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意識の高い女の一週間 金曜日

さて今日は金曜日だが、本題に入る前に報告がある。昨日パートナーからのレポートが来ないと書いたが、日付が変わる寸前に彼がメールでレポートを送ってきたのだ。私は彼が私とのセックスをどう考えたのかと興味津々でメールを開けたのだが、驚く事に中身のあることは何も書いていない。ただ『書けなくてごめん。でも愛してる』とかバカな若者みたいなことしか書いていないのだ。一体彼はこれまでの人生をどうやって過ごしてきたのだろうか。何も考えずただ能天気に暮らしてきたのだろうか。私はあまりの彼の意識の低さにもう呆れて自分で例文を書いて彼に明後日の土曜日までにこれを参考にして手書きでレポートを書いてきなさいと送ってやった。まったく彼がここまで何も考えていない人間だとは思わなかった。というわけでパートナーの回答は明日待ち。さっさと本題に移ろう。

金曜日は週の終わりだ。社会との一週間にわたる付き合いも一旦は終了する。同僚たちはこのコロナ禍で飲みに行こうとか能天気に騒いでいるが、私は意識が高いので、誘われてもいつもどおりノーセンキューと断るだけだ。しかし今日は魔がさしたのか何故か同僚たちと飲む事になってしまったのである。勿論私は飲みの誘いなど断るつもりだった。しかし私は彼らの無言の誘いには勝てなかった。彼らは私に向かって聞こえよがしに飲みに行くとアピールしていた。そのアピールがあまりにもあからさまなので、この意識の高い私も流石に折れて彼らの元にツカツカと近寄って、「私を誘いたいんなら、ちゃんと口で言ってね」と言った。しかし彼らはそんな私にこう言うではないか。

「あの、突然入ってきて、いきなり何言ってるんですか? 別にあなたを誘ってないですよ」

意識の低い人間とは自分に素直になれない人間なのだ。私は彼らを無理やりバーに連れて行き、自分に素直になる事が意識を高める事の第一歩だとバーが閉店するまで延々と説教してやった。


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