ああああ

結果よりも、プロセスにこそ意義がある ゴジラ検定

英検を受けたことはない。教職免許も持っていない。履歴書の資格欄はいつも「なし」だった。

そんな自分がいま持っているのは、しかたなしに取ったAT普通免許と、
「ゴジラ検定」初級・中級だけだ。

「第1回 ゴジラ検定」
ゴジラ検定運営委員会、東海大学 高輪キャンパス / ホテルフクラシア大阪ベイ、2019年3月10日

「ゴジラ検定」とはなんぞや

今年が初の開催。初級、中級共に国内で制作された実写「ゴジラ」シリーズ映画29作品の全般から出題される。つまり、マグロ食ってるよな奴渡辺謙干し芋自販機で買えるメカキングギドラなどは出題されない。下記一部問題抜粋。

初級Q7
『キングコング対ゴジラ』劇中で、北極海で光る氷山を発見した潜水艦は、次のうちどれか。
1.シーホーク号 2.アルファ号 3.わだつみ 4.轟天号
初級Q29
第1作『ゴジラ』に登場する尾形秀人を演じた俳優は、次のうち誰か。
1.黒部進 2.藤岡弘、 3.宝田明 4.誠直也
初級Q41
『シン・ゴジラ』において、ゴジラのイメージデザインを担当したスタッフは、次のうち誰か。
1.前田真宏 2.井上泰幸 3.寺田克也 4.西川伸司
中級Q21
次のうち、『ゴジラ対ヘドラ』の主題歌『かえせ!太陽を』の歌詞に出てこない物質はどれか。
1.コバルト 2.クロム 3.バナジウム 4.オキシジェン
中級Q69
次のうち、2本の新作ゴジラ映画劇場公開されたのはどれか。
1.1964年 2.1966年 3.1995年 4.2017年
中級Q82
『ゴジラVSスペースゴジラ』に登場する対G兵器MOGERAHA、「M」は「Mobile」、「G」は「Godzilla」というように6つの単語の頭文字を繋げて命名されている。4番目の「E」は、次のうち、どの単語の頭文字か。
1.Elite 2.Eliminator 3.Expert 4.Egoist

ご覧の通り、即答問題からやや悩む問題まで、まんべんなく出題された「ゴジラ検定」だが、先日結果が届いた。

初級97点、中級92点。無事、両方とも合格した。免許や資格、級位、段位は、それを有するに価する者に与えられるもので、その人の資質の代理表明するタグとなる。その意味で、「ゴジラ検定」中級保持者を名乗るに相応しいとの認定を受けたわけだが、引っかかる部分が少しある。

ゴジラ愛は数値化されたのか?

最近行きつけの特撮カフェ&バー ぷらんたん@pondiSFX)で出会ったセリザワさん(初代『ゴジラ』(本多猪四郎、東宝、1954)の芹沢大助(演 : 平田昭彦)からとった通称)は、「ゴジラ検定」は受けなかったそう。理由は「知識の量よりも愛が大事だから」。

作家の中沢健さんは検定直後に行われたトークイベントで、勉強は一切せずに中級のみを受けたと語った。理由は「わざわざ勉強するものでもないから」。

確かに、それなりに悪くない点数をとった。誉れ高い級位も頂いた。正直嬉しかったが、でも、それでなにが計れたのだろうか。「ゴジラ」への愛はそれで表せるのだろうか。

俺の「ゴジラ」愛は数字でいうと92、97なのか。満点の人もいるという。では、その人の「ゴジラ」愛に、俺の「ゴジラ」愛は劣っているのだろうか。

その数値は誰かと比べられるものだったのか。果たしてその数値にどれだけの意味があるのか。

さて唐突だが、『キン肉マン』(ゆでたまご、集英社、1979~)の超人強度は発明だ。誰がどれほど強大なのか、誰が誰よりすごいのか。一目でわかる仕組みを世に広めた点で、画期的かつ圧倒的だと思う。フリーザに「わたしの戦闘力は530000です」と言わせたのはゆでたまご、と言ってもさしつかえは(たぶん)ない。

「数がでかい=優」。あらゆる作品の中にとどまらず、どの生活の場面でもその考えはよぎる。

身近で覚えのある数値は偏差値や年収かフォロワー数。数値を絶対の客観性の権化として揺るがないものと信じて、それらの数を前に人は揺らいでいく。あおられる。時におののく。ではその数値は、たとえば、その人の価値をそのままに表すのか。その数値は人の優劣を意味するのか。

