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#6 カフカ短編『田舎医者』

なんだったんだこの話は……。
引き続き、カフカの短編集を読んでいる。
例によって(?)、よく分からなかった。

今回は『田舎医者』について綴っていく。
いつにも増して不自然で、夢の中の出来事としか言いようがない。
きっと、ここには作者の何らかの思いが込められているだろうけれど…。

 ストーリーは簡単。
 吹雪の夜、急患が医者を待っている。田舎医者はすぐさま駆け付けたいのだが、馬がいない。冬の酷使で死んでしまったのだ。
 困り果てているところにある馬丁が現れる。馬を貸してくれるというが、馬丁は医者の女中に目をつけたようだった。馬丁は突然女中をつかまえ、激しく顔をこすりつけたりする。女中が手ごめにされる危険を感た医者は、馬丁と共に急患のもとへ駆け付けようとするも突然馬は走り出し、あっという間に急患の元へ到着。
 患者は少年であり、見たところ元気そうである。少年は突然医者の首に抱きつき「先生、ぼくを死なせてください」とささやく。
 女中のローザが心配だ。さっさと往診を済ませて帰りたいところ。しかし、少年のお腹の傷に気づく。右の脇腹にバラ色の傷がぱっくりと口をあけ、子細にみるとウジ虫が群がっているのだ。これは手の施しようがないと医者は気づく。今度は少年は「ぼくを助けてくれますね」とささやく。
 そこで少年の家族たちが突然医者を裸にする。さらに小学生の合唱隊が並び歌を歌い出す。どうやら、医者を裸にすれば少年を治してくれるだろうと思ったようだ。
 裸にされた医者は少年のベッドの中に運び込まれ傷口にピタリと押し当てられる。すると少年は「ぼく、先生を信用していない」と言い出す。医者は少年をどうにかなだめ、家に帰るための準備を始める。馬に飛び乗り帰ろうとするが馬は進まない。するとまた、子どもたちの歌が聞こえてきた。
 結局家に帰れない。きっと女中は馬丁に手ごめにされてしまっただろう。
 最後に医者は、してやられた!してやられた!もう取り返しがつかないのだ、と嘆いて終わる。

スコーンとラテとカフカ

これまで、簡単にストーリーを要約したら何らかの気づきがあったので、今回もと思ったけれど、、、意味不明だった。

  • 急患の家は遠いはずなのに、一瞬で到着してしまう。

  • 少年の言動が次々と変わる。

  • 突然医者が裸にされる。

  • 子どもたちが合唱をはじめる。

  • 行きの馬は一瞬で到着したが帰りの馬は一向に進まない。

等々。
少し思ったのが、女中が馬丁に手ごめにされるのと、医者が患者の家族らに裸にされる行為になんらかの繋がりがあるのかもという点。

解説を読んでみたけれど、特に『田舎医者』について言及はされていなかった。だが、カフカ作品についてこのように述べられていた。

ある人にとって彼の作品は神の恩寵をものがたったものであり、別の人にとってはユダヤ教の思想と切っても切れない関係がある。精神分析学の素材を見つけた人もいれば、カフカが生きた時代とプラハの町を知らなければ作品のすべてがわからないと主張する人もいる。

訳者池内紀解説より(岩波文庫)

このように、多くの人たちがカフカ作品を読み研究している。
ということで、結局は、読者によってその姿を変えるとしか言いようがない。

カフカはいぜんとして、見る位置によって形の変わる不思議なだまし絵とそっくりである。

訳者池内紀解説より(岩波文庫)

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