展覧会レビュー:東京国立博物館創立150年記念 特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」@東京国立博物館
東京国立博物館が所有する「国宝」を全部見れちゃう貴重な展覧会。
博物館の展覧会で、チケット争奪戦、即完売なんて聞いたことがない。
展示のジャンルが多岐にわたりすぎているため、主催者側からのこれといったメッセージはないが、ただただ「眼福を得る」展覧会だった。
日本には国宝が902あり、その中で東京国立博物館は約1割に当たる89も保有している。それが全て公開されるという伝家の宝刀のような展覧会。
作品リストを見るとほとんどの作品の「指定」欄に丸が付いている異常な状態。出てくるポケモン全部レベル99のような世界。それは行くしかない。
国宝の幅は広く、有形であれば何でもありなので、色々見られて楽しい。
子供と来ても楽しいと思うが、コロナの影響なのか「館内ではお静かに」という看板を持って練り歩く監視員がいるほど注意を払っていた。
本来、博物館では、厳かに怖い顔をして見回るというより、楽しく、時には同伴者と話しながら知的好奇心を高める場所だと思う。残念だ。
ジャンルが多岐に亘りすぎていて、個別の感想はとても書けないが、個人的に印象に残った作品を認める(写真がないのが残念)。
1)延喜式
平安時代の行政マニュアル集。とてもきれいな状態で残っている。当然、当時はコピー機も共有フォルダもないため、一生懸命毛筆で間違いなく書き記しても、それをみんなで読み回すしかない。辛い時代だ。
2)刀剣一般
刀剣を鑑賞したのがほぼ初めてだった。照明を工夫し、キラ!と非常に美しく展示されているのは圧倒された。しかし、どれも刀剣である以外、それぞれの違いを全く見出すことができない。世の中には無数にある刀の中でもどういう基準で国宝に指定しているのか?疑問に思った。
また、刀剣をニヤニヤ眺めている人たちを見ると、日本の漫画・アニメ・ゲームには必ず刀剣を持ったキャラクターがいるように、日本人は根底から刀剣が好きなんだな、と感じた。
写真撮影が最後の2作品以外は禁止。確かに撮影可能にしていたら人が全く進まないだろう、と思うくらい人が多かった。
この人気は「刀剣乱舞」というスマホゲームとコラボしたグッズがある影響かな?と思っていたが、お客さんの年齢層は全体的に高め。
チケット販売はネットのみで即完売するという、博物館のイベントとしては異例。そんな中で妙齢の方々がチケットをgetしたのは想像できない。
私は、売り切れなんて状況は想定してなかったため、キャンセル待ちを狙って、完売したサイトを定期的にチェックした結果、奇跡的にgetできた。
本来は、外国人観光客にもゆっくり鑑賞してほしい展覧会なのに残念だ。
人数制限はしているものの、それでも人は多すぎの印象。ゆっくり一つ一つ鑑賞することは不可能。やるにしてもとんでもない時間がかかる。
博物館に行列を作って、人混みを押し退けて鑑賞する様子を冷静に見ると、日本人はなんと教養が高い国民なんだろう、と改めて感じた。ただの珍しいもの好き、野次馬根性、とも言えるが。その教養を他に生かせないものか。
最後に蛇足だが、「国宝」「重要文化財」について調べた。それらは、文化庁内の文化審議会が選定し、文部科学大臣の承認を経て、追加される。
また、有形文化財の中で特に重要なものとして国が指定したものを重要文化財とし、重要文化財の中でも特に文化史的・学術的価値の高く国が指定したものを国宝と定義されている。有形文化財<重要文化財<国宝
国宝、重要文化財の追加の例
資料を見ただけでも、ものすごい労力をかけて作られたことが窺える。世の中にはいろんな職業があるが、なんとも特殊な職業だ。
やりがいを感じるのは、所蔵者に「国宝にしてくれ」と依頼があり、それが無事国宝になったときだろうか…。国の文化を守る重要な仕事だと思うが、私はやりたいと全く思わない仕事である。
また、ほぼ時を同じくして、東京国立近代美術館で、来年3月から「70周年記念展 重要文化財の秘密」が実施される。
全部が重要文化財+当時は問題作とし、「ただ重要文化財を全部置きました」ではなく、ストーリーを持たせているのが、東京国立博物館とは違う点。東京国立近代美術館のキュレーターの腕の見せ所だろう。
展覧会名:東京国立博物館創立150年記念 特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」
場所:東京国立博物館
満足度:★★★☆☆
会期:2022年10月18日(火)~12月11日(日)
アクセス:上野駅から徒歩約5分
入場料(一般):2000円
事前予約:必須
展覧所要時間:約1〜1.5時間(常設含めれば無限)
展覧撮影:最後の2作品のみ
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