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みかん0%の夢

夢の中でするセックスはまるで泡の中にいるようだ

マシュマロの海で平衡感覚を失い、暴れもがいている気分になる

彼女に触れているのかも分からない

僕が持っている彼女の腰、くびれ、胸はいったい誰のものなのだろう

髪に触れようとしても透き抜けてしまう

たしかに彼女は僕の上にいるが、陽炎のように淡く揺れる輪郭はその線状に光を纏っている

彼女は激しく髪を乱れさせて動き、これまで見たことの無い顔をしているようだ

苦しそうで、それでいて僅かな快感を一点に感じてるようで、そしてどこかに解放されようとしている顔だ

しかし、僕と彼女が繋がっているはずのある部分だけはうまく目に捉えることができない

そこだけをシルクのカーテンで隠すように、白くポッカリと空いてしまっているようだ

僕はどれだけ時間が経ってもオーガズムに達することができず、焦っている

もはや何のために僕は彼女と交わっているのだろうか

彼女は僕の耳元で囁いた

「これが愛なのかな、、、」と

彼女に触れようとすると、一瞬ではじけてしまった

気付くと僕はひとりになっている

あとに残るのは薄いミルクと桜の花びらを混ぜたような香りと、首を伝う汗のようなものと、元からあったのかすら不明な性欲

そして彼女がそこにいたという失われた感覚と得る権利すらない虚無感だ

・・・・・・・・・・

ふと夢に出てきた女の子のことが妙に気になってしまう

誰しも一度はそんな経験があるのではないだろうか

それが身近な人であればあるほどその子が気になる度合いは高くなる

夢の中でその子とずっと宙に浮いているような、ふわふわして掴みどころが無いセックスをしたならば思い出すだけで股間を固くしてしまうほどだ

別にその子のことが気になるとか好きであるわけではないのだけれど、夢に出てくるということは何かしらの意味があるのかもしれない

そんな夢から目覚めたその日にばったりとその子と会った時には、根拠も無い卑猥な可能性を願ってしまう

しばらく会っていない女の子であれば、ちょっと連絡でもしてみようかとも思ってしまう

もちろん実行に移したことは一度も無い

「急にどうしたの?」と聞かれて

「君とセックスをする夢をみたから無性に気になったんだ」なんて返せるわけがない

どう考えても気持ちが悪すぎる

下手をすれば訴えられる

容疑名は『夢中強姦罪』といったところであろうか

あの子は夢の中と同じ顔で、同じ体位でオーガズムに達するのだろうか

そもそも夢の中にオーガズムは存在するのだろうか

しかし夢から覚めた後は本来のオーガズムとはまた別の快感が味わうことができる

起きた時に湿っているベッドシーツは、本当に夢の中のあの子の汗が滲みているのかもしれない

枕を嗅ぐと、あの香りが蘇る気さえする

もしかするとその夢は、現実では決して叶うことが無いであろうその女の子とのセックスに対する嫉妬なのかもしれない

自分でも気付くことがなかった、その女の子とのセックスを渇望する欲情が脳の端からひょいと顔を出し、夢の中で叶えようとしているのかもしれない


僕「あーあ、良いことねえなぁ。あの子とセックス出来たら楽しいんだろうなぁ」

脳「よっ」

脳は僕にホットの缶コーヒーを投げる

脳「なに辛気臭い顔してんだよ」

僕「おわ!あっつ!なんだよ急に…つーか俺がコーヒー苦手なの知ってるだろ?」

脳は楽しそうに笑い、ホットココアの缶を開けて僕の隣に座った

僕「お前はココアかよ、俺もそっちの方が良かったんだけどな…」

脳「俺も俺だろ?まあ、たまにはいいだろ?」

僕「まあ…たしかにたまに飲むコーヒーも悪く無いかもな。ちょっと苦いけど。ありがとうな」

脳は満足そうだ

脳「まあ、あれだ。きついこともあるけど、生きてたら良いこともあるぞ。きっと。人生、そう捨てたもんじゃねえよ」

僕「そんなもんかな…」

脳「そんなもんだよ。仕方ねえなぁ、ほんの気持ちだけど、良い思いさせてやるよ、ほら」


みたいな感じで、僕が寝ている間に女の子の腕を引いて半ば無理やり登場させてくれているのかも

源氏物語では「夢に出てきた人は自分のことを想っている人」だと何とも身勝手な解釈をしている

身勝手だが、そう考えた方が楽しいし嬉しいのは認めざるを得ない

夢の中のあの子へ、どうか僕に気付いてください


もちろん、セックスをしないこともある

昨晩、僕の夢にある女の子が出てきた

26時のマスカレイド、通称ニジマスというアイドルグループに所属する来栖りんという子だ

めっちゃくちゃ推し、というわけでもないし勿論会ったことがない

楽曲をちゃんと聴いたこともないため、ファンとも言い切れないほどだ

インスタグラムで「かわいいなー」ぐらいの気持ちで見ているだけの存在だ

夢の中で彼女と僕は僕の実家にいた

外はかなりの吹雪で、膝下が埋まるほど雪が詰まっていた

僕と彼女はこたつに入ってみかんを食べていた

みかんは味がしなかった

急にインターホンが鳴った

雪がすごいから除雪に来てくれ、そうしないと夜明けには雪で家が埋まって外に出られず、電気も通らず凍死するぞ、という内容だった

僕はダウンジャケットを来て、金属製のスコップを手にし、外に出ようとした

彼女は僕の腕を掴んで止めた

早く行かないと明日には家の中で凍え死んでしまうかもしれない、と僕は言った

彼女は、行かないでと言う

僕が行かないと2人とも死んでしまうぞ、と僕は強く言った

彼女は僕の目をじっと見つめた

彼女の目に涙が溢れている

「もしそうなったら、ずっと一緒にいられるね」と彼女は心から出た笑顔でそう言った

まるでそうなることを願っているような笑顔だった

「まだみかん残ってるし、食べなきゃもったいないよ?」と彼女は続けた

そんなのごめんだ!と言って彼女の腕を振り払い、僕は外に出た

背後から「ばか」という彼女の声が聞こえた

外に出ると吹雪はすぐに僕を飲み込んだ

そこで目が覚めた

僕はすぐにインスタグラムを開き、来栖りんを眺めた

たしかに、夢の中で見た顔だ

僕は気になってYouTubeでニジマスの曲を調べてMVを見てみた

『ゼンキンセン』という曲のMVを眺めた

MV中で来栖りんが「気付いてよ。ねえ、ばか」と歌うシーンがあった

夢の中で聞いた「ばか」と同じ響きだった

気付かせたい相手は思いつかないが、その歌詞は夢の中の僕の気持ちを代弁しているようだった

もしかすると、それは僕自身が自分に言っていることなのかもしれない

驚きと興奮でなんだか彼女のことが気になり始めた

男って単純でバカだなとつくづく思う

そんなことをnoteにでも書こうかなと考えながら夜道を歩いていた 

広い池があり、月明かりを映す水面は黄色く静かに揺れていて、それは重ねて並べたみかんの果肉のように見えた

寒くて甘酸っぱい夢だった

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