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№17:自然の中に現実をみよ

板取川へいってきた。
最初は冷たかったけれども、だんだんと水温に馴染み、流れに任せているとなぜか心は落ち着いてきます。小さな魚たちも泳いでいるのがわかります。

さてこういった魚たち含め、遺伝子学的には動物も植物も目的(生き方)は決まっていて「個体維持」と「種族保存」しかない。
サケの一生を鑑みればより現実観が深まります。

日本で生まれたサケはオホーツク海からベーリング海、アラスカ湾を移動、約4年後成熟し、生まれ育った川に戻り、その行程は1万6000㎞にもなるとも言われています。

1万6000㎞をかけ、故郷であり、同時に産卵の目的地でもある上流部に向かい、鞭打って遡り続ける。
途中には外敵の捕食や河川環境の変化などを乗り越え、なんとか故郷の上流部にたどり着き、そこで最後の力を振り絞って、雌は川底に穴を掘り、卵をつみ上げ、雄がこれに射精する。


そして2、3日の後そのつがいは死ぬ・・・・・。

サケの研究者はサケの一生の終わりにあたって起こる極度に速い老衰の過程に驚かされ、血の気が薄れて白くなった筋肉や裂け破れた鰭から老化の過程を読み取ろうとする。

最後の2週間でサケは、身体の状態が人間でいえば一気に40歳くらい年をとり、動脈壁の肥厚、肝臓の機能低下、血液循環の悪化、結果さまざまな病気や寄生虫に取りつかれるようになる。
そうなると心臓まひや心臓梗塞からはのがれられない。
この状況は思春期以後の人体におこるもろもろの慢性退行現象が極端に加速されて展開したものと似ている。

通常、川の上流部は栄養分が少なく、餌となるプランクトンも少ない。しかし、サケが卵を産んだ場所にはプランクトンの発生がみられる。それは息絶えたサケの死骸が多くの生物の餌となり、プランクトンの発生に繋がる。このプランクトンは生まれたばかりのサケの稚魚の最初の餌となる。

サケにとって繁殖行動は死へのプログラム発動でもある。プログラムが発動されても生命が続く限りメスを探し、繁殖行動を繰り返す。
また卵を産みを終えたメスもしばらく卵に覆いかぶさり、卵を守りつつ、やがて死のプログラムに従う。
そして春になればまたサケの子どもたちが同様に海遊し、遡上し、命を紡ぐ・・・・。

サケのような「個体維持」と「種族保存」をみれば遺伝子学云々というよりもはや道理であり現実です。
そんな道理と現実にも気づかず、忘れていくのが人間の性でもある、それは「動物を殺すな」という意味ではない。わたしサケも食べますし。
ただ本来生きる目的は人も同じなんだなと思うだけだ。
「随分と情緒的だな」と思われるかもしれないけれども、現代社会に欠けているのはこういった現実的な情緒だと思っています。

最後までお読みいただきありがとうございました。
以下参考文献


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