120.三億円の二千万
本稿は、2019年11月9日に掲載した記事の再録です。
子どもの頃、母が何かの用事で夕飯を作れない時や、父が出張でいない日などには、お蕎麦屋さんから出前を取ってくれました。お客さんが来てお寿司や鰻重を取るのとは違って、お蕎麦屋さんのは普段着の出前でした。
メニューが印刷されている色のついた厚紙は、透明な下敷に入って電話台の脇にかかっていました。電話台には、出前メニュー以外にも、五十音順の電話番号帳があって、あかさたな…のタグのところを指で押さえて開けると、あ行、さ行の知り