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全員マスク 第7話:反対勢力の登場!

 エリー、いとしのエリー、エリー・マイ・ラブ・ソー・スイート、写ってもっとベイベー、ああマスクなしのウーマン、マジック・ウーマン、サンタナ、ローリング・ストーンズは日本にこなかった。西郷輝彦、遠山の金さんが歌う!つまらない親父ギャグが頭の中に飛び交う。これってもしかしてMDNA?幻覚、幻想、ああ!黒いあの女見ただけではち切れてしまいそう!俺のマーラーがドビュッシーしてしまいそうだ!クラシック後期ロマン派、超長い。だけど、イクときはドビュっとあっさり、もう頭の中がぐちゃぐちゃだ!

 ジョニーはエリーを見てから狂ってしまった。あれほど執着していたキャロラインのマスクの占める割合が50%まで減少してしまった。仲間をおもう心で上乗せされたパーセンテージ、実際にはそれよりも遥かに下回る!今ジョニーの頭を占めているのはエリー、あの黒い唇晒し女だ!ヤバい思いがスパークする。ジョニーはキャロラインにエリーのことを聞きまくる。ベイビー、あのエリーとかいうビッチ女とどういう関係だい?勘付かれないようにわざとエリーをディスりまくる見事なテクニック。だけどキャロラインは言う。

「ジョニー、あんたあの女にエリーとかいう愛称つけないでよ。アンタまさかあの女にガチぼれしたんじゃないでしょうね?」

 名探偵キャロライン。ジョニーの目論みをすっかり見抜いて呆れた目で見る。だけどジョニーはそれでも強引ぐ・マイ・ラブ。無理矢理エリーの事を聞く。

「ったくしょうがないわね。アンタってほんとクズなんだから!アイツは蒲田エリカって言って私の小学校時代の同級生よ。私ほどじゃないけど頭も良くっていつも私に対抗心抱いてたわ。だけど顔全く変わっててびっくりしたわ。昔はパプスブルクってあだ名だったのに」

 パプスブルク?神聖ローマ帝国の皇帝、マリー・アントワネットの実家、ルイ十六世、フランス革命、ギロチン、ベルサイユのばら、オオ、ベイビー!死なないで!俺はオスカルに性転換してお前を救うぜ!ああ!エリー、エリザベート!悲劇の皇后陛下!男に色んな所をさされに刺されてもう至る所串刺しだ!

「で、なんでエリーがハプスブルクなんだい?彼女はハプスブルク家の末裔なのかい?」

「そんなわけないでしょ!あなた知らない?パプスブルク家って遺伝で顎がでまくってるのよ!あの女顎がやたら出まくってたからみんなでバカにしてたのよ!このハプスブルク女って!」

「ベイビーそりゃいぢめだぜ!」

「だけど、なんでアイツの顎消えたのかしら!あの顎は大人になったからって消えるもんじゃないわ!きっと……」

「ベイビー、人は変わるもんさ。時としてありえないほどに変わっちまうもんさ。キャロライン、お前も人のこといえないぜ。お前はマスクで下半分隠してるだろ。人の顔を馬鹿にするなら自分のやつを晒せよ。でなきゃ俺はお前を愛せない……」

「ああそうですか!アンタなんかに愛しもらわなくて結構よ!今すぐエリカのとこに行くっての?どこにいんだか知らないけど行けばいいじゃない!」

「ベイビー、そんな事をいってるんじゃないんだ。俺はただお前を……」

 わがままキャロライン。ジョニーはやっぱりこの強気なヤンキー女から離れられない!ジョニーはアメリカかぶれ。ヨーロッパなんかよりアメリカ。ハプスブルクなんかよりイーロン・マスク。ベイビー!俺の想い10トン分捧げるからいい加減マスクを脱いでくれ!


 ハプスブルク女との再会を待ち焦がれていたジョニー。その日はすぐにやってきた。いきなりの社員総会。そこで突然出てきたエリー・マイ・ラブ・ソー・スイート。彼女は紹介とともに壇上に現れる。

「今回、新たに取締役兼企画プロジェクト本部長として一之瀬エリカ氏が就任することを発表します!彼女は創業者一族の一之瀬家の末裔でありましてずっとヨーロッパの広告業界で活躍されており、EU主催の数々のプロジェクトも成功させています。きっと我が社の発展に貢献してくれるでしょう!」

 会場は大騒ぎ。ヨーロッパ帰りの若い美女、サンタナ、哀愁のヨーロッパ、ああ!真っ黒クロスケの美女がいきなり自分らの上に上に立つなんて!SM、踏まれたい?マゾッホ、毛皮のヴィーナス、サド、いぢめ大好き、デペッシュ・モード、マスターアンドサーベンツ。壇上に立つエリー申し訳程度の黒マスク。百均で買ったような、安いやつ。お前みたいなヨーロッパ仕込に美女には似合わねえと思ってたら、喋りだす前に取って投げ捨てやがった!トンデモナイ女!これは『全員マスク!』プロジェクトの俺らに対するあからさまな挑発。ジョニーは不安になってキャロラインを見る。ベイビー、おまえどうするよ?

「な、なんでエリカが創業者一族になってんのよ!アイツの家は農家じゃない!土地はたくさん持ってて金回りは良かったけど、所詮土百姓だったでしょ!わざわざ田舎から東京の学校に来て大変ねえとか同情していたのに!創業者一族?アイツどうやってそんなとこに入り込んだのよ!整形までして!」

 嫉妬は醜いぜキャロライン。SHIT、俺を失望させるなベイビー。マスクを投げ捨てたヨーロッパ帰りのエリー。マイクの前に立って社員に向かって黒光りするようなダークボイスで挨拶する。

「はじめまして、私が今回新たに取締役兼企画プロジェクト本部長として就任させていただく一之瀬エリカです。なにぶん若く経験も浅いですが、いち早く我が社の経営に携われるよう努力します。それでは、今回私が取締役就任の条件として提示したプロジェクトをここで発表します。経産省から我が社に裏で依頼されたプロジェクト。まだ正式な名前は決まっていませんが、その内容は、我々を苦しめているマスクからの開放を謳ったものです。いずれ正式な発表があるでしょう。では今日はこれにて失礼します!」



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