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死体役

 今日また死んだ。自分は生まれてからもう何百回も死んでいる。とはいっても当たり前だが現実の話ではなくドラマの話だ。いわゆる僕は死体役専門の役者だ。2時間ドラマや安い映画なんかによく出ている。出演シーンは一本のドラマで平均して30秒程度、長くても一分ぐらいだ。この間やったドラマでは悪役を演じたキノチクに思いっきり踏みつけられた。あの野郎本気で踏みつけるから顔にあざが出来て昼間の仕事が大変だった。

 僕は昼間は普通の会社員で自分が死体役でドラマに出て入る事を隠している。一度同僚にドラマで自分に似た死体役見たぜとか言われたが、めんどくさくなりそうなので隠した。僕はいたって普通の会社員だ。毎日九時六時の生活を送っている。だけど同僚はそんな僕に言うんだ。

「お前ってホントに死体みたいだな」

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