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出直し金読本005 価値の源泉は希少性

 人類がゴールド(金)と出会い、そこにまず太陽の輝きを見出し、あるいは魔除けのようなものとして、あるいは身を美しく飾り立てる装飾品として利用するようになって、すでに7000年以上の時が流れています。シルバー(銀)も同様で、両者とも、まずは身につけるものとして価値を見出され、やがて通貨としての価値が認められ、長く用いられて来ました。

 これほど長く人類に愛されてきた貴金属ですから、これまでに採掘されてきた量も膨大に違いありません。おそらく誰しもそう思うはずです。ところが実際には、現在地上に存在するゴールド(金)の製品をすべて集めて純金に精製し直したとしても、現時点でおよそ18万〜19万トンに過ぎません。陳腐な云い方になるかも知れませんが、イメージしやすいように競泳用のプールに熔解して流し込んだとすると、およそ3杯半に過ぎません。

 そうしたゴールド(金)の地上在庫のうち、ほぼ半分を占めているのが、じつは装飾品です。金需要の半分は、美しく身を飾りたいという女性たちの思いに支えられている、と云うことでもあります。残りの半分は、中央銀行の公的保有、私的な資産保有、産業用の素材などで成り立っています。そのうち中央銀行の公的保有は3万トン、私的な資産保有もほぼ似たようなものです。

 これが人類が7000年の歳月をかけて採掘し続けてきた結果です。じつに僅かなものという他ありません。しかし、この希少性こそが、ゴールド(金)の持つ価値の源泉のひとつとも云えます。金融政策の魔法のように、語弊を承知の上で云えば、簡単には増やせないのです。

 もういちど繰り返します。金需要で圧倒的な比率を示しているのは装飾品です。中央銀行の保有する金地金でもなければ、個人が保有する金地金や金貨でもありません。現物のゴールド(金)は、なにはともあれ通貨とか資産である前に、まず装飾品です。

 ところが、前回紹介したようにビットコイナー(仮想通貨愛好家)の間では、仮想通貨をデジタルゴールドと呼ぶ向きがあります。おそらくゴールド(金)の通貨的側面を見て、そう名付けているのでしょう。しかし現物のゴールド(金)需要の実態を理解した上で、それでもなおデジタルゴールドと呼ぶのかどうか。すこし興味のあるところです。


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