理想が生活に勝つのは難しい。MVVに置いてけぼりにされた組織へ。
Mission(ミッション)、Vision(ビジョン)、Value(バリュー)を、よく目にする。
「もしかして、私たち、MVVに置いてけぼりにされている!?」。
そんなことを思う。
採用、人材育成、人事評価、企業の成長……。
企業活動のあらゆる部分に「MVV!、MVV!!」と聞こえてくる。
金科玉条、経営の秘訣。
そんな圧力をWebや書籍、研修からもビシバシ感じている。確かに在るほうがいい。理屈も心が熱くなる。個人的にも在って然るべきだと思う。
だけど、多くの中小企業では、高尚なもの、理想では飯は食えない、と傍観して置いてけぼりにされてやしないかと思う。
「うちの会社はビジョンがないからダメなんだ」。
ややもすると、MVVが無いことに責任転嫁する。
それがないと本当にダメなのだろうか。
『ビジョナリー・カンパニー2(ジム・コリンズ著)』ではこう述べている。
創業からMVVがあるわけじゃない。MVVは「出発点」じゃない。
MVVは目標と云えるが「目的」だけではなく「手段」にもできる。
高尚でもなく、飯の食える理想にできるかもしれない。
そんなことを考えている。
多くの企業には経営理念、社訓、社是などがすでに在る。
それらが、忙しい日常に削られ、熱量を亡くし、いつしかほこりを被る。
理念では飯は食えない。
本音と建前、理想と現実……。
理念は風前の灯かもしれない。
理想が「生活」に勝つのは難しい。
実際そう思う。
それを何とかできないだろうか……。
そういう時は「MVV」に心惹かれる。閉塞感を打ち破ろうと企業の再定義を試みる。
しかし、MVVは生み出すことも苦しい。生み出したから成功が約束されるわけでもない。
むしろ、価値観が大なり小なり異なる人間の渦中に、いかに浸透させ、どう持続させるか、そんな工夫をこしらえるのは、えらく難儀をする。
さらに、この手の類は成果がわかりにくい。
立ちはだかる壁を「覚悟」で押し通す場面も多いだろう。
悪い言い方だと「価値観の押しつけ」である。そりゃ、お互いにしんどい。
気軽に試してみようというシロモノではない。
そして、MVVは「組織の判断基準」に成らないと意味がない。
ハリボテなら弊害に成り下がる。
例えば「スピード」。これは始める早さも大事だけど、意思決定の仕組み化も重要。いくら始めが早くても、100%を求めたり、承認階層が多ければ、その分遅くなる。指示が曖昧なら、やっぱりその分遅くなる。組織やその接続部分、仕組みが連動してこそ速度は発揮される。出来なければ価値観ごと疑わしくなる。
例えば「誠実」。それは評価が難しい。しかも幹部が破りがちである。もはやあるあるではないだろうか。「これくらい」という隙間はどこにでも存在する。たった1つでも発覚すれば破綻する。「誠実」はかなり危うい。人間を善だと過大に評価しているようで息苦しくなる。
MVVは判断基準や組織文化に成ると力強く、心強い。
しかし、それが揺らぐと組織も揺らぐ、諸刃の剣と云える。
ところで、MVVは最終目的なのだろうか。
その先には何もないのだろうか。
私はあると思っている。
辿り着いたのは、組織の宿命である「継続企業の前提(ゴーイング・コンサーン)」だった。
「世の中から必要とされる」。
これが継続できない企業はいずれ滅びゆく。ともすると「持続可能性を高める」ためにMVVがあると云っても過言ではないと思う。
持続可能性を高めるためにMVVを「手段」にする。
そしてさらに奥には、関係者が幸せに成る、それがある。
持続可能性を高めるには利害関係者の充実は欠かせない。
従業員、取引先、顧客、地域、株主。それらが充実しないのなら持続可能性にほころびがでてくる。
顧客が満足しても従業員が充実していないのなら……。
商品やサービスの「主体(作り手)」である従業員が充実せずに、果たして顧客の満足が持続するのか……。
それはないと思う。顧客に無償の愛なんて無理がある。
つまり、理想が「生活」に勝つ必要はない。
充実した生活を求めるなら、人を大事にして、取引先、顧客、地域を大切にして、株主を満足させる。そこに辿り着くはずだ。
だから、MVVは手段でいいと思う。
もっと生活密着型でいいと感じる。
そんな理念、私が好きな理念をご覧いただきたい。
どうだろう、平易な言葉だと感じるのではないか。
これならどこの企業でも目指していいのでは?
理想と「生活」が喧嘩する必要はない。
企業は「持続」を宿命として背負っている。しかし生存率は低い。
だからこそ、持続可能性を高めるためにやるべきことをとことん考える。
誰かのために仕事をしているから対価をいただけている。
それなら、まっすぐに「どうしたら役にたつか」を考え、実行すればいい。
真っ当に仕事をする。真っ当に生活する。
それをコトコトと煮詰めていけば、いい塩梅の企業ができるんじゃないか。
それだけの味が人間にはあると私は信じている。
どうだろう、MVVに置いてけぼりにされた組織は「持続可能性を高める」ことを目指してはいかがだろうか。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
足跡を残していただければ幸甚です。
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