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【後編②】地域に根ざした食料システムとは?

こんにちは。池田です。
今日の写真はピカソさんにしてみました🕊

ついに『地域に根ざした食料システムとは?』の最終編、後編②です。(前後編の2本で終わらせるつもりが、4回にわたる投稿になってしまいました。)

今回は、健康面や食の安全というテーマに着目して、グローバルな食料システムの裏返し、地域に根ざした食料システムの利点を見ていきたいと思います👩‍🏫🥦

前回に引き続き、食料システムの中でも、農畜産に限った視点から話を進めたいと思います。

ローカルがサスティナブルな理由
食の格差、安全、健康

質より量は正義か?

以前の投稿にて『トマト缶の黒い真実』という書籍を紹介しました。その内容の中で、私にとって最もショッキングだったことの1つに、化学的に合成された食品添加物の過剰な使用がありました。

食品添加物は、保存料、甘味料、着色料、香料など、食品の製造過程または食品の加工・保存の目的で使用されるものです。(厚生労働省ホームページより引用)
→化学的に合成されているものとそうでないものがあることに注意して区別していきます。

「時には、黒く腐ったトマトペーストに白い粉を混ぜて赤くする」という内容に吐き気がしてそれ以降トマト缶を食べることを躊躇してしまいます。

コンビニのお弁当に関しても、ここまで酷くないにしても事実か事実でないかわからないような噂がありますね🍙

The Asahi Shimbun GLOBE +記事より引用)

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腐ったものを再生させて売るための過剰な化学的な食品添加物の使用、あるいは農薬を大量使用した食料生産は、世界における食料不足によって正当化されるかもしれません。

しかし、それが原因で問題も起きています。皆さんは、食の格差、あるいは健康格差という言葉をご存知でしょうか?

全ての人は、基本的人権のひとつである生存権の観点から、健康が保障されるべきだとされています。

日本子ども支援協会サイトより引用)

一方で、所得をはじめとする社会経済的状況や福祉サービスなどによって、人の健康状態は左右されます。特に、日本は先進国の中でも子どもの貧困率が高いと言われます。(全国で約55%約300万人の子どもが貧困と言われています。)この貧困によって、食や健康の格差が生まれているというわけです。実際に、貧困に陥った子どもが安価で栄養価の低い食事を取っているという報告もあります。(池田、2018)

この安価な食事というのが、過剰な投入品を使用して作られた食べ物である可能性が極めて高いのです。これは、「安いから買う→売れるから安いものを作る→安いものが市場に溢れる→安いから買う」という構造が確立されたことによる問題点です🍟🍔

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知らない・見えないという不安

化学的な食品添加物や農薬などの投入品は「完全に」悪か?と言われたら、即座にyesと答えられない自分もいます。なぜなら、私たちの生活はこれらの薬品のおかげで劇的に、快適・便利になっているからです。

しかし、「私はこれまで生きてきて農薬や食品添加物による弊害を感じていないから大丈夫」と断言できるでしょうか?未来の子どもたちは?大丈夫...?

変なのは、これら投入品に関して「ほとんど何も知らない」「どれくらい入っているのかわからない」という状況であると思います。トレーサビリティの問題です。

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グローバルな食料システムはトレーサビリティの低さ、あるいは消費者に渡る情報の不足などが指摘されています。その弊害として様々な健康問題が挙げられ、多くの事例によって明らかになってきました。

トレーサビリティとは、「その製品がいつ、どこで、だれによって作られたのか」を明らかにすべく、原材料の調達から生産、そして消費または廃棄まで追跡可能な状態にすることです。(トレーサビリティ大学サイトより引用)

例えば農薬関連で有名なのは、最近日本のホームセンターなどで売られるようになったラウンドアップという除草剤です。

ラウンドアップ公式サイトより引用)


日本では、農林水産省登録を取得しており、安全であると謳われている一方で、アメリカでは、販売者元モンサント社(現バイエル社)に対してラウンドアップの発がん性を訴える訴訟で原告側2名(Dewayne Johnson氏と Edwin Hardeman氏)が勝訴しています。(Center for food safetyCNN health 記事を参照)

つまり、アメリカではラウンドアップの発がん性が公に認められたことになります。それなのに、日本では身近なお店で買えるようになりました。

この除草剤に発ガン性のある物質が含まれている可能性があること、それがアメリカでは裁判で認められたことなどは、自ら調べていかなくては正しい、詳しい情報を得ることはできないと思います。

近くのホームセンターで目立っているから買っただけなのに、「何も知らない」ことによって病気になるかもしれない。そして、「それは知らなかった側の責任」と言われるかもしれない。

そんなことが起きる可能性があります。

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透明性の高い食料システム

食の格差やトレーサビリティの問題は、食料システムがグローバル化するに従って複雑化していきました。

私は、地域に根ざした食料システムは、この複雑さを緩和・解消してくれると考えています。理由はこれまで見てきたものと同じく「人と人、人と動物、人と自然の間の距離」が近いからです。

(同じ話をしているので、こちらも合わせてご覧いただけると嬉しいです↓↓)


例えば、保存料に関して言えば、物理的な距離が近いから世界中を旅する食べ物のように保存する必要がありません。

農薬や化学肥料の大量使用に関しても、知り合い同士だからこその信頼によって制御できる可能性が高まります。「地域の人たちにいいものを食べてもらいたい」という気持ちが、距離が近いことにより強くなります。

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ここまで読んでくださった方々、本当にありがとうございました😭

皆さんお気づきかと思いますが、タイトルの割に地域に根ざした食料システムの説明が全編においてとても雑で短かったと思います。(タイトルにそぐわない内容になるなんて想定外でした...)これから少しずつ、具体的な取り組みの例などを紹介していけたらと思います。

また、ローカルやサスティナブルというキーワードでnoteの投稿を検索すると多くの方が様々な取り組みを紹介されていてとても楽しい...。気になる方はそちらを参考にされると良いと思います。
優しい未来への希望を感じます🌈

さらに、近いうちに新しいシリーズの投稿を予定しております↓

フランスの都市計画あるいは農業政策の中で現在推し進められているProjet alimentaire territorial(PAT : territorial food project)についての解説です🇫🇷🌲🌹


これからも是非よろしくお願いします。

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池田夏香:

パリ第10大学(Université Paris Nanterre) / 地理・都市政策・環境学部(Géographie, aménagement et environment) / 農的な場や地域の振興に関わる分野を専攻しています。(Nouvelles ruralités, agricultures et développement local)

プロジェクト/インターンシップ:イルドフランス国立自然公園における農法の転換と水質汚染改善へ向けたコンサルタント(Consultancy for the sustainable transition of agricultural production systems to improve water pollution in the Vexin-Française Natural Park in Ile-de-France) / インド ポンディシェリにおける地域食料システム構築プロジェクトでのインターンシップ(Research internship for local food system in Pondicherry, India)/ 長野県 岩野地区堤外農地における浸水と農家のレジリエンス調査(Community practices of the Japanese agricultural village: Evolution of factors of resilience and vulnerabilities in Iwano, Nagano prefecture)

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