ラスト3行に衝撃の納得!
予想を超えるドンデン返し!とか圧倒的な衝撃のラスト!という小説の煽り文句っていっぱいあるよね。僕はミステリやサスペンス小説が好きなので、ついこの煽り文句に騙されて買ってしまう。
確かに乾くるみ「イニシエーション・ラブ」の「最後から2行目で全く違った物語に変貌する」とか道尾秀介はいっぱいあるけど「いけない2」の「その写真を見たとき、物語は一変する」なんかは、確かに!って思えて面白かった。反対に、煽り文句がすごかった割に読んだあと「それほどか?」というものも多いよね。というか、そっちが大多数。
本当は煽り文句の帯なんかを見ないで読んだら、「え? そうなんだ!」と驚けることは多いと思うんだけど、前情報あるとなんか構えちゃうから逆にハードルを上げているような気がする。
映画でも僕は似たようなことを経験したことがある。「フロム・ダスク・ティル・ドーン」という1996年公開の映画。脚本クエンティン・タランティーノ✖️監督ロバート・ロドリゲスのタッグが当時話題になった。ちょうどタランティーノが1994年に「パルプ・フィクション」でカンヌのパルムドールを受賞し、ロドリゲスは1995年「デスペラード」でアントニオ・バンデラスを一躍有名にさせたばかり。その直後の二人が組んだ有名なアクションホラーなのだった。当時、TSUTAYAでレンタルしてみたのだが、「タランティーノとロドリゲスのタッグ」くらいは知っていたけど、それ以上の前情報なしで観たので、開始30分でめちゃくちゃ衝撃を受けた。そういう話だったのかと。まあ、内容が全然ないお話なのでアクション以外は特に面白くはないのだけど、前情報なしだったから少なくとも冒頭30分の展開だけは結構楽しめた。
とはいえ、僕も映画やドラマを作っている身なので、やっぱり煽りコピーはどうしても必要なんだよなぁと苦渋する。誇大広告になると流石にNGではあるのだけど、それに近いくらいの煽りがないと一般的に認知すらされない。今、配信サイトもたくさんあるので、年間に作られている映像作品の量がとんでもないことになっている。制作側も大変ではあるのだけど、宣伝側も大変だ。とにかく映像の数が多いので相当なフックがないと情報が届く前に埋没していってしまう。埋没しないようにいくつものSNSやバナーなどのWEB施策を日々大量投入していかなければならず、作業量というか工数自体も増えていく。その上、大量な作品群が同時に似た施策を行なっているので、もはやどうやって差別化すればいいかわからないと頭を悩ませる。「全米が泣いた!」じゃ見向きもされない。で、結局、どうやってバズらせるか? みたいな話に帰結して、内容を正確に伝えるよりも、より面白いと思ってもらうための煽り文句、謳い文句が加熱する。
本当に、これからますます、どうやってみんなの興味を惹けばいいんだろう? って考えちゃうよね。
そんなことを思いながら西新宿の駅を降りて歩いていると「味噌ラーメン 百庵」の看板に目が止まった。あんまりマジマジと見てはいなかった看板にはやけに謙遜した内容が書いてあるのだった。普通はやっぱり凄さを煽るのが主流だと思うのだけど、逆に謙遜してみるというのも一手なんだなと思った。自慢するより謙遜することで、なんとなく店側がいい人に見えるというか、ウィットに富んだ人たちが経営しているようにも感じられる。こういうのもアリだなぁ。で、せっかくだから久しぶりに食べていこうという気にもなった。あれ? 宣伝効果バツグン?
