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【兄とのはじまり】第1話:こまかすぎる感想

フジテレビ7月期 月9ドラマ「海のはじまり」。
TVerで公開されたスピンオフドラマ「兄とのはじまり」、ご覧になりましたか?
もちろん観ている私ですが、この「兄とのはじまり」についても、愛情重めで語りたいと思います(笑)

本編とは別視点でのストーリーではありますが、スピンオフを観るとより本編の理解が深まり愛情が高まるような物語で。
そしてなにより、スピンオフはほっこりした気持ちに包まれる優しい物語なので、ぐさぐさと刺さりまくりで苦しい本編を観た後の感覚を和らげてくれるので、オススメです(笑)


番組情報

「海のはじまり」公式サイト


Tver見逃し配信はこちらから


第1話 「夏」

4人家族の食卓(現在)

夕飯のテーブルでからあげを囲む、現在の月岡家の4人の食卓。
向こう側に並んで座る父・和哉、母・ゆき子。
和哉の正面に夏、ゆき子の正面に大和。
愛が重めなので、まずこの配置から語ります。

本編の感想でも月岡家のテーブルのこの配置について書いたのですが、血縁のない和哉と夏のペア、ゆき子と大和のペアが向かい合って座ることにより、家族4人で会話がクロスするように、そうやって4人が家族になれるように、和哉とゆき子が考えてこの配置にしたのだろうなということが、今回のスピンオフを観てちゃんとわかった気がします。
「いちばんすきな花」にも通じますが、テーブルと椅子、"席"で"居場所"を表現するのも、生方さんらしいですよね。

そして、特に会話はなく、黙々と食べる4人。
空になった大和の茶碗に気付き、自分の茶碗からごはんを分けてあげるゆき子。
夏が飲み干したグラスにビールを注いでやる和哉。
空になったビール缶を下げて、新しい缶を冷蔵庫から取ってくる夏。
そんな夏についでにマヨネーズを持ってくるよう頼む大和。
みんなそれぞれ何かをしてもらった時に、「どーも」「ありがとー」「ありがとう」と感謝は言葉にするけれど、特別目を合わせるわけでもなく、淡々とした静かな食卓。
その中でも特に家族感を表すやりとりとして秀逸だったのが、夏と大和のマヨの会話。

大和「(冷蔵庫の前にいる夏に向かって) マヨ。」
夏「どっち?」
大和「からし。」

「兄とのはじまり」第1話より

「マヨネーズ持ってきて」ではなく「マヨ」。
「普通のとからしのとどっち?」ではなく「どっち」。
こういう最低限の台詞で会話が成り立つのって、それだけ距離感が近い証ですよね。
”いつもの”会話なんだろうな~と伝わってくるし、"いつも"の積み重ねがそれまでにあったからこその会話。
月岡家、家族なんだなと、最低限の会話で伝わってくるシーンでした。

傍から見ても、どう見たって家族。
血のつながりはなくたって、ある人と変わらない、家族。
でもこれはきっと、時間をかけて4人それぞれがお互いを想い合って築いてきた家族。
そうやってかけてきた月岡家の時間が描かれるスピンオフになるのでしょうか。
本編の理解もより深まりそうで、忙しいだろうにこんなスピンオフまで供給していただきありがとうございますの気持ちでいっぱいです。

遺伝子

食卓のシーンの最後の方で、からあげにマヨをかけて食べる和哉に気付いたゆき子が、コレステロールを気にして注意する場面。
ゆき子が大和に対して、「大和。気を付けな。遺伝子。」と冗談っぽく言い、和哉を見て嫌そうにため息をつく大和、ため息をつかれてぶつぶつ言う和哉、ふふっと笑う夏。
このシーン、普通っぽい会話ですが、あえて「遺伝子」という言葉を、血縁のない"親子"が存在するこの月岡家において言うというのが、本当に家族なんだなと思わせるシーンでした。
昔はきっと、気を遣ってこういう言葉や会話は避けていた時期もあったかもしれません。
でも今、こんな風に言葉にしても、別に誰も傷つかないし、笑えるし、ちょっとネタみたいに言える。
それってもう、"家族"だからなんですよね。

よくよく考えれば、夫婦だって別に血のつながりはないですし。
一緒にいることで、一緒に過ごしながら築くことで、家族になっていく。
そういう道のりをゆっくり一歩ずつ重ねてきた月岡家の現在の"家族"の食卓をのぞかせてもらった気分で、とてもほのぼのしました。


