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妊娠…最期の時 その4

 息が荒くなる……。言いたいことは山ほどあるけどもう言葉が出てこない。

「みんなさよなら……」

「バカッ!何を言っておるんだ!こんないい男と親兄弟を捨ててあの世に行く奴があるか!」

 父は泣きながら私を叱った。ああ!あの人種差別主義者だった父がダーリンをいい男だなんて言ってくれるなんて!

「そうよ!パパの言う通りよ!あなた達はまだ結婚したばかりなのに……死ぬなんて早過ぎるわ!生きるのよ!」

 ママありがとう!いつもママは私の味方だった!彼を人間だと認めてくれたのはママだけだった!ありがとう!ママありがとう!

「姉ちゃん!毛だらけで全身真っ黒な旦那さん置いて死ぬのかよ!」

 ああ!私達は幸せよ。こんなにも愛されて……。

 ダーリンは無言で私を見つめている。その沈黙がどんな言葉よりも痛い……。ダーリンは目を潤ませながら口を慌ただしく動かしていた。全身の毛を逆立てて震えている。すると突然ダーリンは私を抱き寄せた!思いっ切り!強く!ありったけの想いを込めて!そしてダーリンは私を抱き締めながらウキーッ!!と張り裂けんばかりに叫びました!

 ああ!ダーリンの愛が痛い!私はこんなにも!こんなにも愛されていたなんて!ああ!抱き締めて!あなたの毛だらけの腕の中で私は眠りたい……。


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