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愛の流刑地。


私が小学生の頃の話。


ちょうど小数の授業に入った時でした。




先生は僕らに尋ねました。




「1に0.9を掛けたら、

1より大きくなりますか?

小さくなりますか?」




多くの小学生は
コラショと一緒に予習していましたので、

少数の掛け算がどんなものか
既に雰囲気をつかんでいます。

コラショ


そんな中、A君は自信たっぷりに声を上げます。



「大きくなる!」




教室は一瞬?に包まれました。





何故ならA君は頭もよくスポーツも万能。

クラスのリーダーで、女の子にも好かれ、
皆からの信頼があります。



確かに、
今までは九九を学習した後でしたので、



掛け算といえば、
必ず元の数より大きくなっていく


というのが当たり前でした。




しかし、今までは今まで。
これからはこれからです。




束の間、A君に毎年チョコを渡す

というアイデンティティを持つ

Sちゃんが声を上げます。





「私もそう思います!」




情熱的なSちゃん



嗚呼。私は震えました。





好きという気持ちがあれば、
常識なんて関係ないことを
彼女が体現したからです。




教室はざわざわし始め、
気が付けば二人はこの四角い、

画一的な空間から
浮き彫りになってしまいました。





ここで先生、”宇宙”(コスモ)を投げかけます。






「それでは多数決をとりましょう!」





なんで?…




そう思ったのは私だけではないはず。



私はすごく嫌な予感がしました。
この近い未来、
きっと悲しいことが起こる…。


そう容易に想像できたからです。





先生は続けます。





「大きくなると思う人ー?」





上がった手は二つ。

彼らは信念を貫いたのです。






「小さくなると思う人ー?」






その他全員が手を挙げました。



私もコラショに従いました。




これが、メジャリティの群衆が
マイノリティを踏み潰した瞬間です。





混沌とした時の中で、
とうとうA君は狼狽し、
Sちゃんは泣き出してしまいました。



自分を信じたA君


期待と現実との激流に飲み込まれた二人。



突っ伏して動かないA君。
わなわな肩を揺らしながら、
止まらない涙のSちゃん。




そして何事も無かったように進む授業。



後年、私はあれこそが
「愛の流刑地」だったんだなと、
改めて感傷に浸りました。






あとがき

学校というところは
シラバスから外れそうになると
急にドライになりますよね。


本屋で「愛の流刑地」をたまたま見つけて思い出しました。


あなたの「愛の流刑地」を教えてください。



おしまい。


すみません。読んではいないです。


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