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某スパリゾートに浮かんだあれ。

あれは猛暑の名古屋にいたその昔。


マックスバリューの前に、
誰かが落とした6個入りの卵がありました。


落下の衝撃で中身が飛び出し、
コンクリートか汚れていました。


良く見ると灼熱の地面に焼かれて、
目玉焼きになりつつある白身黄身。



焼けてるよ。おいおい。




そう思い、
ただ、ぼーっとその光景を眺めていました。



「パッ!」
(短いクラクション)



音に振り返ると、
後ろに無料送迎バスが到着していました。



側面には"天然温泉スパリゾート"の文字。



吸い込まれるように手ぶらで乗り込む私。
何だか疲れていたのかもしれません。



着いてみると
正にヤシの木いっぱい南国アイランド。



周りは工場地帯なだけに
変に浮いている不思議な場所でした。


入ってみると中はとても広く、
そして良心的な値段。


サウナやらサウナじゃないのやらたくさんの設備があります。



その日は祝日ということもあり、
かなり混んではいましたが、

ふらり飛び出て、
ラッキーなこともあるもんだなと
感心したことを覚えています。



紋々を背負った人たちをすり抜け、
ベーシックな湯につかる私。



快晴の空に開放的な気分で
くつろいでいました。


おじさんぎっしりの浴槽に、
浸かるおじさん。
みんなおじさん。おじさん。おじさん。



(…)




(…)




(?)




(何か浮いてる…?)



混み合うおじさん達の中央に、
ぽつりと葉巻みたいなものが
浮かんでありました。



(はて…?)




(絆創膏かな…?)




時間が経つにつれ、
段々嫌な予感がしてきました。



とりあえず浴槽から出ることに。



伝播していく胸騒ぎ。


不安な顔をしながら
次々とおじさん達は浴槽から出ていきます。


そして、
囲むように遠目に
その葉巻を見つめていました。




「あぁ…あれ大便だ…。」



隣のおじさんが一言呟きました。





直後風呂が空いていると思い、
次々と入っていく新規のおじさん達。




そして気づいて出ていくおじさん達。



そして次々入っていく新規のおじさん達。



繰り返される地獄のループ。




無限ジェットコースター。






呆然と立ち尽くすおじさんが増えていく中、



不思議と私達には
一体感が生まれていました。






【俺たちは皆糞に浸かっちまった。】








【仲間だ。】




そう聴こえてきました。





ふと露天の方にも目をやると、
似たような人だかりが。




気になって小走りで見に行く私。





「…」





浮いた葉巻。アゲイン。




ほどなくして館内アナウンスが流れ、
男風呂利用にストップがかかりました。



清掃員が到着。お湯が抜かれていき、
それはタモですくわれていました。




一生懸命体を洗う我々チームバチスタ。




私は思いました。



コンクリートで焼かれた卵
見てればよかったなと。



完。




あとがき

とんだ糞野郎がいたものですね。

湯上り後の脱衣場が
あんなに重たい空気だったことが
かつてあったでしょうか。

以降そこには一度も行きませんでしたが、
古い銭湯なんかでは、小便・大便禁止の張り紙がしてありますよね。




皆さまもお気を付けください。

家の風呂が一番です。


おしまい。



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