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意識の流れな二人

 とある喫茶店のテーブルに男女が座っていた。二人はまだ何も注文していなかった。二人は互いを見て反応を伺っていた。男は女を見ながら思う。僕は何を注文すればいいのか。今二人の間に広げているメニュー表。まずコーヒー、いやジュースね方がいいか。コーヒーはビターな味で昼間にはふさわしくない。勿論彼女と一夜を過ごした夜明けには絶対に必要なものだけど。だがジュースなんか頼んだら彼女は僕が子供じみたように見えるだろう。いや、どうしたらいいのか。ジュースといえばやはり田舎で飲んだオレンジジュースが最高なんだ。搾りたてのオレンジをそのまま瓶に詰めた最高のフルーツジュース。あれを彼女に飲ませてあげられたら。彼女がまた僕を見る。きっと彼女は何かを待ち侘びているのだ。何かを待つ。何かを期待する。それは僕も同じだ。僕も待っているのだ。チクタクとうるさい壁時計が時間がきた事を知らせる。さあ早く目覚めの時だ。いい加減我に帰るのだ。男は店員を呼んで言う。

「オレンジジュースください」

 そして女にも注文を聞く。

「君、何か注文ある?」

「別にない」

 女は男を見てこう思う。やっぱりこいつと喫茶店なんか来るんじゃなかった。つまらない人だと思ってだけどやっぱりつまらなかった。コイツはすました顔をしようとしているけど中身はバレバレだ。私とやりたい気持ちがピュアなくらいに顔に溢れている。しかし本当につまらない。つまらないと言えば私の便秘はいつ治るのだろうか。もう三日も便が出ていない。やっぱりコイツがいつまでも付き纏っているせいだ。便秘の大元は全てコイツ。早くコイツから離れよう。女は立ち上がって男に言う。

「あの、申し訳ないけど私帰るね。ごめんなさい私たち縁がなかったみたい」


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