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出直し金読本

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「はじめての金読本」のコンテンツを見直し、金(ゴールド)の基本や付き合い方をおさらいします。専門的な用語は使いません。マーケットの動きについても必要な場合を除いて触れません。そも…
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#金読本

出直し金読本015 金と密輸と消費税

出直し金読本015 金と密輸と消費税

 金現物の密輸がふたたび旺盛になっているようです。業界内の一部から、日本の金現物市場が深刻なダメージを受けつつある、という嘆きが聞こえ始めています。そこで今回は、少し長い寄り道になりますが、この問題を取り上げてみたいと思います。 一般にはあまり知られていないかも知れませんが、金は世界の中央銀行が外貨準備として現物保有しています。これはつまり、国際金融の世界で金は通貨として認識されているということを

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出直し金読本014 時間の分散

出直し金読本014 時間の分散

 基本に戻ります。いまさら云うまでもありませんが、金価格は日々変動しています。円建て金価格は、ドル建て金価格の変動だけでなく、ドル円為替相場の変動によっても動きます。ときに急騰する場合も急落する場合もあります。そんな大きな価格変動に遭遇しても、冷静にいられれば構いませんが、なかなか達観できるものでもないようです。 上昇する様子をみて、いま買わなくちゃと焦って大枚を叩いたりすると、結果的に読みが勝っ

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出直し金読本012 金保有の目安

出直し金読本012 金保有の目安

 金はどれくらい持つのが妥当でしょうか、と聞かれることがあります。その問いについては、財産の1割、せいぜい2割と答えることにしています。とはいえ、必ずしもその割合に明快な根拠があるわけではありません。あえて根拠らしきものを求めるとすれば、世界の中央銀行の外貨準備に占める金準備の割合が平均すると1割程度になる、というあたりでしょうか。 さらにもう一つ理由を探すとすれば、金は「万一のために備える保険」

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出直し金読本010 10年は保有

出直し金読本010 10年は保有

 短期の利益を追うのか、資産の保全を考えるのか。どちらを求めるかによって、金との付き合い方には大きな違いが生まれてきます。
 あくまでも短期の利益を追いたいというのであれば、わざわざ金地金や金貨といった現物を売り買いするのはヤボというもので、金先物=将来の金価格を売り買いすればよいことです。それなら投資資金の何倍もの取引ができますから、予測が当たれば儲けはドンと大きくなります。ただし予想が外れれば

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出直し金読本009 万一の備え

出直し金読本009 万一の備え

 金は利息を生むことがありません。配当という果実をもたらしてくれることもありません。そのため現在のようにドルの金利がゆるやかに上昇する局面においては、ドル建て金価格は、どうしても軟調になります。金の最大のデメリットは、「金利に弱い」という点です。 したがって、もしも世の中が平和で政治や経済も安定していたとしたら、金はたちどころに出番を失い、大きく売り込まれても不思議ではありません。ところが、大方が

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出直し金読本008 国際価格と国内価格

出直し金読本008 国際価格と国内価格

 金は、太陽の動きを追いかけるかのように、世界のどこかの市場で取引が行われています。シドニー、東京、香港、チューリッヒ、ロンドン、ニューヨークという具合に、時差を追って取引は受け継がれていきます。インターネット上の取引が主流になった現在では、「NYグローベックス」という電子取引システムがほぼ24時間稼働しており、金価格は、休日を除いて、ほとんど眠ることなく動いています。 ところで、一般に金価格と云

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出直し金読本007 老後の資産

出直し金読本007 老後の資産

 人生100年時代という言葉を耳にするようになりました。キッカケとなったのは「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)〜100年時代の人生戦略〜」(リンダ・グラットン&アンドリュー・スコット共著)の出版にあるわけですが、なんとなく唐突感が拭えないところがあります。政府主導で声高にアナウンスされているところに違和感を覚えている人も少なくないはずです。ほんとうに人生100年時代は到来するのだろうか、と。

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出直し金読本006 金に利息はつかない

出直し金読本006 金に利息はつかない

 世の中には利子とか利息と呼ばれるものがあります。利子あるいは利息は、元金が産み出す子供のようなもので、こういうものが存在しているということは、「未来は現在よりも価値がある」あるいは「未来は現在よりも進化あるいは発展している」と、人類が考えてきた証しと云っても良さそうです。 云い方を変えます。「時には富をもたらすチカラがある」という信仰があるからこそ、利子や利息が生まれたはずです。もしも「時には富

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出直し金読本005 価値の源泉は希少性

出直し金読本005 価値の源泉は希少性

 人類がゴールド(金)と出会い、そこにまず太陽の輝きを見出し、あるいは魔除けのようなものとして、あるいは身を美しく飾り立てる装飾品として利用するようになって、すでに7000年以上の時が流れています。シルバー(銀)も同様で、両者とも、まずは身につけるものとして価値を見出され、やがて通貨としての価値が認められ、長く用いられて来ました。 これほど長く人類に愛されてきた貴金属ですから、これまでに採掘されて

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出直し金読本004 国籍をもたない通貨

出直し金読本004 国籍をもたない通貨

 日本に住む私たちが普段使っているお金は、云うまでもなく日本円です。ここがアメリカなら米ドル、ユーロ圏ならユーロ、ロシアならルーブル、中国なら人民元が日常的に使われています。その歴史はまだ浅いとはいうものの、それぞれ中央銀行なるものが介在し、国あるいは地域という枠内で統一通貨が発行され、市民がそれを受け入れることで市中流通しているわけです。 では、私たちが普段使っている言葉はどうかと云えば。お金の

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出直し金読本003 歴史の重み

出直し金読本003 歴史の重み

 貨幣史をひもとくと、人類が最初にお金として用いたものは、牛であったり子安貝(宝貝)であったりしたらしいことが分かります。塩とか麦などもお金として用いられたはずです。これらの「原始マネー」は、もちろん地域や共同体によって異なるものの、おそらくは「希少なもの」「貴重なもの」、そして「豊穣を約束するもの」という点で共通していたのではないかと思われます。 紀元前5000年紀から装飾品として用いられてきた

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出直し金読本002 金は太陽だった

出直し金読本002 金は太陽だった

 考古学の発掘調査によれば、これまでに発掘された世界最古の金装飾品は、通説となっている古代エジプト文明よりも遥か昔、紀元前5000年紀に黒海東岸(現在のブルガリア共和国)辺りで栄えたとされる古代トラキア文明の「ヴァルナ集団墓地遺跡」から出土したものです。そのヴァルナ近郊からは塩の生産設備も発掘されていることから、古代トラキアの金装飾品は、塩の交易で得た富によってもたらされたものだったのかも知れませ

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出直し金読本001 はじめに

出直し金読本001 はじめに

 日本に住む私たちが買い物をして、お勘定をする(決済する)手段は、いま大きな変化を遂げつつあります。ほんの10数年前まで、現金かクレジット・カードを使うのが一般的でしたが、今ではスイカに代表されるICカードも決済手段の一つに加わっています。 進んだ店舗では仮想通貨(欧米では暗号通貨ないしは暗号資産と呼ばれています)にも対応していますが、まだ先行きが見えにくいところがあります。その代わりに登場すれば

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