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ゼルダブレワイティアキン二次創作:ゲルドの闇

 戴冠式を間近に控えたルージュはビューラをはじめとした親衛隊を連れてゲルド高地を歩いていた。ゲルドの王族が女王になるための儀式が行われるアゲート山に登るためである。ルージュはビューラをはじめとした親衛隊たちの異様に思い詰めた表情に一抹の不安を感じた。街がギブドたちに襲われてもリンクに任せっきりで自分を三度も四度も命の危険に晒した時でさえこんな深刻な表情をしたことはなかった。ルージュはビューラたちの表現を見ていまだ知らぬ儀式に不安を感じなんぞと問いかけようとしたが、だがビューラの顔は未来の女王たる自分の問いすら撥ねつけそうなので彼女は黙って前を向いた。あたりは一面の吹雪であった。

 やがてルージュ一行はアゲート山の麓に着いた。しかし頂上までとても行けそうにない。一体どうやって頂上まで行けというのか。あの女装露出狂厄災軽犯罪法違反ヴォーイのリンクならこんな壁容易く登れたのに。ルージュはいつものように女装露出狂厄災軽犯罪法違反の英傑リンクを思い出した。あのちっこいヴォーイは今何をしているのだろう。今もゼルダを無視してハイラル中の祠漁りをしたり、パンツ一枚で街中を駆け回たり、ゾウナギアとかいう変な機会で可哀想なコログたちをいぢめているのだろうか。女装露出狂厄災軽犯罪法違反の英傑リンクを思い出すたびにルージュの体は熱くなった。今極寒のゲルド高地の吹雪に吹かれているはずなのに、心には熱いゲルド砂漠の風が吹いている。

「ルージュ様、雷の用意を」

 とビューラが呼びかけてきた。ルージュはハッとして我に変えると足元にはビューラと親衛隊の面々が膝をついて傅いていた。

「妾の雷でどうするというのじゃ?」

 このルージュの問いにビューラは答える。

「先日のギブド襲撃の時と同じことをするのです。ルージュ様に雷を呼び出したら」

 ビューラはここで槍で壁を指し示して言った。

「あの白き岩肌に槍を投げます。さすればゲルドの封印が解けて儀式の地への封印が解けるでしょう」

 ルージュはビューラの言葉を聞いて緊張のあまり唾を飲み込んだ。彼女はビューラに無言で頷き早速雷を呼び出さんと構えた。

 瞬く間に雷気があたりに広がった。親衛隊たちはルージュの猛烈な雷気に感電しないかと恐れた。だがルージュの雷気は誰かが弓を引いたり武器を投げない限りは決して被害は及ばない。Aボタンを連打しただけで甚大な被害を人に与えるユンボやなんでも物を飛ばしてしまうチューリとは違うのだ。

 ビューラは雷気が充満してきたのを見て今がその時とばかりに白壁に向かって槍を投げた。その瞬間猛烈な雷が壁を直撃した。激しい音。猛烈な光。ルージュたちはあまりの光の強さに思わず目が眩んだ。やがて音と光が収まりルージュたちは目を開けたが、彼女たちは壁の中に金色のゲルドの紋章が浮かんでいるのを見たのである。その時ルージュはいつかのあの賢者の声を聞いた。声はルージュに向かってこう語りかけていた。

「ルージュよ我が元へいらっしゃい。王となるそなたにゲルドの全てを教えてあげましょう」

 ルージュは急に悪寒がして震え上がった。だが自分は女王になる身。ここでひいてはならぬ。ゲルドの未来のために先へと進まねば。

 ルージュはそう心に決めて己が恐怖を押さえつけて紋章の壁へと向かった。紋章の壁の前に立ったルージュは振り返って片膝をついて控えているビューラたち親衛隊を見た。ビューラは女王となるべく儀式に赴くルージュを見守った。ルージュはその彼女たちに向かって絶対に儀式をやり遂げてみせると無言で頷くと、再び前を向いて紋章に手をかざした。紋章に手をかざした途端壁は消え、忽然と中への道が開かれた。私はゲルドの女王として儀式を行わねばならぬ。ルージュはゆっくりと中へと足を踏み入れた。

