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から揚げが食べたいことについて

 から揚げが無性に食べたくなる時がある。そんな時私は日高屋などのチェーン店でから揚げを注文するのだが、食べてみても、それは自分の食べたかったから揚げと味が違っていて、失望を覚える事が度々ある。そんなときは故郷で母が作ってくれたから揚げを思い出すのだ。あの皮がパリッとして、ニンニクと醤油の効いたから揚げだ。取り立て大した味付けしていないいたって普通のから揚げだ。しかし残念ながらこの都会ではから揚げ専門店のから揚げでさえ、私が実家で食べていたから揚げに及ばないのだ。何故なのだろうか。私は考えた。やっぱり理想のから揚げには理想の鳥が必要だ。母が近所から貰ってきた鳥が必要なのだ。しかし母はすでになくもうから揚げは食べられない。だから私は自分でから揚げを作ろうと思い、実家の近所の家にから揚げの鳥をくださいと頼んだのだ。近所の人は一瞬麺を喰らったような態度をとっていたが、やがて微笑みすぐ持ってくるからねと家の中からスーパーの肉の切れはしを持ってきて、はいこれとさしだしてきた。私はこれなんですか?と聞いたら近所の人はこういった。

「これいつもあげてた肉ですよ。あの人私が調理するを忘れていた腐りかけの鳥をいつも引き取りにきてたんですよ。で、あの人うちのバカ息子は異常な味覚音痴だからこれで充分だわっていつも言っていたわ」

 たしかに少しきつい臭いが漂っている。だからあんなに醤油とニンニクをドバドバ入れていたのか!私は亡き母の美味しいでしょといつも声をかけてくれた事を思い出して涙が止まらなくなった。

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