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大木野なずな
2022年5月10日 17:50
“武藤の兄妹は何か変だ。” ――それが、うちの学年にひっそり染み込んでいる暗黙の了解。*** 昔から、女性の声が苦手だ。怒りの色が含まれたものは、特に。「武藤妹! どうにかしなさいよ、あんたの兄貴!」 ――お昼休み。 親友の久美と机をぴったりくっつけてお弁当を食べていたら、……荒々しい足音と共に顔も名前も知らない女子が教室に飛び込んできた。 鮮やかな茶髪が、蛍光灯に当
2021年8月24日 09:11
わたしは、ご飯が大好きだ。 作るのも、食べるのも、大好きだ。 書店でレシピ本を眺めてる時の気持ちはふわふわで、スーパーで買い物をしている時はわくわくで、台所で包丁を握っている際にはどきどきする。 味付けの瞬間は、ちちんぷいぷいの時間だ。 魔法の杖を振って、自分の脳味噌を取り出す作業を夢中にやる。 塩、こしょう、醤油、みりん、酒、めんつゆ……。 濃い目の味付け、薄目の味付け。