特製白味噌ラーメン+生卵 味噌ラーメン 百庵@西新宿
券売機で特製白味噌をポチる。
種類は、白味噌と赤味噌があるのだけど、毎度白味噌にしてしまう。赤味噌って名古屋なイメージなんだよなぁ。なんとなく白の方が僕にはしっくりくる気がして、いまだに赤を食べたことがない。次は、赤食べてみようと思いつつ、3ヶ月とか半年とか経ってから来店しているので、それを忘れて毎度白味噌を押してしまっている。さらに白も赤も辛味噌バージョンもあるのだが、これまた食べたことがない。辛いものは結構好きなので、辛味噌を食べたいときってあるはずなんだけど、どうもいつもスタンダードな白味噌を特製で頼むというのを繰り返してしまっている。
あとは生卵のボタンをポチる。なんだか知らないけど、「生卵つけましょう」とやけにこれだけは煽ってくる。券売機にはなんと生卵のボタンが3つもある。生卵1つ、2つ、3つのパターンだ。3つ食べるヤツなんているのかな? この生卵はすき焼き風に麺をつけて食べるためのもの。味噌ラーメンを生卵にディップ! まあ、確かに旨そうではあるよね。
特製白味噌と生卵1つをカウンター越しに店員さんに渡す。
「百庵」は水の代わりにルイボスティーが置いてある。コッテリしているものとルイボスティーは相性いい。一風堂もルイボスティーだったな。
中太麺だから10分くらい待って麺が着丼した。
なかなかいい感じのビジュアルなのだ。
「百庵」の特徴は麺の上に生姜焼きっぽい豚バラ玉ねぎ炒めが載っているところ。ノーマルだとチャーシューはなく、この豚バラ炒めだけになる。特製にするとチャーシュー2枚と味玉が追加される。
ディップ用の生卵もあるから、卵がちょっと過剰な気はするけど…。
2枚のチャーシューは炙ってある感じがとても良い。
スープは脂多め。背脂も入っていて、背脂醤油豚骨ならぬ、背脂味噌豚骨というのが相応しいか。脂は多いのだけど、かといって純すみ系というわけでもない。味はしょっぱめでなかなかに旨い。麺も中太麺でワシワシ食べる感じ。西山製麺みたいなツルツル感はないが、麺を食べているのだ!という気にさせてくれる。味噌のしょっぱさとは相性いい感じ。全体的にボリューミーなので、いっぱい食べたい人にはうってつけないい店だと思う。
せっかくだから、そろそろ生卵に麺をディップして食べる。
生卵が絡んで、ちょっとツルツル麺になる感じで悪くないか? …いや、スープはちゃんとしょっぱいのだけど、生卵につけるほど味濃くないのだと気づく。
いや、これ前回も思ったよな、と思い出す。もしかしたら赤味噌や辛味噌にしたら生卵ディップは良いのかもしれないって思ったじゃん。これならご飯頼んでTKGにした方が良さそうだって。なので、前回同様に生卵は丼へ投入することにする。僕が好きな「くるまやラーメン」的な感じ。
ふと、色々と思い出してきた。
豚バラ炒めは玉ねぎとの相性が良く、なかなか旨い。この豚バラ炒めを定食にしても旨そうだ。豚バラ炒めとご飯と生卵、さらに味噌汁の代わりにもやしが入った味噌ラーメンスープの定食とかあったら、それも売れるんじゃないかって思うくらい。
ただ、チャーシューは余計なのだった。炙りもいい感じで、味はまあまあ良いんだけど、豚バラ炒めも結構なボリュームがあるため、さらなるこのチャーシューは僕には多いのだ。昔と違って、僕があんまり量を食べられなくなってきただけなのだけど、ちょっと重く感じてしまう。スープの豚脂の濃さもあるので、チャーシューの脂がちょっと豚臭く感じはじめてしまう。僕にとってこれ以上の肉と脂は自殺行為だと脳がブレーキをかける。それも、前回学習済みのハズだった。最後、ちょっと胸焼けして、次は特製やめようと思ったのだから。ちなみに、「百庵」には女性一人のお客さんもそこそこいて、普通に特製をぺろりと食べてるから、僕の方がマイノリティなのかもしれない。
結構、旨いラーメンなんだけど、なんでか色々忘れちゃうんだなぁ。年齢か? もしかして認知症がはじまりだしているのだろうか? 豚バラ炒めとかもいい感じなのに、その特徴すら券売機前に立ってから、ああ、そういえばって思い出す感じだった。
ルイボスティーで口の脂を流して店を出る。美味しいんだけど、なんだか僕の記憶には残りにくいラーメンなんだなぁと改めて店を振り返る。
店前の看板は、だから最初から言ってるでしょと言いたげに威風堂々と僕にコピーを提示していた。
「そこそこウマい味噌ラーメン」
たしかに! これって、謙遜じゃなかったんだと妙に腑に落ちた。
で、一方、この記事のタイトルは誇大な煽りを使ってみたのだった。
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