恋するお父さん

7歳の大和を連れてファミレスにやってきた和哉。
大和にお子様プレートやらパフェやら、「好きな物食べな。好きなだけ食べな。」と与えるだけ与えた上で、少しもじもじしながら、「大和、パパ、結婚しようと思ってる人がいるんだ。」と打ち明ける和哉。
もう本当に恋するお父さんって感じで、和哉さんが可愛かったです(笑)
ファミレスで恋バナって、親子でもあるんだな。

それを聞いて無になるチビ大和くんの表情と、「そうですかーと思った。俺が嫌とかダメとか言っても無理なやつだと一瞬で察した。」というモノローグ。
「恋してます、という父親の顔は、なかなかキツイものがあった。」という現在の大和のモノローグ。
チビ大和くんにとっては衝撃かつ複雑な恋バナだっただろうに、不覚にも笑ってしまいました。
チビ大和くんがとにかく可愛い。

色々察して、「おめでとー」と言ったチビ大和くん。
安心して嬉しそうに「ありがとー」という和哉。
この和哉さんの「ありがとー」の言い方が、冒頭のシーン、現在の食卓での「ありがとー」の言い方と変わっていなくて、ああ和哉さんだなと思いました。

パパが結婚する。
新しいお母さんとお兄ちゃんが出来て、自分は弟になる。
色々と情報を与えられるチビ大和くんは、「わかった」とその場では答えます。
ここでの現在の大和のモノローグが、「わからなかった。パパはママしか好きにならないと思ってた。パパのこどもは自分だけだと思ってた。」。
ちょっと切ないシーンでしたね。

パパはパパだけだし、ママもママだけ。
パパもママも一人ずつしかいないと思っていた大和くんにとって、自分がどうすることも出来ないとはいえ、新しいママが出来たり、パパが新しいお兄ちゃんのパパになるのって、複雑だったり寂しかったりしたはずです。
そんな大和くんが、ママが二人いることを受け入れていく、そして、夏にもパパが二人いることを受け入れていく。
そんな過程が、このスピンオフでは描かれていきそうです。
本編で水季や海が言っていた、「パパが二人いてもいい」にも繋がりますね。

大和くんの立場は、本編での現在の海ちゃんに似ています。
幼い頃に母親を亡くした時の気持ちや、母親を亡くした幼い子どもとして周囲から見られ配慮される環境を、大和は自分で体験してきている。
これから海ちゃんが、一度も会ったことのなかった父親である夏や、例えば弥生と、"親子"の関係を築いていくとして、そこに対するよろこびも、抵抗感も、大和がわかってあげられる部分は大きいはず。
夏にとっても、自分はこうだったなという経験に加えて、大和はどうだったのかなを知ることって、海ちゃんとの関係を深めていくにあたり、とても大切なヒントになると思います。
本編の海ちゃんとスピンオフのチビ大和くんは、リンクする場面が多そうです。

4人家族の食卓(昔)

再婚して間もない頃かと思われる、月岡家4人の食卓のシーン。
無言。
でもその無言が、冒頭の現在の月岡家4人の心地よい無言の空気感とは違ってやや重くて。
黙々と食べる夏、心を開いていない様子の大和、そんな二人の様子を気にかける両親。
どこかまだ馴染んでいない、新しい家族独特の空気感。
二人家族と二人家族の合計4人が並ぶ食卓、という空気感。

当時まだ、ゆき子は大和のことを「大和くん」と呼んでいる。
次のシーンでは、和哉が夏のことを「夏くん」と呼んでいます。
いつからか、呼び方が「大和」「夏」へと変わっていったんですね。

「silent」でもそうだったけれど、生方さんの脚本って、人の呼び方を、距離感を示す大切なものとして丁寧に扱いますよね。
紬と湊斗が分かれた後、青羽、戸川くんと呼び合ったりね。

ということはやっぱり、本編で夏と弥生が「弥生さん」「月岡くん」呼びになっているのって、何かしらの意味があるんだろうな…。
なんて、本編のことをふと思ってしまったりしながら、スピンオフを味わっています。

