絶滅危惧種

 これはとうとう自分たちの危機と彼らはスマホを立ち上げ、リモート会議をはじめた。とうとうリモート期間が終わる。リモート期間が終わるということはリモート世界が滅亡してしまうかもしれない。ということは我々リモート天然素材は確実に絶滅するだろう。我々はどうすればよいのか。この生まれてから引きこもりで太陽の光なんか浴びたことのない、どんなもやしよりも美しい肌を持つリモート天然素材が絶滅するなんてあってはならないことだ。そうだとリモート天然素材達は会議の終わりに一つの結論を出した。国家に我々リモート天然素材を絶滅危惧種として認定してもらおう。その結論にリモート天然素材全員がスマホの前で歓喜の声を上げた。そして早速どうやって絶滅危惧種の認定を申請しようかと調べたところ、家から出たことのない彼らにとってあまりにも残酷な現実がそこにあった。

『絶滅危惧種の申請はオンラインでは受け付けておりません。申請されたい方は資料を持って直接役所に来るか、または申請書に資料を添付の上郵送でお願いします』

 リモート天然素材はこの残酷極まる現実に泣き叫び、遠くない未来に起こるジェノサイドを想像した。家から出たことのない彼らにとってオンライン申請が出来ないというのはもう死活問題だった。未来への希望を失った彼らに出来るのはひたすら祈ることだけだった。


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