夏物語

 夏になると少年に帰りたくなる。夜明け前に起きてカブトムシやクワガタを取りに行ったあの日。川にはオニヤンマが飛んでいて捕まえようと網を持って追っかけた。でも結局捕まえられなかったんだっけ。それから人の家にネズミ花火しかけていたずらしたこともあった。あの頃の僕はなんてわんぱく坊やだったんだろう。あの少年の日。皮肉だけどあれが僕の人生の最盛期だったんだ。

 できるなら今すぐあの頃に帰りたい。いや、帰ってもいいんだよ。妻帯持ちで子供さえいる僕だけどいいんだ。遠慮しないであの頃に戻るんだ。

「あなた!これ何なの!何でカブトムシやクワガタが床中にいるの!それにオニヤンマまで天井を飛んでるわ!」

「凄いだろ!僕一日中虫取り網て昆虫を捕まえてたんだ!ふふふ、君たちびっくりしないでね。今からすごいことやるから」

「あなた何ネズミ花火に火をつけてんのよ!やめなさい私たちを殺す気なの?」

「うわ〜ん、おかしいと思っていたパパがとうとう壊れちゃった!ママ!パパをなおしてよぉ〜!」

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