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姉妹百合は信じない3/4

そして話は3月の報告に戻る。


夜通し泣いて二重は消え去った。別人で笑った。
ショックで受け入れられていないのは事実。
でもそれが姉の望みなのだ。

いつものように私がなんの効力もない駄々をこねて、拗ねて、いじけている間にも、知らぬところでトントン話が進んでいくと思っていた。姉はみんなに祝福されて、幸せを重ねていくのだろう。私だってそれを望んだし、当然のように事が運ばれていくと疑わなかった。

この場でおかしいのは自分だけで、自分が姉の結婚についてどう向き合っていくかを考えていた。問題はそれだけ。
自分が懊悩するだけだったらそれでよかった。

しかし想定外の障害があった。
私たちの両親だった。
いや全く想定していなかったわけではない。
まさか無計画な、謂わば碌でもない結婚を遂げた両親が姉にとやかく言ってくるとは思いもしなかった。
両親は「誰が自分達の面倒をみるんだ?」「結納金出したくない」「ちゃんと考えてるの?」「私たちと関係を断ちたいってこと?」そんなようなことを姉に言ってきたようだった。よしんば本心が違っていたとしても、話していた内容はそう感じ取れてしまうほど全て胸糞悪かった。お前らが言うなよ。
何よりそんな明け透けな状態で、綺麗事を並べて祝っているところが最高に気持ち悪かった。

姉は報告して肯定とも否定とも取れない返事をもらい困惑していた。巻き混んでごめんねとも言われた。

それはおかしくない???

姉が望む幸せの形を実現させてほしかった。
なんで姉の思い通りにならない?
姉の願いが叶わないことが、なによりも嫌だった。こんなよくわからないことで躓いている場合じゃないだろう。
というか姉を傷つけたな???
姉が結婚するショックを、両親に対する憤りが上回った。本当にふざけている。
両親共々悔い改めていただく。

私は両親の分析、説得、仲介を行った。

今回の問題としては、両親の不仲が大きい。
昔からそうだったが、2人は言語化出来ずに思っていることが伝えられない。語気が荒く短絡的で些細な衝突で話にならない。理解もできていないくせに憶測でお互いの考えを決めつけるクセがついていた。相談もままならず解決できない様々な不満や悩みをズルズル引きずったまま、他人や未来の話をする余裕がなかったのだろう。

とはいえ、姉の転機を踏まえた上で親として会話する努力をせず、分からないことを調べないで無知なまま不安を姉にぶつけるのはおかしいだろ。

そもそもの話、姉の交際が順調なことから遅かれ早かれ結婚の話が出てくることは明白だったはずだ。実家は金銭的余裕がない状態ではあるが、準備期間は十分にあったし、結婚するにあたって必要なことを調べることも可能だったと思う。
不仲といえど、慌てることはなかったはずだ。

誰もが人間初心者であり、親だって何をしたらいいか分からないのは当然だ。「しょうがない」と見ることはできる。難しいよね。
それでもなお、親でありながら責任感が欠如した態度が気に入らなかった。人の親っぽい綺麗事ばかり並べて現実問題を見ようとしないところが。
親という存在に期待しすぎているのかもしれない。それでも幸せを願ってくれるなら、しんどいこと含めて親として向き合ってくれよ。
所詮、思いがけず子供ができて親というラベルを貼られた人間でしかないのか。
わずかに残しておいた親への信頼も崩れていった。

実家を出て、両親の抱えた問題に向き合わなかった自分も悪いのだろう。安全圏から拗れた両親を分析して、子供としての責任を感じた。
全員と中立であり、物事を俯瞰してみることができる自分が仲介をしようと思った。

それが姉や親のために私ができることだったから。

私は両親と対マンで通話し結婚に対する見解や今の不満、悩みを延べ7時間聞いた。2人に齟齬や誤解がないかを確認して、問題を洗い出し仲介を行った。お互い癇癪を起こさないよう努めてもらい、姉のことに真摯に向き合って話し合うよう勧めた。
実際のところ、仲が悪いだけでお互いの考えがほとんど一致していた。なんなん!!!
親とじっくり話す機会なんてしばらくなかったが、本ッッ〜当に会話がへたっぴ。別ベクトルでそれぞれ厄介。私も大概だけど。

両親の見解は逐一パワポにして姉に提出していた。仕事から帰ってから親と話し、パワポを作り報告して今まで向き合ってこなかったツケだな〜と思った。

話し合いも順調とは行かずとも、何とか進めることができた。両親も自分なりに努力してくれたと思う。私という潤滑油を介して見てこなかった問題も顕在化して今後の方向性も決まったようだ。満場一致で無問題とは行かないが、全員で頑張っていこうねと思える結果となったと思う。

姉に報告して今後の流れを話していたら、
「これ終わった時のお前の報酬って何?」
と聞かれ、困ってしまった。
「平穏…?」
と返していた。

本当になんでがんばったんだろう。頑張っても、結果として姉が結婚して私が苦しむのに。
問題に必死で自分の感情の整理がついていなかったが、言っていることとやっていることが完全に矛盾していた。


最後に残されたのはやっぱりわがままな自分の感情だった。

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