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涙で書いたラブレター

太郎は花子が好きだった。だけど自分の思いをなかなか伝える事が出来なかった。だが彼は勇気を出して自分の思いを手紙にしたためで花子に渡そうと思った。いわゆるラブレターというやつだ。太郎は筆を取り花子への思いを綴ろうとしたが、しかしいざ書こうとしても文章がまったく出てこなかった。花子への思いは頭から溢れるほどなのに、いざとなると言葉に言い表せないのだ。青少年にありがちな事だが、太郎もまた自らの感情を整理する事が出来なかった。彼は仕方なく昔読んだ漫画などから使える文章を引っ張り出して書こうとしたが、書いているうちに嘘くさく思えてきた。きっとこんな手紙を読んだところで花子はこんな借り物の言葉を連ねた文章に何も感じないだろう。太郎は書きかけの手紙を破り捨て真っ正直に自分の気持ちを書いた。教室で初めてあった時から花子に恋していた事。花子を思うと胸が張り裂けそうになって夜も眠れなくなる事。花子を思いながら駅のホームで歩いていたら線路に落ちた事等、太郎は感情の赴くままに書いていった。彼にはもう文章の出来などどうでもよかった。ひたすら花子を思う気持ちをただありのまま書き記したのだ。書いているうちに涙まで出てきた。彼は書きながら泣き、泣きながら書いた。そして自分の書いたラブレターを読み返した太郎は感情が昂って思わず手紙を持ったまま号泣してしまった。太郎の流す涙は頬を伝わり手紙へと落ちてゆく。この涙は太郎の花子へ対する思いの全てだ。太郎は泣き止むと静かに手紙を封筒に入れて、翌日花子の家の郵便うちに入れた。太郎はその日一日中ひたすら花子が自分の思いに応えてくれる事を願った。

花子が学校から家に帰ると母から自分宛の手紙を受け取った。彼女は部屋に帰ると早速封を開けて手紙を出してビックリして思わず声を上げた。

「何これ、手紙水で濡れてるじゃない! おまけにインクが滲んで何書いてるかわからないし、キモい! キモい! こんなのさっさと捨ててやる!」


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