見出し画像

【エンジニア募集】 「ロケットの設計図をゼロから」描く、10人目の構造設計メンバーを募集します。【リーダー候補】

◆はじめに

 こんにちは。インターステラテクノロジズ株式会社(以下、IST)でロケットの構造設計を担当している清松です。2019年に新卒で岐阜県の航空機メーカーに入社したのち、2021年1月にISTに転職しました。

ISTでは現在ロケットの構造設計者を大募集中です。

ただ、他業界だと「ロケットの構造設計者って何をするのか分からない」という方や、同じ業界でも「ISTの様なベンチャーでは何が求められるのか分からない」という方は多いと思います。そうした方々に向けて、ロケットの開発の流れやその中での構造設計者の業務内容などについてご紹介できたらと思います。


エンジニアリングモデルを用いたフェアリングの分離放てき試験の様子


◇ロケット開発の流れと構造グループの役割

ロケット開発の流れ

 初めにロケットの開発の進め方について簡単にお話しします。
ロケットは推進、構造、機構、無線、アビオニクス等様々な要素技術が組み合わされて作られます。これらのバランスを取り、ロケットのコンセプト(※)を実現させるために各要素(サブシステムと呼んでいます)に要求を出すのが「機体システム」です。構造などのサブシステムは機体システムからの要求に基づいて開発を進めていきます。例えば機体システムから構造には以下のような要求が出されます。

・○○の質量は◆◆kg以下とすること
・○○は△△kNの荷重に耐荷すること
・××は機器◇◇を内部に搭載できること

機体システムは各コンポーネントそれぞれに質量要求や強度要求を割り当てます。とは言え、機体システムの担当者は別にロケット構造の専門家というわけではありません。今までロケット開発実績のある企業であれば、過去の蓄積から各コンポーネントに適当な質量を割り当てられるかもしれませんが、ISTではそういったデータを持っていません。そのため、こうしたシステム要求自体も、「このぐらいの荷重がかかる部品だったらこのぐらいの重さになるだろう」といったように機体システムとサブシステムが協同で策定していきます。

システム要求が定まると、要求に基づいて各サブシステムは設計を進めます。開発は、概念設計、基本設計、詳細設計などいくつかのフェーズに分割され、それぞれのフェーズの間にデザインレビューという審査会が行われます。こうした開発の流れは基幹ロケットや宇宙機の一般公開されている資料にも載っているため、興味のある方はぜひ調べてみてください。

H3ロケット 基本設計結果について

出典:国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA) H3プロジェクトチーム 岡田匡史

HTV-X(仮称)の開発について

出典:宇宙航空研究開発機構

(※)機体コンセプトはプロジェクトの初期段階で顧客ニーズなどから決定されます。ただし、構造グループとして関わることはないため、この記事では省略します。




◇構造グループの役割

 私の所属する構造グループはその名の通り「構造」サブシステムの開発を担当しています。現在9人のメンバーが在籍しており、機体構造の設計や解析、試験などの業務を分担しながら開発を進めています。


構造グループの担当部品

 構造グループが具体的にどのようなコンポーネントを開発しているのかを紹介します。構造グループが担当するコンポーネントは大きく分けて4種類。フェアリング推進剤タンク胴体構造エンジン支持構造です。

1.フェアリング
フェアリングは機体の先端に位置し、大気中を飛行する際に受ける荷重や
加熱からペイロード(人工衛星等)を守る役割を担っています。機体が十分上空まで上がると、半分に割れて、機体から分離します。材料はCFRPを採用しています。

フェアリング

フェアリングはエンジニアリングモデルで分離放てき試験を実施しました。
こちらもぜひご参照ください。



2.推進剤タンク
推進剤タンクはロケットの推進剤(燃料と酸化剤)を内部に搭載する構造です。アルミ合金を溶接して作られます。ロケットは飛行中に空力による圧縮荷重や曲げ荷重が負荷されますが、推進剤タンク内部は加圧されるため、こうした内圧にも耐える設計である必要があります。

推進剤タンク


推進剤タンクの溶接はIST社内で行っています。

溶接の様子


3.胴体構造
タンクとタンクの間や2段機体と1段機体の間を繋ぐ構造を胴体構造と呼んでいます。胴体構造はCFRPとアルミフレックスコアからなるサンドイッチ材料から作られ、とても軽量です。構造の間を繋ぐだけでなく、アビオニクスや高圧ガスボンベなどを内部に搭載する役割も担います。

胴体構造
画像下部の、たくさんの配線が繋がれている黒い円筒が『胴体構造』です。

胴体構造はエンジニアリングモデルを使って強度剛性試験を実施しました。
詳しくは、こちらの記事をご参照ください。


4.エンジン支持構造
エンジン支持構造はエンジンの推力を機体に伝達する構造です。
1段機体では9基のエンジンを、2段機体では1基のエンジンを搭載します。構造様式は2段と1段で大きく異なり、材料は2段はCFRP、1段はアルミ合金を採用しています。

