役職との違いは下記です。

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例えば職位としての部長を考えてみます。

部長=部の責任者(組織の階層と範囲)で、部の経営資源(社員、パートナー、設備、予算など)を活用し(権限や統率)、部のビジョン、目標、計画を描き実現(職責)する役割。
また他の部門の責任者と協業(組織連携)し、会社のビジョン、経営目標の実現、経営課題の解決に貢献する役割。

上記のようになります。よって職位とは①組織の階層・範囲(自部門の範囲と他部門との連携)、②職責が明確で、それを果たすための③権限や統率を付与されていることが重要です。

ロールとミッション(職責)は表裏一体

そして人事評価表などで目標に落とし込むにあたり、職責を更に具体化することになります。私たちが人事評価のご支援をする際には、管理者四責任というフレームワークで落し込みます。

1.業績責任(単年度の経営目標・KGI-KPI、中長期の部門目標)
2.人材育成の責任(組織の人員計画、育成計画、社員のキャリアアップ、成果創出・目標達成支援、評価・フィードバック)
3.組織運営の責任(意思決定を施策の実行に落し込む、組織の目標をブレイクダウンする、組織内の連携・意思疎通と報連相を受けて課題解決)
4.業務改善の責任(組織の業務プロセスの設計・標準化、継続的改善、新たな技術・テクノロジーの導入、生産性向上、働く環境整備)

上記の括弧内の補足は簡素化した表現ですが、4つの責任に基づいて、各職位の職責を明確にすると、目標設定の際の難易度のバラつき、視点のバラつき、画一的で毎期同じ目標設定ということが避けられ、各部門・部署の課題にあった目標設定が可能になります。

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人事評価を数年運用していると、目標設定が定型化したり、マンネリ化したり、難易度がおちたり・・・覚えがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?ロール(役割)とミッション(職責)を明確にする、そして会社や部門が経営課題やチャレンジ目標を掲げることで、上記の4つの責任の範囲で、自分が取り組むべき課題は何かを社員に考えてもらったり、社員を評価者がうまく導くことで、毎期、個人と組織が成長する目標管理、人事評価の運用ができるよう、私たちではご支援をさせて頂いております。

中小企業の場合、ジョブといっても、そもそもジョブの標準化、可視化、明確なアサインができておらず、所属部門とさらに入れ子のように他部署の業務の一部を兼任していたり、人の入れ替わりや組織の変更のためジョブが流動的という特徴もあります。
よってジョブに取り組む前に、役割(ロール)と職責(ミッション)を明確にして、主たる役割における職責遂行度合い、期待成果・アウトプットの実現とその評価をおこない、ジョブは流動的にして、必要に応じた業務アサインをして、従たる役割として遂行度合いや成果・アウトプットの評価を行うと、役割をベースにした評価ができるようになります。
人事評価の再構築や運用の見直しをお考えの方は、まずは自社の組織のレイヤーや職位に求められるロールの明確化から取り組まれてはいかがでしょうか?

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