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知らなかったのよ

レニ(1993/ドイツ・ベルギー)
監督:レイ・ミュラー

レニ・リーフェンシュタールを知ってますか?

ダンサーから女優、そして監督に転身し、戦前のドイツでナチスの党大会映画「意志の勝利」を撮って認められ、ベルリン・オリンピックの記録映画「民族の祭典」「美の祭典」で世界的名声を手にした監督である。

しかし、そのようなナチスとの関係(ヒトラーの愛人説もあり)から、戦後は「ナチス協力者」としてドイツ内外から批判を受けてしまう。

結局レニは逮捕され、精神病院への収容・退院を繰り返しつつ、裁判ではことごとく無罪判決を勝ち取るものの、結局101歳で亡くなるまで「ナチス協力者」のレッテルがはがされることはなかった。

映像作家として天才的な才能を持ちながらも、戦後は活躍の場を与えられなかったレニ。

晩年はどうしていたんだろう…と思いきや、なんと、アフリカのヌバ族の写真集を出したり、72歳でスキューバ・ダイビングを始め、100歳で映画「ワンダー・アンダー・ウォーター 原色の海」を撮るなど、死ぬまで現役だった様子がこのドキュメンタリーでわかる。

彼女の作品は力強くて斬新な映像美に満ち溢れ、どれも映画史に残る名作だが、いやはや本人も超人的なバイタリティの持ち主。めちゃ元気です。

芸術は社会的責任を負うべきか否か。

これはレニ個人の問題ではなく、今でも議論が尽きないテーマだと思う。

しかしそこはまあ置いておいて、とにかくこの映画で彼女のキャリアを追い、彼女が語る撮影の裏話やヒトラーやゲッベルスの人物像、そして苦難を強いられた戦後の人生に耳を傾けよう。

全くもって「こんな人がいたのか!」という驚愕と感動に胸が揺さぶられる。 


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