先生について

学生の頃、駄洒落が好きな先生がいた。授業の最中、ずっと駄洒落ばかり言っていた。私たちはつまらない駄洒落を言っている先生をあたたかい気持ちで見守っていたものだった。だけど先生はある日突然教師を辞めることになった。もしかしたらクビになったのかもしれないが、今となっては確かめるすべなどない。先生は私たちが塾に通うことに反対で、勉強は学校だけですべきだという持論を持っていた。彼は私たちによく言ったものだ。
「塾に通ってるとすぐに熟女になってしまうぞ！君たちは若いからそんな事はないと笑うだろうが、半熟から完熟まですぐなんだ！あの果物を見ろ！あの青い果物も徐々に赤みがさしてきてくる。そして最後には硬かった実が熟して柔らかくなっていってちょっと握るとプシュッと汁なんか垂れ流すんだ！いいかね！塾なんか即刻やめなさい！塾なんか行くとすぐ熟女になってしまうんだ！」
今思うと先生は塾に行くなと駄洒落を交えて話しながら別のことを言おうとしていたのかもしれない。しかし、それを確かめるすべなど、先ほども書いたようにありはしない。先生は今どこにいるのだろう。今もどこかで駄洒落を言っているのだろうか。