人生は苦しいけれど、救いだってある。
瀬尾まいこさんの『夜明けのすべて』
あらすじを読んだ時に、いまの自分にはきっと響くだろうなと思いつつ、手に取ってみた一冊。
私もクローン病という病を患っており、何か行動する前に「近くにトイレはあるか」「休めるような場所はあるか」「予定が続かないか」など色々なことを考えるようになりました。
この物語の主人公、山添同様、
病気を宣告された時の私は「なんで自分がこんな病気に…」と気力を失いました。
食事制限に、免疫抑制剤による治療。
今までできたことができなくなる苦しみ、将来に対する不安。
人と会うことも億劫になり、引きこもりがちになりました。
そして、周りの人間には理解できないと気持ちを打ち明けることもできず、
好きなことをして過ごしている人を羨ましく思っていました。
この物語では、PMS(月経前症候群)、パニック障害の二人が、
とあるきっかけでお互いの病気を知り、同志のような気持ちが芽生えていきます。
微力かもしれないけれど、相手のために助けられることはないかと考える二人。
それまでは自分のことで精一杯だったはずなのに、他人のこと気にする余裕が生まれていきます。
山添が美沙と過ごしていくことで気持ちに変化が生まれてくる場面で、こう考える場面があります。
山添と美沙の二人は、お互いを理解ある友人として認識していくなかで、実は周りの人たちも(前職の上司、現在の会社の人たち、昔からの友人…)自分たちのことを気にかけてくれていることを知っていきます。
別の作品ですが、この場面を読んだ時に思い出したシーンがあるので紹介させてください。
西尾維新さんの『<物語>シリーズ』の第一巻『化物語』。
その中でこんなシーンがあります。
何かをしてくれるわけでない。
何かをしてほしいわけでもない。
ただそこに居てくれたという事実。
ふとした時に、私のこと考えていてくれるという事実。
他の人からしたら、「ただそれだけのこと」かもしれませんが、
それがとてもありがたく感じる瞬間があります。
私もようやくクローン病と向き合えるようになりつつあり、
少しずつできること、やりたいことも増えてきています。
これも、これまでの人生で関わってきた人たちとの繋がりがあったからだと思っています。
『夜明け前のすべて』
この作品は、病気に限らず、いま人生が苦しいと思っている方に読んでほしい一冊です。
いまはまだ同志と思える人がいないかもしれない。でもきっと、そんな人がきっと現れてくれるはずです。
あらすじの最後にある通り、
人生は苦しいけれど、救いだってある。生きるのが少し楽になる、心に優しい物語。
「夜明け前が一番暗い。」
いまがその一番暗いとき。ここから少しずつ希望の光が見えてくる。
そんなことを感じさせてくれる心温まる作品でした。
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