心にも免疫がある

今回は接種理論についてご説明をしていきます。

まず、はじめに「接種」という言葉を聞いて何を思い浮かべますか?

おそらく、多くの人が思い浮かべるのが、
「予防接種」だと思います。

接種理論とは、人間の心理の一連の流れのことを言います。

「一度弱い反論に打ち勝つことで、その後どんなに反論されても打ち負けることのないような強い心の準備をするようになる」

このような心理の流れを“接種理論”と呼び、
予防接種と同じ原理です。

例えばインフルエンザの予防接種では、
インフルエンザにかからないようにするために、インフルエンザウイルスを弱めたバージョンのウイルス(ワクチン)を体の中に注射します。すると、体はそのワクチンを撃退します。ワクチンは非常に弱めのウイルスなので、体はそのウイルスに打ち勝つことできます。

そして一旦撃退すると、一度弱めのウイルスにかかった体には抗体ができるようになります。すると、その後は本物のインフルエンザウイルスにもかからないような抵抗力のついた強い体となります。

この身体的な原理を、心理的な面に当てはめたのがこの接種理論です。

一度弱めの反論をされ、それに打ち勝つことで、その後は強い反論にも負けないような強い心がになっているということですね。いわば他者からの説得に強くなるということです。

もう少しイメージをしやい例をあげます。

高校生のAくんは、大学受験の勉強をするために個別指導の塾に通っていました。しかし、
ある時Aくんは隣のクラスの同級生のBくんからこんな話を持ちかけられました。

「受験をするのであれば、個別指導塾よりも、ライバルがいる環境切磋琢磨できる集団塾のほうがいいよ。うちのクラスの人も、受験する人はほとんどみんな集団塾に通ってるよ。Aくんも集団塾にしなよ」

するとAくんは、次第に不安になってきました。「もしかしたら今のまま個別指導塾に通ってたら取り残されるのかな…?本当に集団塾のほうがいいのかな…?」と何度も思うようになりました。

しかし、よくよく考えてみると、集団塾に通うBくんのクラスの人が目指すような大学というのは、自分が目指す大学とは違うということに気づきました。そしてAくんは「やっぱり僕にとっては、自分のニーズに合わせて指導してくれる個別指導塾で勉強するのがベストだ」と再確認し、それ以前にも増して一層勉強に身が入るようになったのです。

この場合、Aくんに接種理論が働いていることがわかります。

Aくんは、はじめに「個別指導塾に通っている」という自分の立場に対して、一旦「集団塾のほうがいい」という弱い反論を出されています。そして一瞬、不安がよぎります。しかし、その後よくよくと考えてみると「集団塾に通う人と自分は違う」ということがわかり、「やっぱり自分は個別指導塾のほうがいい」ということを再認識しました。

つまり一度反論に打ち勝つことによって、以前よりもまして勉強に身が入ることになったのです。

今後、同じように「こっちの塾のほうがいい」という噂(反論)を耳にしても、もうAくんの心は動じることは中々ありません。すでにAくんの心には説得に対する抗体がついており「自分にとっては個別指導塾がベスト」という強い信頼が出来上がっているからです。

人は自分の意見を反論されたときに、その反論をはね返そうとして、自分の意見をより強く
主張するようにできています。

日本は特に相手の意見を素直に受け入れる事は大切という風潮があります。

しかし、なんでもかんでも受け入れてしまうと、自分が何をしたいかわからなくなってしまい、相手の意見に左右され、いずれは疲れ果て心が病んでしまう事があります。

そうならないようにするためにも、相手意見を聞いた上で、自分の考えを伝える事はとても大切です。

接種理論はビジネスの分野でも活かせる場面があるので、ビジネスマンの方もそうでない方も
一度、調べてみてはいかがでしょうか。