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身体の動きの稽古法、心の動きの稽古法

 youtubeで面白い動画がありました。

 甲野善紀先生とシステマ東京の北川貴英さんと古武術介護の岡田慎一郎さんのコラボ動画でした。
 この動画でお三方がお話されている内容で心に残った話があったのでそれについて書いてみます。

〇筋肉の緊張とリラックスについて

 甲野先生が筋肉の緊張と脱力を細やかに変化できないと速やかに巧妙な動きができない、という指摘をしていました。
 それを受けて北川さんも、多くの人は緊張かリラックスのオンオフ(0か1か)で考えがちだが、緊張とリラックスの間は実は非常に豊かさがあると話されました。そして緊張とリラックスの間が16段階あるのか、256段階あるのかで動きの巧みさが変わる、と続けられました。

 緊張とリラックスをオンオフで考えてしまうのは私が身体を動かすときも確かに陥りがちな考えだな、と思いました。重い原木や荷物を持つとき、なるべく腕だけでなく背中とか腰も使って動かそうと思っていますが、その時の「背中」とか「腰」の感覚が非常に大雑把で、その大雑把な「背中」とかに力を入れる、北川さんの言葉を借りるとオンにする、くらいの力の入れ方をしているな、と思いました。
 甲野先生がおっしゃっているのは、この「背中」という大雑把な感覚をもっと細かく分けて、さらにそれらを微妙に緊張と脱力を切り替えながら動くことが大事だ、という話だと理解しました。「理解しました」と言っても頭で理解しているだけで、実際に動きとしてそれを反映させるのはどうしたらいいのか、というのはまだまるで分からないのですが……。

 それとは別に、「オンオフで考える」というのは何も筋肉に限った話では無いな、と思いました。
 私は物事の是非を考える時に「是」と「否」の二択で考えがちです。0か1か、という思考です。

 私がやってしまいがちなことで言えば、ある分野において私から見て間違った意見を言っている人がいたら、その人の全てを駄目だと評価してしまうような態度です。
 実際には、その人の別の分野の意見は私と同じ意見かもしれないし、私にはない新しい意見で参考になるかもしれないのに、ある分野において私と違う意見だからと言って全てを否定してしまうのは、北川さんの言う「オンオフ」思考に当たると思いました。


〇必然性のある動きのトレーニング

 甲野先生は筋トレに否定的ですが、その理由は「筋トレは筋肉に負荷をかけることに必然性を感じられないから」だとおっしゃいます。
 この動画の例えで言うと、筋トレでダンベルを使ったトレーニングなどは、辞めようと思えばすぐに辞めてしまえます。しかし木に登るという動作を行っている時、木にかけている手の力を抜いてしまうと落ちて大怪我を負ってしまうので、木から手を離すわけにはいきません。「木をつかむ」という身体に負荷がかかっている状態に必然性があるのです。

 もう一つ、甲野先生が筋トレに対して否定的な理由は、心理的な状態と動きがうまくかみ合わないからだ、ともおっしゃいます。
 仕事で行う動きはなるべく疲れないように動きます。仕事は長い時間、毎日動くので、なるべく疲れないように動く必然性があるのです。
 しかし、筋トレは筋肉を肥大させることが目的なので、筋肉を早く疲労させたい、という心理が働きがちです。「早く疲労させたい」という意識で鍛えた筋肉を「疲れないように動かしたい」という仕事で使うのは、心理的な状態と動きが噛み合っていないため、上手く機能しないと言うことだと思います。
 そのため、筋肉の肥大という観点では筋トレのほうが優れていますが、良い動き(効率的な動き、疲れない動き)を養うという意味では、仕事で身体を動かすことで身体を鍛えた方が良いと言えるとのことです。

 これは私も納得できる話でした。林業で木を伐倒する作業などは非常に疲れる動きですが、なるべく疲れないように工夫します。
 甲野先生たちのように身体の使い方という点ではまだ拙いですが、例えばチェーンソーを使う時は腕だけで持たず、太ももや腰にチェーンソーをつけて重さを分散させるとか、草刈り機を持ち運ぶときは肩にしょって重さを身体の中心に近づけることで疲れなくするとか、自然と疲れないように工夫するようにします。
 私は筋トレを今はすることは無いですが、大学生の部活でやっていた時はたしかに「筋トレやった感」のためにも疲れるように動いていたように思います。仕事や競技で身体を動かす時は「疲れないように」動こうとするのに、筋トレで「疲れるように」身体を使っていたら、動きの向上にはつながらないな、と思いました。


 動画を見て面白いと思ったことを言語化しようと試みたのですが、実は今回はうまくできませんでした。
 この動画を見て一番面白いと思ったのは、終始身体の動きについて語っているのに、私には心の動きについて語っているように聞こえたことです。
 「筋肉の緊張とリラックス」のところで緊張とリラックスのオンオフ思考が、私の白か黒かの思考につながっている、というところは少し言語化できた気がしますが、「必然性のあるトレーニング」のところでも心の向上に関係する要素があると、動画を見たときは感じたのですが、それをここで上手く言語化することができませんでした。

 甲野先生の講習会に行くたびに思うのですが、甲野先生の技の解説は、終始身体の動きや稽古についてのお話なのに私には心の動きの話、心の鍛え方の話に聞こえるのです。「この話は、心を鍛える時にも応用できる話なのでは?」と毎回思うのですが、いざそれを実際に私が心の稽古としてやろうとするとどうやったらいいか分からない、というのがいつものパターンです。
 この動画についても同じパターンになってしまいました。心の稽古法について、とても多くのヒントが示されているように思うのですが、それをうまく咀嚼して自分なりの方法を見つけることができませんでした。難しい。

 書きながら「もうちょっとうまく言語化したいなぁ」と思っていましたが、最後まで「うまく言語化したいなぁ」で終わってしまいました。
 まあ「上手く言語化したいなぁ」という心が言語化できたので良しとします。


 本日は以上です。スキやコメントいただけると嬉しいです。
 最後まで読んでくださりありがとうございました!