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【ショートショート】『二刀流の男』

大仁田翔平は苦悩していた...

「ワシは、ワシは一体、どっちを選べばいいんじゃい...」

自分では、とても答えを導き出すことが出来なかった... 
母親にアドバイスを求めても 
「そんな重要な事に私が口を出せる訳ないでしょう!アナタの人生なんだから、自分で決断しないと」 
と言われて終わりだった。 
父親にもアドバイスを求めたが 
「アホッ!自分でビシッと決めて、歴史に生まれた歴史の男にならんかい!」 
と一蹴されてしまった。

誰もヒントさえくれなかった。 

翔平は部屋に閉じこもり、一人で悩み続けた。

そんなある日、悩み続ける翔平の胸に一つの答えが沸き上がってきた!

「いや、どっちかを選ぶなんてワシにはできん!両方共やってやる!」 
翔平は、自分の選んだ答えに興奮して、着ていた白いタンクトップを勢い任せにビリビリに破いた! 
そして、興奮状態の翔平は破れたタンクトップを着替える暇も惜しんで、そのままの格好で近所の喫茶店に行き、恋人の麻子を呼び出した。

喫茶店に駆けつけた麻子は、若干引きながら翔平に聞いた。 
「ど、どうしたの?メール送っても無視してたのに..いきなり、そんなボロボロな格好で..」

翔平はテーブルを叩いて立ち上がり、麻子に向かって高らかに宣言した!

「麻子!ワシはどっちもやってやるぞ!

世間がアッと驚く二刀流の男になってやる!」

【了】
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なんなんだ...これは..

ひどいな..この意味不明さ...

「どう?」 
休み時間、二人きりの会社の喫煙室で気怠そうに聞いてくる長谷部に俺は答えた。 
「いや、どうって...あの、長谷部さん。俺、若い人に受けそうな話って言いませんでしたっけ?」 
長谷部は面倒くさそうに答えた。 
「え、そうだったっけ..」 
「間違い無く言いましたよ!若者が食いつきそうな異世界系みたいなやつって!」 
長谷部は頭を掻いて、煙草を咥え、煙を吐き出してから半笑いになり 
「まあ、いいじゃんか..ある意味、異世界系でしょ?次はちゃんとしたの書くからさ」 
と、俺に向けて掌を見せた右手を差し出した。 
俺は長谷部を睨みつけながら言った。 
「ちょっと、こんなオチも無い様な雑な作品に5千円も払えないですよ!ハッキリ言って全然面白くないですよ、これ!なんなんですか、大仁田翔平って!若い人が解る訳ないじゃないですか!」 
俺の言葉を聞いた長谷部は不貞腐れた顔になり、口を尖らせて答えた。 
「それは無いんじゃないの!今まで散々書いてきたのに!コレだって忙しい仕事の合間に書いたんだから!」

こんな男を選んだ俺が甘かったか... 
いや、文才も無いのに、人に書いてもらった作品を投稿してブレイクしようという、そもそもの俺の考えが間違ってる様な気がしないでもないか...

俺は仕方なく財布から5千円札を取り出し、長谷部に渡した。 
受け取った長谷部はニンマリと笑顔になって立ち上がり、俺を見て 
「毎度!じゃあ、又、ヨロシク!一緒にのし上がって行きましょうよ、ミックジャギー先生」 
と言い残して、喫煙室を出ていった。

俺は遠ざかる長谷部の背中を見ながら 
『こんな作品で、のし上がれるわきゃねーだろう!』 
と心の中で毒づいて、長谷部が忘れていった、吸えもしない煙草を吸う為に咥えてみた。

しかし、ライターが無い事に気付いた俺は、仕方なく昔の舘ひろしをイメージして、エア喫煙をするという、非常に虚しい時間を過ごす事になってしまった..

【了】

出演、ミックジャギー、長谷部雄二(HSB48)

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