言うも野暮だが、そんなわけない。

それでものごと決まるほど、人間、世の中単純にできちゃいない。

売れているものが良いものなら、世界一のラーメンはカップラーメンだよ

ありがとう、ヒロト。そういうものだと信じたい。

お笑いコンビ・ニューヨーク(嶋佐和也、屋敷裕政、よしもとクリエイティブ・エージェンシー、2010~)の漫才


屋敷:2万円稼ぐのって大変やで
嶋佐:そうですね
屋敷:コンビニのアルバイトやったら、20時間働かなあかんねんで
嶋佐:キャバクラ嬢だったら2.3時間も働かないと…
屋敷:ブレるやろ

付け加えて、数値は絶対ではなく、場面ごとにブレる。数字に表れるものは判断材料のone of themにすぎない。はき違えちゃいけない。

先に挙げた「超人強度」だが、その数の優劣が絶対というわけではない。超人強度に劣るはずの95万パワーのキン肉マンは1500万パワーの悪魔超人の御大将を倒し、90万パワーのブロッケンJrは3000万パワーの完璧超人を下し大輪の花を咲かせ、96万パワーのロビンマスクは超人の神を宿した1億パワーの王子候補者を破った。後出しのズルさと「ゆでだから」を承知しつつも、その数が必ずしも優劣をあらわすものではないと、より強く思えてくる。

「奥」、そのプロセスにこそ意義がある


別に、ここで傍目素人目の「数字ごとき」と猿文句は吐き捨てるつもりはない。「数値や情報に現れない人間味が〜」だなんて「素朴」の側に立つ意気はない。かたくて冷たいようにおもえる数字の向こう側に人がいることを、『数学する身体』(森田真生、新潮社、[2015]2018)が最近教えてくれた。

その結果として現れる数値自体それだけがどうとかではない。

要は、そこに至るまでのそれぞれの過程にこそ意義があるんだと思う。

建築家・槇文彦(1928〜)の「奥の思想」に通づるもので、辿り着いた果てに価値があるのではなく、そこへと至るプロセスにこそ意味があった。

「ゴジラ検定」を受けて本当に楽しく思えたのは、結果が出たときではなく、試験前日にぷらんたんでトムさんらと一緒に夜通しやった勉強会だった。

そして、会場に着いた時、その熱気が嬉しくてたまらなかった。いつかはじめて竹原ピストルさんのライブに初めていったときもそうだった。「自分だけの竹原ピストルとのプロセスを持った人」がまさにここにいることに、その人々が交歓している瞬間をみて、たまらなく嬉しくて泣きそうになった。

同様、「ゴジラ検定」を受けに来た人たちそれぞれに、それぞれの「ゴジラ」とのかけがえのない人生がある。集まったそんな人たちをみて、交流を通して、また、自分なりの「ゴジラ」愛に気づく。

「ゴジラ検定」はそれを改めて振り返る、ほかとないきっかけだった。

辿り着いた結果としての点数は、もはや重要なものではない。

何より大切だったのは、「ゴジラ検定」へ至るまでの自分の「ゴジラ」との人生=プロセスそのものを改めて愛おしく思うことだった。

人という点には、あらゆる線と面が折り重なっている

さて、特撮、「ゴジラ検定」の話と言いながら、関係のない話題がたくさん出てきた。こうも話があっちゃこっちゃ波及するのは、俺個人という点の中に、ありとあらゆる線と面が折り重なって見境なく絡まり合っているからだ。友人や家族などの親しい仲の人から本、作品、文化、服、時代、社会...自分の人生に関わってきた万象が一緒のところにしまわれている。

パッツパツに詰まったポケットから何かを取り出そうとしたとき、一緒に転がり出てしまったような。そんなもの。それと同じ。

書き出しのテーマは、単なる入口でしかなく、貫徹それについて書くわけではない、と開き直る。

本当はもっと受験料高いについての愚痴とか、連日徹夜して4倍速字幕でイッき見した話とかをゆるゆる書く予定だった。

書いていくなかで、思いがけず一緒くたになって転がり出てきた忘れていたような諸々。ついついそれらを拾い集めているうち、最初に思い描いていたストーリーラインは跡形もなく消え去り、気づけば思いがけない結論に辿り着いていた。妙なトリップ感。

お題云々決めても、結局自分について書いている。自分という存在の「奥性」、『ルート トゥ ルーツ』。次の文章はどこへ至るんだろうか。

『シェルラ』

あと、最後にすこし、クリエイターズ・オーディション・プロジェクト「GEMSTONE(ジェムストーン)(第一回テーマ「ゴジラ」)」にて、高校時代の友人の映画監督・田中大貴の応募作品『シェルラ』が一次審査を通過した。むちゃくちゃ続きが見たい。

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