支持構造


▼  それぞれのコンポーネントについては下の動画でも紹介しています。▼




◇構造グループの開発業務

構造グループにおける開発業務は大きく分けて以下の5種類に分類されます。

1.概念検討・仕様作成
2.予備検証
3.機体構造の設計
4.構造解析による設計の評価
5.試験による試作の評価


1.概念検討・仕様作成

初めに、システム要求に基づいてどのような構造を作るかを決めます。
構造様式や製造、組立方法などの概念的な設計を行い、開発する構造コンポーネントの仕様を作成します。

エンジン支持構造を例にすると、

・構造様式はトラスにするのかスラストコーンにするのか…
・材料はアルミにするのかCFRPにするのか…
・結合方法はタンクのドームに結合するのか、円筒部に結合するのか…

といった様々な候補について、それぞれの質量や製造性、開発難易度などを比較検討しました。

要求される項目について比較を行い、最適な設計を採用します


2.予備検証

予備検証とは設計に必要なデータを設計に先立って取得することです。
材料の特性や部分構造の要素試験など、コンポーネントを実際に設計する前に確認しておきたいことを検証します。これらの予備試験により得られたデータを基にコンポーネントを設計していきます。

推進剤タンクの開発ではアルミ合金の溶接部の強度試験を実施しました。
試験で取得した強度や剛性のデータを使って設計をしています。


3.機体構造の設計

設計は仕様に基づき、コンポーネントの形を詳細化する作業です。
予備検証で得られたデータを基に、詳細な形状の検討や各部の寸法を決定します。機体システムからの強度・剛性要求や製造性、組立性などを考慮して構造を設計します。

始まりは手描きのラフから。
徐々に詳細を詰めていきます。

設計作業も最初から詳細な3Dモデルを作成するわけではなく、ポンチ絵やレイアウト程度の簡易的な3Dモデルから始まり、他系の設計と共に少しずつ詳細化していきます。上の図は1段エンジン支持構造について、ポンチ絵→簡易モデル→詳細モデルと詳細化を進めた、過去の検討例の一つです。


4.構造解析による設計の評価

設計結果はFEM等の構造解析で強度や剛性を評価します。
段階的に設計→解析という流れがあるわけではなく、並行して作業が行われます。設計したモデルを解析して、問題があればそれを設計にフィードバックするなど反復することで、設計を詰めていきます。ここで設計結果が要求を満足していることが分かれば、いよいよ試作を始めます。

FEMによる構造解析


5.試験による試作の評価

解析による評価結果が問題なければ、いよいよ構造の試作を行い、試験をします。この試験により設計や解析が妥当であったか、製造方法に問題がなかったかを検証します。荷重を負荷して強度や剛性を評価したり、フェアリングが問題なく開くかを試験したりと、設計・製造した構造が要求を満たすかどうかを確認します。

これはメカトロニクスグループと共同で実施したジンバル圧縮試験の様子です。
エンジン支持構造のトラスを含むジンバル部に圧縮荷重を負荷して、強度と剛性を評価しました。

◇ ◇ ◇

以上、開発の流れを書いていきましたが、各作業は必ずしも順番に進んでいくわけではなく、並行して進むものがあったり、反復するものもあります。また、前述した各設計フェーズの中でもそれぞれ設計、解析、試作等の作業が行われるため、1つのコンポーネントを作るにも、3~5の作業を何周もすることになります。




◇“今” 欲しい人材


 現在、構造グループではコンポーネントの開発リーダーを積極的に募集しています。
開発リーダーと言っても、
必ずしも航空宇宙業界での経験が必要なわけではありません

もちろん、ロケットや航空機などの薄肉構造の設計経験のある方は即戦力ですが、自動車や船舶などの輸送機器の設計経験のある方であれば、親和性は高いため、すぐに活躍できると思います。

コンポーネント開発リーダーの仕事は開発計画のコントロール、インターフェースの調整、3DCADを用いた設計、FEMによる解析、試験など多岐にわたります。もちろん一人ですべてを担当するわけではなく、グループのメンバーと分担し協力しながら業務を進めていきます。

「自分はCADだけやっていたい」「解析だけを究めたい」といったスペシャリスト志向の方や「設計作業には関わらず、開発のマネジメントをしたい」といったマネジメント志向の方には向いていないかもしれませんが、
「計画から実作業まで、自分で一から十まで全部見たい!」といった欲張りな方にとっては、とても楽しいポジションのはずです。やらなければいけないことはたくさんありますが、これだけ広い範囲を見られるのは”今の”ISTならではだと思います。


◆おわりに

『今なら「このロケットの設計図、俺がほとんど作ったぜ」って言える。』

山中 翔太(IST/開発部・開発リーダー)


なぜISTに転職したのか

 私がISTに転職しようと思ったきっかけの一つはこのnoteです。

『今なら「このロケットの設計図、俺がほとんど作ったぜ」って言える。』

この言葉に惹かれて、ISTに応募しました。
もちろん、ロケットは膨大な数の部品からできるため、一人でほとんどの設計図を書くなんてことはできません。今いる9人でも十分な人数とは言い難く、共に開発を進めてくれる仲間がまだまだ必要です。

少しでも興味が湧いた方はぜひ、下のリンクから応募してください。
一緒にZEROの設計図を、そして未来のISTの設計図を作りませんか?

応募ページ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?