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スピノザの診療室

またしてもAudibleです。
「スピノザの診療室」なんだろう???清々しい読了感というのかな???
とても良い小説でした。

なんか難しそうな話かな???という入口でしたが、どんどん深みにハマっていく。

仕事で往復4時間の長い運転をする機会があったので、ほぼ車の中でFMトランスミッターで飛ばして聴いた感じなんだけど、途中にノイズが入ったり、カーナビの声で邪魔されたりするとイライラするほど没入してしまいました(笑)

孤高の哲学者と医療をどう絡めてくるのか??という期待だったのだが、とても上手に、こういう展開かとやられた感もあった。

ネタバレになるので、深く内容は書かないが、主人公の妹を看取り、甥っ子を引き取ることを決意した天才医師が出世を捨てて甥と生きる道を選ぶ。

才能と努力は周りが放っておかない。

いろいろな患者を看取り、その都度、哲学的な視点で死について彼は論じる。

甥とのやりとりでこんな場面が出てくる。

甥 それがスピノザですか???

彼 こんな希望のない、宿命論みたいなものを提示しながら、スピノザの面白いところは、人間の努力というのを肯定した点にある。
全てが決まっているなら、努力なんて意味がないはずなのに、彼は言うんだ。「だからこそ努力が必要だと」

中学生の甥にスピノザについてこう答える。

甥は「難しいです」と答えるんだけど、私は希望にあふれた論理展開だと思うと
返答する。

そして彼の先輩の有能な医師、Hさんについてこうも語る。

何でもできるという万能感を抱えながら、無限に走る方がずっと過酷さ。

甥には難しいかもしれないが、一つ一つの言葉に愛があふれていて、私の心にも刻まれる。

きっと毎日死と向き合いながら、闘っている彼の背中が甥に甥の母が死んでしまったことについて答えているんだと感じた。

そして、こう言い切る。

意思や祈りや願いでは世界は変えられない。

なぜか難しい所を切り抜いてしまったが、こういうやりとりだけではなく、物語として面白い。

本屋大賞1位は成瀬だったけど、この本は全く違う面白さがあって、個人的には成瀬と甲乙つけがたいくらいの読了感だった。

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