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夜を過ごすだけ

本当の愛情を知らなかった私。
寂しさに埋もれた私は、一夜だけでもと寂しさの外に出ようとする。

仕事帰り。
大きな地下鉄の駅にはたくさんの賑やかな声が溢れてて、
ギュウッと悲しさが心臓に染み込む。
おもむろにスマホを握りしめ、ある男にラインを飛ばす夕方18時。
なんたって今日は金曜日。

”今日の夜、飲みに行かない?飲みメンタル。”

すぐにラインは返ってきて、

”いいよ〜。俺もそろそろ飲みたくてラインしようとしたところ。”

飲みたいと言うなの、夜を楽しみたいと言う口実。
それをお互いにダイレクトには伝えない。

すぐさま私は一人暮らしの家に帰りシャワーを浴びて、長い髪にドライヤーをかける。
お気に入りのヘアオイルをつける。
今から会う男に良い香りと言われたから。

念入りに服を選び、化粧をして、髪を巻いたらすでに20時。

”21時にいつもの駅ね!”

男にすかさずラインを送り、出かける前の最終チェックをする。

イヤホンをつけて好きな音楽を聴きながら外に飛び出す。
この瞬間が一番ワクワクする。
今日の自分が、新しい自分に変わった感じ。

21時まえに集合場所の駅に着き、いつも行く駅前の本屋に立ち寄る。
海外旅行の本を見て、次はどこの海外に行くかを考える。

「久しぶり〜。」

男に会うまでずっとイヤホンで音楽を聴きいている。
イヤホンを外した瞬間から、この男との時間を最高に楽しむと決めている。

いつもの居酒屋。もちろん最初は生中で。
いつも頼むものは決まっていて、閉店まで話しこむ。

スマホを見ずに、わざと話し

「あ、やば。終電逃しちゃった。」

これはお決まりの言葉。

これを言えば、

「じゃあ、どっかで飲み直す?」

と男が言う。
どっかとはホテルである。もちろん、ダイレクトには言わない。

「そうだね〜。泡風呂しよっか。」

コンビニでお酒とおつまみを買って、いつものホテルへ。
怪しい細道の路地裏を歩く。
私たちみたいな2人組がたくさんいるから安心する。

ホテルに着いたら、最近ハマりの泡風呂を作る。
お酒を持って、お風呂に直行し、スマホで映画をみる。

泡風呂の中で、男の腕に包まれながら・・・。

男が私を優しく抱きしめたら、それは始まりの合図。




ー朝起きて、私はベッドの端っこにいる。

私たちは触れ合うこともなく、何事もなかったかのように朝の眩しい太陽を浴びて

「じゃあね〜。また連絡して。」

と次の約束も決めずにそれぞれの家に帰る。


これが私の夜だけを過ごす人とのルーティーン。


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