暴力教室
3年B組の教室内で先ほどから殴打する音が鳴り響いていた。生徒たちはたまらず目を伏せて耳を塞ぐ。殴り合っているのは担任の村上と札付きの悪の竹山だ。彼らは一歩も引かずに殴り合っていた。
「今日という今日はお前のその腐った根性を叩きのめしてやる!」
「望むところだ! お前なんか返り討ちにしてやる!」
他の生徒たちは他の教師に助けを求めようとも考えたが、そうしたら二人とも処分は免れないだろう。担任の村上は首。札付きの悪の竹山は退学。穏便に済ませるにはこのまま二人を放って置くのが一番いい。だってこんな……。
「お前に自分の犯した罪の愚かしさを思い知らせてやる!」
「馬鹿野郎! あんな事をやったぐらいで何が罪だ!」
その時、隣の3年C組の担任の沢崎が3年B組の異様な騒がしさにたまらず入って来て生徒に問いただした。
「一体これはどうなってるの? 村上先生と竹山君はなんで殴り合っているのよ!」
しかし生徒は答えない。ただ俯いたまま沈黙するだけだ。村上と竹山は沢崎が来ても争いをやめない。沢崎は村上に向かって叫んだ。
「村上先生! いくらなんでも暴力はいけないわ! 生徒を力ずくでねじ伏せたって報復が待っているだけじゃないの! 竹山君! あなたも暴力なんかで何も解決しないことを知るべきよ!」
「コイツはもう徹底的に叩きのめさなきゃダメなんですよ! 今までずっと我慢して来たがもう限界だ! 殴って、殴り尽くしてわからせるしかないんだ!」
「上等だこのヤロ! 病院送りになっても文句言うんじゃねえぞ! こっちだってテメエをボコボコにしなきゃ気が済まねえんだよ!」
その時、一人の女子生徒が立ち上がった。そして彼女は泣きながら叫んだ。
「全部私が悪いんです! 給食の時、竹山君が肉団子一個追加しろって言ったから一個余計にあげちゃったんです! そしたら先生のぶんが一個足らなくなっちゃって! 先生ごめんなさい! 肉団子が一個足りなかったぐらいで先生があんなに怒るとは思わなかったの!」
「許せん、このクソガキ! 俺が待ちに待っていた肉団子を食いやがって! 殺してやる! 殺してやる!」
「何が肉団子だ! 今から俺がお前をぶん殴って肉団子にしてやるから、自分で自分を食べやがれ!」
沢崎は殴り合う二人を見てガックリとため息と共に肩を落として二人に向かって言った。
「あの、二人とも。今から私校長室に行って喧嘩のこと報告しますから。給食の肉団子盗ったとかで揉めて殴り合いの喧嘩してますって」
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