おかわり

食卓シーンの続き。
チビ大和にごはんのお代わりをあげようとゆき子が声をかけますが、大和は返事をせず、自らスタスタと炊飯器の方へ。
わかっているんだけれど、素直になれない感じ。チビ大和くんなりの抵抗。
でも身長が足りず、上手くごはんをよそえない大和のもとへ、夏がスタスタと無言で近寄り、代わりにごはんをよそってあげました。
そんな夏をじっと見つめ、無言で席に戻った大和。
「お礼言って」と和哉に言われますが、言えず、黙々とごはんを食べます。
そんな大和の横で、何も気にしていないかの様子で黙々とごはんを食べる夏。
このチビ夏くん役の子の雰囲気が、今現在の夏くんによく似ていて、とてもナイスな配役だなと思いました。

人のことをちゃんと見ていて、きっと夏なりに大和の気持ちもお父さんお母さんの気持ちも考えていて、でもきっとここで大和にごはんをよそってあげたのは、シンプルに困っていた大和を手伝おうと思っただけ。
ごはんは食べたいけど、お母さんからはもらいにくいんだろうな。
よそえなくて困ってるから、手伝ってあげよう。以上。みたいな。
淡々としていて、別にお礼なんて言ってくれなくていいし、俺がやりたくてやっただけだし、みたいな感じが、夏くんぽいです。
そんな夏くんの夏くんらしい優しさは、お礼を言えなかった大和にはちゃんと伝わっていた。
夏くんがいたから、大和は家族になれたんですよね。

そんな二人の様子を見て、微笑み、それ以上は何もいわない両親も良い。
「ちゃんとお礼言いなさい」とここでは叱るわけもなく。
いきなり「大和」「夏」と距離を詰めて呼ぶわけでもなく。
時間をかけて、ゆっくりと、見守って、家族を築いてきたんでしょうね。
毎日「お礼言ってー」と言ってきたから、今自然にお礼を言える子に育ったのでしょう。

本編の感想でも少し書いたのですが、子どもが親や家族を選べなくても、親は選ぶことが出来る。
自分たちの意思で、和哉とゆき子は夫婦になって、夏と大和との4人家族をつくることを決めた。
和哉とゆき子、しっかり4人で家族になるために、夫婦同士で話し合いながら、二人の息子とじっくりゆっくり向き合ってきたのでしょうね。

おはよう

別の日の朝、起きてリビングにやってきた夏と大和。
アイロンをかけた夏のハンカチを夏に渡す和哉と、和哉に「ありがとう」という夏。
そんな二人を見て、大和は炊飯器からごはんをよそうお母さんの背中をじっと見つめます。
ここのチビ大和くん。
ありがとうとか、おはようとか、言った方がいいってわかっているし、言いたくて、でもずっと言えなかったのでしょう。
お母さんに「おはよう」と言ってみようとしている様子です。

でも言えない。
そんな大和の横にすっとやって来て、お母さんに「おはよ」と言った夏。
振り返らずに「おはよ」と返すゆき子。
まだ何も言えずにいる大和の背中を、ぽんと一度だけ夏がたたくと、大和は夏の顔を一度見て、ゆき子の背中に「おはよう」と声をかけました。
一瞬驚いた様子でふり返ったゆき子は、すぐに笑顔で「おはよう」と返します。
この時の大和くん、口をきゅっと結んでいるけれど、ちょっと嬉しそう。
大人も子どもも、みんなそれぞれ頑張って、ひたすらに日々を重ねて、家族になっていったんだよね。
今から家族です、と言われて、なれるわけなくて。
ここが家族のはじまりですって、きっとなくて。
想い合って、積み重ねていくのみ。これがひとつの答えかもしれませんね。ここでのチビ大和くんの頑張りに、思わず涙しました。

いるから大丈夫

大和の部屋に置かれた大和の実の母親の写真に向かって、大和と並んで手を合わせる夏。
本編でも、ゆき子が同じように手を合わせていましたし、いつもきれいに飾られているお花から、亡くなった大和のお母さんが、もう一人のお母さんとして、ずっと大切にされていることを感じさせます。
死んだからって、いなくなるってわけじゃないし、なかったことにしなくていい。
本編の水季にも繋がっていきそうです。

そして、ここでの二人の会話。

大和「夏くんのパパも死んじゃったの?」
夏「ううん。生きてる。」
大和「会いたくないの?」
夏「お父さんいるから大丈夫。」

「兄とのはじまり」第1話より

からの、現在の大和のモノローグが、「お母さんがいる、兄ちゃんもいる、から、大丈夫な気がした。」です。
そして笑って「行ってきます」と飛び出していく夏。追いかける大和。
流れるbacknumber。泣く私(笑)

