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あなたと一緒に

 あなたが私を呼ぶことがないことは知っている。知っているし、私だってそんなこと願い下げだ。何を考えているのかもわからなければ、突然閃いたように話し続けることもある。引っ越した先、たまたま近所になった、ただそれだけのことで、わざわざ面倒を見てやる筋合いもない。

 それでも、なんでだろう。

 いつも、いつも、自然に、一緒に帰っている。

 そんなことを知っているのも、こうした付き合いがあるからに他ならないし、友達からは「恋人でしょ?」なんて揶揄される。迷惑甚だしい。

 それでも…‥見捨てるようなこともできなければ、こんなやつ! なんて ばかにすることもできない。

 なんて言えばいいだろう、そう。同年代などの男子よりも、大人のように思えて仕方ないからだ。それは、背格好とか、落ちついているとか、そんなことではなく、しっかり地に足をつけて、自分の感覚でーーそう、周りに左右されたり、影響されたり、振り回されたりするような知識ではなくて、ちゃんと自分の感覚で持って言葉を使っているから。

 私は、それに関しては、すなおに、すごい、と思っているし、話しをしていて、正直に、心地よい。

 だからといって、好きになるとか、恋人だ、とか、そんなことではない。そんなことではない。

 自然なんだ。一緒にいるのが。あまりに、自然、なんだ。

 あなたはどう考えているかわからないし、いつもいつも、やっぱり、わからない。

 何を考えているんだろう。
 今日は、どんな話しをしてくれるんだろう。

 いつも、うん。

 楽しみにしてしまっている。

 この帰り道が、いつも、楽しみ。

 はぁ、ばかみたい。私のほうが、ばかみたい。

 それでも、あなたは私を呼ぶこともない。私も、呼ばない。それでも、自然に、一緒に帰っている。

 もう、春だね。もう、春。

 いつまで、こんな時間が過ごせるだろう。

 ……でも、いつまででもない、けれど、そのときがくるまでは、そんなこと考えずに、いよう。

 そのときがきたらきっと、悲しいけれど、寂しいと思ってしまうけれど…‥そんなこと感じたくもないけれど。それは、そのときに、感じればいい。

 それまで、まあ、仕方ない。

 一緒に、帰ろう?

いつも、ありがとうございます。 何か少しでも、感じるものがありましたら幸いです。