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己の存在を誇る

 やらせない気持ちが胸をいっぱいにして、怒りやら呆れやら、何かよくわからない感情が渦を巻いてしまってもう何も見えない。

 しんどい つかれた いやだ いや

 そんなことばかりが脳裏に浮かび、泡沫の如く消えていく。

 この風と一緒にすべて、吹き飛ばされてしまえばいいのに。

 自転車を漕ぎながら、そんなことを考えている。

 これまでのよい天気から一転、厚い雲間が差し始め、満月はすっかり覆われて隠されてしまっていた。にもかかわらず、朧に輝く月はその存在を十分に示し、かえって美しくも思う。

 隠されていてなお、美しい存在感。

 私はこの見えない感情をこうまで美しいとは感じられない。その差は何であろう。

 ただ、己の存在を誇り、一心に輝く、その姿が、これほどまでの美しさを魅せているのであろうか。

 私は? 私は? 己の存在を誇って、ここにいるのであろうか。

 やらせない気持ちなんて、もしかしたらただの言い訳なのかもしれない。

 ただ、ただ、湧いてくる感情に身を任せて、私という存在を隠すだけで、示していないのかもしれない。

 こんな負の感情でさえ、己のあるがままの姿として誇り、認めれば、心の中で蔓延っていてなお、美しく、きれいに、あれるのであろうか。

 私にはまだ、そんな境地には至れない。

 ペダルに力をこめながら、この風に抗い、進む。吹き飛ばされないように。

 ひとまず、今の私には、それくらいしか、できなかった。 

いつも、ありがとうございます。 何か少しでも、感じるものがありましたら幸いです。