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愛の流刑地。
私が小学生の頃の話。
ちょうど小数の授業に入った時でした。
先生は僕らに尋ねました。
「1に0.9を掛けたら、
1より大きくなりますか?
小さくなりますか?」
多くの小学生は
コラショと一緒に予習していましたので、
少数の掛け算がどんなものか
既に雰囲気をつかんでいます。
![](https://assets.st-note.com/img/1696913068401-QI4hqrLhwh.png)
そんな中、A君は自信たっぷりに声を上げます。
「大きくなる!」
教室は一瞬?に包まれました。
何故ならA君は頭もよくスポーツも万能。
クラスのリーダーで、女の子にも好かれ、
皆からの信頼があります。
確かに、
今までは九九を学習した後でしたので、
掛け算といえば、
必ず元の数より大きくなっていく
というのが当たり前でした。
しかし、今までは今まで。
これからはこれからです。
束の間、A君に毎年チョコを渡す
というアイデンティティを持つ
Sちゃんが声を上げます。
「私もそう思います!」
![](https://assets.st-note.com/img/1696914598604-x572NyetQG.jpg?width=800)
嗚呼。私は震えました。
好きという気持ちがあれば、
常識なんて関係ないことを
彼女が体現したからです。
教室はざわざわし始め、
気が付けば二人はこの四角い、
画一的な空間から
浮き彫りになってしまいました。
ここで先生、”宇宙”(コスモ)を投げかけます。
「それでは多数決をとりましょう!」
なんで?…
そう思ったのは私だけではないはず。
私はすごく嫌な予感がしました。
この近い未来、
きっと悲しいことが起こる…。
そう容易に想像できたからです。
先生は続けます。
「大きくなると思う人ー?」
上がった手は二つ。
彼らは信念を貫いたのです。
「小さくなると思う人ー?」
その他全員が手を挙げました。
私もコラショに従いました。
…
これが、メジャリティの群衆が
マイノリティを踏み潰した瞬間です。
混沌とした時の中で、
とうとうA君は狼狽し、
Sちゃんは泣き出してしまいました。
![](https://assets.st-note.com/img/1696917949598-tpXxPsknxf.jpg?width=800)
期待と現実との激流に飲み込まれた二人。
突っ伏して動かないA君。
わなわな肩を揺らしながら、
止まらない涙のSちゃん。
そして何事も無かったように進む授業。
後年、私はあれこそが
「愛の流刑地」だったんだなと、
改めて感傷に浸りました。
あとがき
学校というところは
シラバスから外れそうになると
急にドライになりますよね。
本屋で「愛の流刑地」をたまたま見つけて思い出しました。
あなたの「愛の流刑地」を教えてください。
おしまい。
![](https://assets.st-note.com/img/1696987101369-AsSAXGxtIX.jpg)
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