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#9 カフカ短編『中年のひとり者ブルームフェルト』

いつまでカフカ短編記事を書き続けようかなー、と思いつつも、今日また色々借りて来てしまった!!

訳者はすべて池内紀氏


1. ブルームフェルトとカフカ

今回は『中年のひとりものブルームフェルト』という…、なんとなーくさびしげな響き…。

白水Uブックスの方の解説には、この作品の主人公でもあるブルームフェルトという名前について言及されていた。どうやらカフカの伝記的な事実に即しているようだ。
カフカは1914年、フェリーツェ・バウアーというベルリンの女性と婚約したが、翌7月、解消したとのこと。カフカの方から、ほとんど一方的に。

主人公の名前ブルームフェルトはブルーメ(「花」)とフェルト(「野・畑」)を組合させたもの。フェリーツェの姓バウアーには「農夫」の意味がある。

『万里の長城』の読者のためにより

この作品の後、カフカとフェリーツェは再び婚約をし、また解消…。
カフカはブルームフェルトのように「中年のひとり者」となったようだ。

カフカの小説がつねにそうであるように、作品が予告性をもち、現実があとから追いかけた。

『万里の長城』の読者のためにより

2. ストーリー

この話もまた…、今一つ掴めなかった。
このストーリーは前半と後半に別れる気がしている。
が、前半の話が終わった?のかが分からないまま後半に突入していた。前半が終わっていないと思って読んでいたので、前半エピソードが再度出て来るかと思ったが全く出て来なかったので、あれはあれで終わっていたのか…。または終わらなくてもいいのか、カフカの場合は…。

勝手に前半後半と分けてしまったが、前半について。
ブルームフェルトはタイトルの通り独身。掃除女はいるにせよ、家族のいない独り身の生活は気楽だ。しかしこの先を考えるとやりきれない部分もある。ペットを飼うにしても潔癖の気のある彼は無理な話。

そばにいてくれるものがほしいのだ。生きものであって、さほど手がかからず、ときおり足蹴りにしてもかまわないし、締め出しをくらわしても文句を言わない。自分が望むとき、いそいそととびついてきてくれる生きものである。そういった生きものがほしいのだ。

本文より

まー気持ちは分かる気もするけれど、金で人を買うか、ペットにしてどこか妥協するしかないよね。
そんなことを思案しているときに、どこからかボールが二つポンポンと跳ねながら彼の元へやってくる。
なるほど、ボールなら排泄しないし汚れることはなさそうだ。餌の心配もいらないだろうし。物を壊さないかは心配だが教育すれば…。
しかし、彼にはボールを手懐けることができず、ボールは好き勝手にポンポン跳ねる。結局お気に召さなかったようで、ボールを掃除婦の息子にあげてしまおうと考える。

このように、前半は、ある晩突然やってきた二つのボールの話だった。
後半は、ブルームフェルトの仕事の話となる。

彼が務めるのは下着の製造工場。
勤続年数だけは長いようで二人の助手がついている。しかし、この助手を上手に監督することができない。彼らは全く仕事をしてくれない。というか、ブルームフェルトをなめているように見える。
彼が叱咤しても助手は何も感じない。それどころか殴れるものなら殴ってみろ的な剣幕だ。

ブルームフェルトが決して殴らないことを知っているのだ。全身でびくついている。実際の権利ならびに見せかけの権利を守るため、ただもうひたすら頑張っているだけなのである。

本文より

うーん、どうやらブルームフェルトは気が弱くてビビり屋みたい。
部下になめられちゃう上司かぁ…。
上司とか部下って感覚はちょっと忘れかけているけれど、こういう感じの上司は現実にもいるんだろうなぁ…。

3. つがい現象?

書き出してみるとよく分かるけれど、前半は手懐けられない二つのボール。後半は、管理できない二人の助手が出て来る。
「つがい現象」らしい。そういえば、長編『城』を読んだことあるが、ここにも、ある二人のペアが出てきた。
つがい…、これがカフカ作品に何を意味するのかな…。よく分からないけれど。
とにかく、「つがい」が出てきた場合、たいてい主人公とは仲良くやっていけないということが言えそうだ。


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