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大木野なずな
2021年9月20日 19:29
第五話 バチ、パチパチ……パチ、バチバチ……。 視線のはるか遠くで、真っ赤な火の粉が踊っています。 ――あの大きな家は、丸ごと、真っ赤に燃え上がっていました。 女の子は庭の畑に座り込むと、燃えている家の炎を頼りに、包みの中のものを数えだしました。 その包みは、蛇を助け出した時から背負っていたもので……中身は、重そうな木箱でした。 実際、本当に重かったのでしょう。 ……その木
2021年9月19日 18:34
第四話 その夜は、分厚い真っ黒な雲が、蜂蜜色のお月様を隠していました。 山の方は、葉っぱがガサガサと揺れたり、動物たちの鳴き声がしたりと少し忙しなかったのですが……山の麓の家の中は、静寂に包まれていました。 子どもたちの寝起きしている大部屋の障子へ耳をすませると、……すうすう、とゆったりとした寝息が聞こえてきました。 家の中の子どもたちは、どうやら、もう夢の中にいるようです。 大部屋の
2021年9月18日 19:34
第三話 それから、ゆっくりと季節が過ぎていきました。 蛇は変わらず、あの山の麓にある家にいます。 庭の茂みに自分の住処を作り、こっそり寝起きしているのです。茂みにいるのに飽きた時などは、縁の下を散歩したりもしていました。 そうです。 蛇は、山には帰りませんでした。 いえ、帰れなくなってしまったのです。 理由は大きく二つあります。 一つ目の理由は、女の子が塗ってくれた薬でした
2021年9月17日 09:59
第一話 むかしむかし、あるところに、頭の悪い蛇がおりました。 山に住むどの生き物よりも小さく、ぼんやりした性格だったその蛇は、たくさんの友達から小馬鹿にされて生きてきました。 フクロウさんは豊かな羽をわさわさ揺らしていつも笑います。「やあやあ蛇くん。君は相変わらず小さいなあ。そんなに小さいのでは腹の足しにもならないよ」 ネズミちゃんやカエルくんも、蛇を見るなりいつも駆け出します