 暗闇の中でまた賢者が語りかけてきた。賢者はルージュに光る紋章を見つけ手をかざせばたちまちのうちに自分を儀式の場に運んでくれるだろうと語った。紋章はすぐに見つかった。ゲルドの紋章はまるで彼女を儀式に誘うかのように金色の光を放っていた。

 ルージュは光に近づき手をかざす前に深く息を吐いた。儀式の詳細は自分は知らぬ。母が生きていれば教えてくれたかも知れぬのに。何が自分を待つのだろうか。しかし何が起ころうとも儀式はやり遂げなければならぬ。何故なら妾はゲルドの女王。ゲルドの民を導かねばならぬのだ。彼女は紋章に向かってゆっくりと手をかざした。すると地面が震えて床が競り上がってきた。石がぶつかり合う音が厳粛な鐘の音のように聞こえてくる。ここを上り切った所に儀式の場所があるのだろう。

 しかし中々つかない。恐らく儀式の場所は山の頂上あたりにあるのだろうが、ここまで時間を労するものなのか。石の音は一層大きくなりもはや鐘どころか大砲の音にさえ聞こえてくる。ルージュは耳を塞いで早く着くことを願った。すると突然音が止み、床もピタリと止まった。

 ルージュはハッとしてあたりを見渡した。そこには薄い灯りがぼんやりと光っていた。彼女は目の前に人の気配を感じて思わず後ずさった。まさか賢者なのか。しかしそこにいたのは賢者ではなく人間であった。ゲルドの兵士たちと同じ格好をししかもの何人かは自分の見知った顔だった。その兵士たちが自分の前で一斉に傅いていた。

「ルージュ様、お待ちしておりました。我ら一同儀式のお手伝いをするゲルド式部兵でございます」

「ゲルド式部兵とな。なんぞそれは。妾は聞いたこともないぞ」

「そうでしょうとも。先王はルージュ様が幼き頃に崩御したのでこの地については何もご存じなかったはず」

「うむ、確かにそうだ。しかしそなたたちの中には見知った顔もいる。そこの者、名はなんと申す」

 ルージュに指差された兵士はしばらくしてから答えた。

「いえ、我ら式部兵の誰一人として名は持っておりませぬ。我ら全員式部兵となる時名は捨てました」

「なんと!」

「名を捨てたのはゲルドのためです。ゲルドの機密を徹底的に秘匿してゲルドの名誉を守るため……」

「お主口がすぎるぞ!儀式の前に余計なことは口にするでない!」

 と、リーダーらしき兵士が叱りつけた。その迫力にルージュの知り合いの兵士は黙り込み、再び畏まった。ルージュはリーダーらしき兵士の一括に驚きすぐに始まるであろう儀式が厳しいものになるであろうと思った。ルージュはリーダーらしき女に向かって尋ねた。

「そなた、儀式はどのようにして行うのか。何か準備は必要ないか」

「ルージュ様、挨拶が遅れまして申し訳有りませぬ。私が今回の儀式のご案内をさせていただく式部兵士長でございます。儀式には準備など必要ございません。儀式とはもうしましても特に何をするわけではないのです」

「何もしない?それでは妾は一体なんのために来たのじゃ。妾は女王となるべく儀式を受けに来たのだぞ」

 兵士長はルージュの問いに静かに答えた。

「ルージュ様、誤解を招く言い方をして申し訳ありません。先ほど言ったように確かに儀式めいたものはしません。しかし何もしないわけではありません。ルージュ様、まずは賢者様の御神託を受けてください」

 こう語る式部兵士長の表情にルージュはこれから起こる儀式がいかに恐ろしいものであるか悟った。彼女は式部兵士長に向かって頷いた。儀式はすでに始まっている。もはや逃げることなどできないのだ。式部兵士長はゆっくり立ち上るとルージュに向かって賢者の元へと案内すると言った。

 式部兵たちはルージュを守るためか彼女を囲って歩いたが、ルージュにはそれが逆に彼女たちが自分を拘束しているように思えた。式部兵士長は歩きながらルージュに向かって賢者の言葉に耐え難い事があっても決して取り乱さぬようにと忠告した。ルージュは王たるもの取り乱しては民に示しがつかぬと決然とした表情で答えた。しかし式部兵士長はそのあまりに健気なルージュを悲しい目で見た。

