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愛はお金で買えない

「愛ってお金じゃ買えないよね」

 と彼女は語尾に力を込めて言った。僕はそう言った彼女の強い眼差しに改めて二人の絆を感じた。僕はそうだねと頷く。そうさ、愛は金じゃ買えない。僕らがこうして出会えたのは金じゃない。時の巡り合わせだ。二人が運命の相手に出会うまでの。

 僕だって別に子供じゃないし、それなりに恋愛だってしてきた。だけどここまで愛した人はいなかった。僕は感じたんだ。これが運命だなんて一生ものの人だって。僕は君のためなら何もかもを捨ててもいい。君さえいれば他は何もいらないんだ。

「ありがとう。でもこれ高いんでしょ?」

 彼女は今僕があげたブレスレットをはめて微笑む。大丈夫さなんて僕は笑って答える。貯金を叩いて買ったブレスレット。次はエンゲージリングをあげたいって思いながら。

「君の笑顔に比べたらずっと安いさ。君さっき言っただろ?愛はお金じゃないって」

「あっ、そうだね」

 と、彼女は言う。そしてじっと僕を見てさっきの言葉を繰り返す。

「ホントに愛ってお金じゃ買えないよね」

 愛はお金じゃない。どんなにお金をはたいたって他の奴らはこの君の笑顔は手に入れられることはできないんだから。僕は君のためならもう全てを捧げたっていいんだ。君と一緒にいるためならどうなったっていいんだ。僕は次に会った時に告げる言葉と、口座の残額と、彼女に渡すエンゲージリングの事を考える。彼女は愛はお金じゃ買えないと言った。僕は彼女の言葉を信じる。彼女はお金なんかどうでもいいと思っている。彼女のために全てを捧げてそしてすっからかんになった僕だけど、彼女はきっとそんな僕を笑ってくれるだろう。愛は金じゃ買えない。愛ってのは最も純粋な感情だからだ。

 彼女は急に真顔になって僕をみた。僕はその今までにみたことのない真剣な表情に震えた。

「あのさ、いつんなったらあなた気づくわけ?あなたわかってるわかってるって言って全然わかってないじゃない。あのね、もう一度言うけど愛ってのはお金じゃ買えないのよ。毎回こんな無理して買ったような安もんくれてもさ、私あなたなんかハッキリ言ってどうでもいいのよ。確かに一時期は小遣い稼ぎにはなったけど、もうあなたよりずっと金持ってるパパ手に入れたし、もうアンタは用済み。申し訳ないけどここで別れましょ。はいバイバイ!」

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