本編の水季の「いるから大丈夫」を、チビ夏くんが別のかたちで回収しましたね。

水季が海に言った「いるから大丈夫」。
「ママ(自分)はここにいるよ」という意味でもあり、「パパ(夏くん)は(そばにいないけど)ちゃんといるよ」でもあり、「ママはいなくなっても(死んでも)いるよ」でもあり、「新しいママがもし出来てもママ(水季)はいるよ」でもあり。
無限通りの解釈が出来る台詞。永遠に考えていられます。

「夏くん」「大和くん」

そして第1話ラストは現在の夏と大和のシーン。
冷凍庫を物色する夏に、「兄ちゃん俺もアイス」と大和。
二人分のアイスを持ってくる夏。
当たり前のように大和のアイスを持ってきてあげる夏と、目はスマホに向けたまま当然夏がアイスを持ってきてくれると思って手だけ伸ばして待っている大和。
いつもこんな感じの兄弟なんだなとほっこりしますね。
木戸大聖さんの甘えんぼな可愛らしい弟感、すごくないですか。

そして二人の会話。

夏「大和さ、最初兄ちゃんって呼んでなかったよね。」
大和「呼んでたよ。」
夏「そうだっけ。」
大和「うん。ほら、俺兄ちゃんより適応能力高いし。人見知りとかないし。」
夏「確かに。…なんか、夏くんとか。」
大和「それお父さんでしょ。」
夏「ああそうだ、最初くん付けだったわ。」
大和「でしょ。その記憶だよ。」

「兄とのはじまり」第1話より

夏が「確かに」と言って笑った時、ふふんと笑った大和。
小さい頃にいつも夏に助けてもらったことをちゃんと理解しているからこその、少し照れくさそうな、でも嬉しそうな表情が、とても可愛らしかったです。

夏と大和は対照的で、今現在の大和は、考えるよりも先に言葉が出るし、適応能力も高いし、コミュニケーションも上手。
でも大和がそんな大和でいられるのは、夏がいたからなんですよね。

夏は幼い時から、あまり話すタイプではないし、適応能力やコミュニケーション能力も高い方ではなかったのかもしれない。
新しいお父さんが出来て、弟が出来て、夏は夏なりの戸惑いもあったと思うけれど、隣にいる大和のことをじっと見ていて、さりげなく寄り添って、支えてきたんですよね。
よそってあげたごはん、ぽんと叩いてあげた背中。
そのひとつひとつが、殻に閉じこもりかかけていた大和を軽くした。
夏のことだから、別に自分は何もしてあげられてないよって思うのだろうけれど、でも、夏がいたから、大和もみんなも、救われてきた部分がある

本編の第3話でも「俺はなんにもしてなくて」みたいなことを弥生さんの前で言っていましたね。
弥生さんが言っていた「向こうもそうだったんじゃない」という部分が、大和目線でスピンオフで描かれるのかもしれません。
夏の存在、夏らしい優しさが、周りに影響を与えているんだということが描かれたシーンでした。

本編で描かれる夏くんは、どこかつかみどころがなくて、鈍感で、言葉とか行動とかがたまに大丈夫?と心配になってしまうところもあるけれど。
そして夏くん自身の自分への自信のなさが垣間見える場面が多くあるけれど。
でも夏くんの、自分よりも周りのことを考えるという性格には、なんというか、「自分なんて…」という卑屈さみたいなものは感じなくて、損得とか優劣という感情ではなく、相手のこと、周りのことを考える、事実を見つめる、1回受け入れてみる、みたいな、人や出来事に対するフラットさや冷静さを感じるんですよね。
そういう夏のなんともいえない不思議感というか、奥行きというか、その存在に、水季や弥生もきっと救われた部分があったのだと思います。
海が夏に懐いたり、夏の前で泣けたのは、夏が海のことを子ども扱いせず、自分が親ぶることもなく、不器用なりにもまず人として向き合う夏らしさがあったからだとも思います。

このスピンオフは、大和目線でのストーリーになっていますが、夏の"夏らしさ"をより深く理解していける物語にもなりそうですね。



という感じで、スピンオフまで泣けるんかい!という素敵な物語でしたが、こちらは本編とは一味違う「ほっこり感」に溢れていて、よかったです。
これから毎週スピンオフも楽しみになってしまう。
まったく、忙しい夏ですね!!嬉しい!!!!

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