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料理家がレシピを綴るときに考えていること。

先日投稿した「すだちピーマン」。
まさかレシピにするなんて…。
以前なら、絶対できなかったことなのです。

|我が家のおかずのバランス

夫が帰ってきて、食卓に着くまでの間に「あぁ、なんかもう一品足りない…」と窮地に追い込まれると、ピーマンや万願寺とうがらしを急いでグリルに放り込みます。

夫もわたしもたくさん食べるタイプじゃないので、食卓に並ぶおかずはいつも3つ。

そのうち1つは「すだちピーマン」のようにほとんど手を加えず塩気の少ない(各自で味の調整ができる)おかずにします。

|引き算することの面白さ、潔さ

以前、高知・仁淀川のお宿に泊まったときに「切っただけのトマト」「茹でただけのとうもろこし」が夕ご飯に出てきました。

採れたてのみずみずしい野菜は、塩や柑橘を絞っただけで、驚くほど甘くてじゅわりと体を潤してくれたのです。

おいしい野菜は手を加え過ぎないほうが「おいしい」と改めてハッとさせられました。
まだ料理教室を始めたばかりだったので、どんな味を付けるかばかり考えていたな…と。

もっと言えば、引き算することの面白さ、それができるって潔よくてかっこいいと感じました。

その気づきを、すだちピーマンのレシピで表現したかったんです。

作り方が簡単すぎるので、これってレシピにしちゃっていいの?と、一瞬の迷いはありました。が、こういう何気ない工夫こそ喜んでもらえるのかもしれないと、新しい視点が生まれました。

|現代人には「息抜きおかず」が大事

料理をする立場としては、当然「手を加えないおかず」のほうがラクです。

食べる側にとっても全てに味付けがなされているよりも、ほぼなんにもしないおかずがあることで口の中を落ち着かせてくれる「息抜き」の役割があります。

現代人は忙しすぎて食事もままならない人が多いので、刺激的な味やとっても甘いものが好まれます。
でも本来の味覚ってもっと繊細な味を感知できるものだから、そういう意味でも口の中をととのえる塩気のすくない「息抜きおかず」は大事だと思うようになりました。

似てますよね。
余白、なにもしない時間、瞑想、ととのえる… 。
それに該当するのが食卓の中の「息抜きおかず」です。

|読んでも「満たされるレシピ」

うっとりする写真が撮れれば、あとはもう写真を並べて作り方を綴っているうちに、添える言葉もふわりと立ち上がってきます。

言葉を綴っている間、実際には匂いも味も食感も音もないけれど、脳内では作っている真っ最中のように五感に響き渡る心地よい感覚になるのです。

レシピが出来上がったとき(記事の執筆前)よりも、記事を書き終えたあとの方が、同じレシピなのにおいしさが奥深くなる気がします。

レシピに物語を添えるという手間をかけることで、なにげないレシピが愛おしく特別なものになります。

「すだちピーマン」のようにシンプルな料理ほど、その魅力、たのしさ、味わいを言の葉に乗せて届けることに、とても悦びを感じるわたしなのでした。

食べておいしいだけじゃなく、読んで「満たされる」。そんなレシピを今後も届けていきたいです。

|P.S 

冒頭の写真は、ご近所さんからいただいた月桃樹の葉(ローリエ)。摘み立てのみずみずしく、青々しい葉です。

ローリエを入れてコトコト煮込む料理のおいしい季節が、もうすぐそこまできていますね。

季節の変わり目。
どうぞ皆さま、ご自愛専一にお過ごしください。


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