 やがてルージュたちは最奥の格子の前に立った。式部兵士長は兵士たちに向かって格子を開けるように命令し、兵士がすぐに格子を開けると厳しい表情で言った。

「この奥に賢者様はおられます。我らがついていけるのはここまでです。さぁルージュ様中にお入りください」

 ルージュは言われた通りに格子の中へと入った。暗闇の沈黙の中に自分の足音が異様にはっきりと聞こえた。彼女はビクッとして思わず式部兵士たちを振り返った。しかしいつのまにか部屋は真っ暗となっており人の気配がなくなっていた。ルージュは何事かと思ったが、そこに暗闇の中に再び賢者の声が響いた。

「ルージュよ、ようこそ来られました。私はそなたが来るのをずっと待ち侘びていました。今そなたは女王になろうとしています。だがそなたはまだゲルドの全てを知りません。何故このアゲートの地が禁断の地と呼ばれ、封印されてきたか。何故ゲルド人以外の、あの女装露出狂厄災軽犯罪法違反の英傑リンクでさえ、『この先は進めません』とハイラルの女神からダメ出しされてしまうのか。そなたは知らないでしょう」

 ルージュはごくりと唾を飲んだ。確かにこのアゲートの地はゲルド人の妾でさえ今まで来たことはなかった。いや、子供の頃は多くのハイリア人と同じように『この先は進めません』とダメ出しされる土地だと思っていた。だけど今妾はここに来て女王となるために儀式を受けようとしている。

「その顔、やはり知らぬようですね。だが女王となるためにそなたは知らねばなりません。我がゲルドが背負った罪業を」

 賢者の言葉はルージュの心を激しくかき乱した。ゲルドの罪業?なんなのだ。我がゲルド人はヴォーイとコスメに浮かれた陽気な人々ではないか。そんな妾たちになんの罪業があるのか。

「ルージュ、そなたもゲルド人ならば当然知っていましょう。ガノンドロフ、あのハイラルを滅亡寸前にまで追いやった魔王がゲルド族の人間だという事を。そしてそのガノンドロフが我らゲルド人が百年に一度しか生まぬ男子である事を」

 ルージュは寝物語にさえ聞いた話を今更のように聞いて気分が悪くなった。先日ガノンドロフはゼルダと、そしてあの女装露出狂厄災軽犯罪法違反の英傑リンクによって倒された。あの悍ましい男の話をどうして今更のように持ち出すのか。賢者は再び続けた。

「ルージュよ。そなたはこの話を聞いて不思議に思いませんか?我がゲルド族には百年に一度男子を産むという伝承があります。その生まれた子供はやがてゲルドの王になると。その通りガノンドロフはゲルドの王となり、ハイラルに多大なる災をもたらしました。だけど、歴史に語られるゲルド族の男子は彼だけなのです。他にゲルドの男子はいなかったのでしょうか?それならば何故ゲルドは今までガノンドロフはゲルドに唯一生まれた男子と伝承を否定しないのでしょうか。いやできるはずがない。何故ならばこのガノンドロフの他にもゲルドに男子はいたからです。彼らは生まれてすぐこのアゲートの地に連れられ……」 

「そ、それは、まさか!

 とその時外から式部兵士長が叫んでいるのが聞こえたので賢者とルージュは話をやめて聞き見を立てた。

「儀式の最中申し訳ありません!大変な事が起こりました!あの女装露出狂厄災軽犯罪法違反のヴォーイリンクがバグ技を使ってこのアゲートに侵入してきました。ハイリアの女神のご加護も完全に破られました。今のあの女装露出狂厄災軽犯罪法違反のリンクに我が兵では太刀打ち出来ません!奴はルージュ様に会いたいとパンツ一枚でトーレルーフやバクダン花使って悪さしまくっています。どうしたらいいか!」

 それを聞いたルージュは格子の外に飛び出して式部兵たちに命令を下した。

「あの女装露出狂厄災軽犯罪法違反のヴォーイリンクを撃ち落とせ!奴はもはや英傑ではない!」

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