なわこ

再構築

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滅入る冬、悴む手と節制の鬼

洗い物が億劫な時期になってきた。 嘘。本当はいつでも嫌。 ただ、冬は水で洗い物をするのが辛い。 油分が多い場合はお湯を使うが、基本は水。 お湯を使えばいいじゃん、という発想はない。 ガス代を節約したいから。 お湯を使った場合のメリットって、汚れが落ちやすいことと自分があったかいこと。 汚れは仕方ないにしても、自分の為に温かなお湯を使う必要はない。なんか嫌だ。自分を甘やかしているみたいで。 節制している、という状況が好きなんだろうな。 とはいえ、大分無意味である。 お湯が使

    • 姉妹百合は信じない4/4

      姉は結婚した。 入籍を済まし、料亭で顔合わせをした。 口下手でコミュ障な父親がブルブル手を震わせながら挨拶をしている姿は面白かった。 準備や挨拶、交流など慣れないことに全員がその人なりに頑張っていて、いい会だった。姉夫婦を想い、作られたこの時間がとても愛しく思えた。 挙式はせず、今は新婚旅行やフォトウエディングの予定を立てているらしい。 一悶着あったおかげか知らないが、私は少し大人になれたような気がする。 奔走して、一緒に悩んで、問題に一枚噛んだことで、今となっては姉が

      • 姉妹百合は信じない3/4

        そして話は3月の報告に戻る。 夜通し泣いて二重は消え去った。別人で笑った。 ショックで受け入れられていないのは事実。 でもそれが姉の望みなのだ。 いつものように私がなんの効力もない駄々をこねて、拗ねて、いじけている間にも、知らぬところでトントン話が進んでいくと思っていた。姉はみんなに祝福されて、幸せを重ねていくのだろう。私だってそれを望んだし、当然のように事が運ばれていくと疑わなかった。 この場でおかしいのは自分だけで、自分が姉の結婚についてどう向き合っていくかを考えて

        • 姉妹百合は信じない2/4

          仲が良くて羨ましいね。 姉の話をするとそんな風に言われることが多い。実際仲はいい。小学生の頃は些細な喧嘩が多かったが、お互い大人びてくると自然となくなった。今思うと、幼い頃から姉は憧れの対象だったように思う。姉を自慢していたし、紹介したがった。それは今もそうなのだが。幼い頃の純粋さとは違う。 神聖視、崇拝、偶像、理想。 数年前の全盛期はそんな感じだった。憧れが加速したような形だろうか。 今は多少落ち着いてる。と思う。 なぜこんなにも自分が姉に固執しているのか。 一つは

        滅入る冬、悴む手と節制の鬼

          姉妹百合は信じない1/4

          姉が結婚した。 今年の3月に姉からラインが来た。 「お前に言わなきゃいけない」 姉が恋人と旅行に行った翌日だった。 何を言われるか分かった。というか交際している期間を考えて予感はしていた。 速攻で「やだ」「まだいいよ」と返信した。泣いてしまいそうだったからだ。嬉しさや喜びではなく、受け止められなかったから。 「まだママとかにも言ってない…」 と言われて結局すぐ聞くことになったのだが。 どんなことでも誰よりも早く聞いてマウントを取りたかった。予感は的中し、プロポーズされた、返

          姉妹百合は信じない1/4

          さよなら偏見ちゃん

          インナーチャイルドの追悼式を行う。 それに伴う思考の整理をしていきたい。 人間は忘れる生き物だと言う。 確かに勉強したことは全部忘れたし、1日のタスクはどこかうっかり忘れてしまう。リマインダーは仕事や私生活のことで常にいっぱいだ。 心理学者ヘルマン・エビングハウスが一度覚えた無意味なものをどれだけ覚えていられるかという研究のもと言ったらしい。学習面で言えば復習って大事だねということに整合性がとれる先生御用達の名言だ。 本当に全部忘れられる生き物だったらよかったと思う。忘れて

          さよなら偏見ちゃん

          カブトムシとは結婚できない2/2

          そうして、男性へなんとなくの恐怖を持ったまま社会人になった。 接客の中で老若男女多くの人と関わる事が増えた。元々知らん人と上部だけでベロベロ色んなことを話したり聞いたりするのが好きだったので、浅〜い会話のコミュニケーションが楽しかった。 本当にいろんな人がいて面白い。怒る人もめんどくさい人も、深すぎず浅すぎずの所で関わる分には図鑑埋めみたいな楽しさがある。個々の人間性を知るのが面白くて、余計に雑談してしまうくらいだった。お話していた方が仕事が円滑に進むので無駄ではなかったと

          カブトムシとは結婚できない2/2

          カブトムシとは結婚できない1/2

          小学生の頃に好きな男子がいた。 なぜ好きだったのかはほとんど覚えていない。小学校という小さな世界で構築された相応の価値観ではあったが、当時は純粋に恋愛することを楽しんでいた。少女漫画を読み始めて間も無く、恋愛に随分な憧れを抱いていたんだと思う。バレンタインにはチョコをあげたし、遊ぶ時はお気に入りの服を着ていったし、二人きりで遊ぶ時はたくさん考えながら話した。 小学校中学年の冬に遊んだ日のこと。例によってお気に入りの服を着ていった。意中の子を含めた男子の中に一人自分が混じって

          カブトムシとは結婚できない1/2

          私は皆に梨を剥いてあげられない

          「人が握ったおにぎりを食べられるかどうか」という質問はよくあるが、私は割と食べられる方である。 誰かが自分の為におにぎりを作ってくれたら嬉しいし、その気持ちを無下には出来ないなと思うから。ご飯を作ってもらったら目一杯喜ぶし、感謝の意をできるかぎり伝えたい。 とはいえ、どんなに喜んでいても食えるか食えないかの判断ののちに前述のような思考に至って食べているわけで、少なからずそのおにぎりを品定めしている自分がいたということになる。無邪気に謝意を伝えられないのが、自分のタチが悪いと

          私は皆に梨を剥いてあげられない