契約取るまで俺ずっとここにいますから!
漫画の『宮本から君へ』ほど酷くはないが、現実の営業もまあ似たようなものだ。結局営業とは頭脳よりも熱血だ。契約を取るためだったら営業は何でもする。警察のご厄介にならないギリギリの所を狙って相手の懐へと入ってゆく。今僕もそれをやっている。
「お願いします!うちと契約結んで下さい!出ないと俺、もう行きて行けません!」
「知らないよ!うちはアンタんとこと契約なんて結ぶ気なんてないんだから!」
「そこをなんとかってさっきから頼んでるんじゃないですか!俺、ずっとここにいますよ!アンタが僕と契約結ぶって言うまでここにいますから!ずっとここに……」
「やめろ!そんな事したって契約なんか結んでやんないから!」
「うるさい!僕はアンタと契約結ぶためだったら何だってしてやるぞ!」
その通り僕は彼女と契約を結ぶために何だってした。彼女の部屋の前に居座り。彼女が出社すると僕もついて行った。それから彼女の部屋に戻ってドアをぶち壊して入って掃除と洗濯をしてあげた。彼女は意外にズボラで洗濯機に洗っていない下着とかを打ち込んだままだった。僕は下着を一枚一枚持ち上げて匂いを嗅いで困ったもんだと笑いながら洗濯をした。そして洗った下着類を干して彼女を待つのだった。ここまでしたら流石に彼女も僕と契約を結ぶと思いながら……。
だけど僕は今手錠をかけられてパトカーに乗せられている。何故なんだろう。何故彼女は僕の熱血に心を動かされなかったのだろう。漫画だったらこんなことまでしてくれてと女の子は涙を流して僕と契約を結ぶはずではないか。
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