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テレビ局の進化が、日本を元気にする  2)コンテンツプラットフォームの確立 課題編

以下からの続き、

 「シリーズ:テレビ局の進化が、日本を元気にする」のトップライン編:コンテンツの拡販では、配信ビジネスを、もう一つの柱にして、収益モデルの多角化について触れました。ここでは、その”裏舞台”におけるビジネス課題について考えていきます。


2)コンテンツプラットフォームの確立

 突然ですが、ファミリーコンピューター用ソフトとして1987年に発売された『ファイナルファンタジー』(1作目)は、何人で制作されたでしょうか?そして、30年後の2016年に発売された『ファイナルファンタジーXV』の制作は何人でしょう?

答えは、以下↓

1987年の1作目『ファイナルファンタジー』は、たった5人のスタッフによって作られました(坂口博信、天野喜孝、寺田憲史、ナーシャ・ジベリ、植松伸夫)。一方、ナンバリング最新作(2023年5月現在)である『ファイナルファンタジーXV』(FF15)(2016年)では、なんと2468人ものスタッフが関わっています。つまり、約30年間で500倍近くにまで増えたことになります。

データ分析で読み解くビデオゲーム史

 ゲーム業界は、IT技術の進歩に伴って、ゲーム機は数年に一回リニューアルされ、それに伴う制作技術や表現方法も日々進化しています。現在のメジャータイトルは、2000~3000人規模で作っているといわれています。では、テレビ業界は制作実態はどうでしょうか?

課題:コンテンツ制作のガラパゴス化

 テレビ局は、フロー型の情報発信と県域免許制による放送波の独占により、強固なビジネスモデルを作りました。そして、絶大なリーチ力を達成できることで、コンテンツとくに映像制作の領域において、多くの制作者が目指す先となっていきました。しかし、この成功の裏に、現在のテレビはオワコンとささやかれる原因となる”コンテンツ制作のガラパゴス化”が作られてしまったのです。では、ガラパゴス諸島に住む動植物のごとくどのように進化して、課題化したのか、3つの事象を見ていきましょう。

課題その1.早すぎたビジネスモデルの進化

 コンテンツ制作において、テレビ局のビジネスモデルの完成度が高いゆえに、新しい市場を構築する目線が外に向かなかったのが現在の課題の一つだと考えらます。では、テレビのビジネスモデルがどれだけ完成度が高いかを、新聞と比べてみましょう。

<新聞の特徴>
1.収益:ToC 月額課金 & ToB 広告販売
2.情報:文字と絵
3.時間:毎朝夕宅配
4.利用:2人に1人の利用率、複数購読が難しい。

新聞の発行部数と世帯数の推移 作者グラフ化
日本新聞協会

 新聞のビジネスにおける弱点は、媒体の特性上、テレビと違って複数購読が難しく、1社あたりのリーチ力に限界がある。また、個別契約のために、獲得ハードルはもちろん、解約後の復帰においては、相当ハードルが高い特性があります。そして、インターネットとスマホの普及により、無料系代替サービスが出現ですることで、収益モデル自体にダメージを負った。2008年に1世帯当たりの部数が1部を切り、2022年現在、0.53部となり、現在も収益性を回復するすべが見えていない状態です。

 一方テレビは、新聞と比べると

<テレビの特徴>
1.収益:ToB 広告販売
2.情報:文字と絵と動画
3.時間:24時間
4.利用:ほぼ100%のテレビ機器普及率。自由に選局できる。

 テレビ機器こそ生活者負担だが、広告モデルにより番組視聴は無料でできます。1980年には世帯普及率が99%に達し、絶対的なリーチ力を手に入れるとともに、競合参入が実質無い中で、代理販売による集金面モデルで、集金面での社内稼働を効率化しました。この完成されたビジネスモデルにより、テレビ局の経営資源は、通貨指標たる視聴率に向けられ、視聴率を獲得する番組を如何に作るかが目標になっていきました。そして、収益を求めるという一般企業では第一優先となる項目に、視聴率獲得以外の改善がないままに、突如としてではないが、現れるべくして現れた”黒船”に対応しなくてはいけない状態に陥っていったのが現在です。

課題その2.テレビ機器の進化の鈍化

 もう一つは、テレビ機器の進化の鈍化にあります。前述でも触れたゲーム機器は、ファミリーコンピューターが1983年に発売され、その後、様々なゲーム機器が発売されたり、VRやARなど、今も絶えず進化しています。一方、テレビ機器の進化はどのぐらいあったでしょうか?歴史を振り返りながら、進化の鈍化を振り返ってみたいと思います。
 1953年にテレビ放送が開始されると同時に、シャープより国産第一号の白黒テレビが発売されました。その後、1960年カラーテレビが登場。1990年ごろからビデオ(録画)機能が拡充されていきました。しかし、ライブ視聴率によるビジネスモデルが根幹のテレビ業界は、ここから進化の鈍化が始まります。大きく鈍化の象徴たる事件は、2000年代の「コピーワンス」問題(デジタルで録画した素材の取り扱い)。権利関係含めて、業界コンセンサスがなかなかとれず、テレビ機器でのサービス実装が二転三転してしまいました。そしてもう一つが、2010年代に入って起きた「CMオートカット機能」問題。CMオートカット機能を実装したTVメーカー各社の商品が、実質発売停止に追い込まれました。そのため、2000年以降のテレビ機器の大きな変化は、2011年のアナログ停波にともなう、テレビサイズ変更ぐらいです。画面比率が、4:3から16:9へと変わりました。
 このように、2000年に入ってからは、生活者ニーズと業界ニーズのはざまで、TVメーカーが委縮していき、テレビ機器の進化が鈍化し、そうこうしているうちに、電話機器についた動画視聴機能が拡充していき、機器に準ずる技術進化も溜まらないままに、現在のマルチメディア環境にさらされているのです。

課題その3.制作技術の進化の鈍化

 テレビ業界では、上記の業界事情もあり、生活者サイドにおいて番組を受信する機器の”仕様”が長らく変らなかった事で、制作サイドの工夫や努力は、脚本や出演者のブッキングなど、よりソフトの領域に時間が割かれていきました。しかし、インターネットの普及とともに、相対的にテレビ機器の利用が減り、スマホやタブレットなどの新しい機器や仕組みに対応する番組作りを迫られるようなりました。前章でもふれたように、テレビ局は2010年ごろからテレビ放送の補足的な位置付けとしてインターネット配信位置付けてしまい、世界のスタンダードになりつつある配信技術や制作技術の習熟に後れをとってしまいました。海外フォーマットへの対応に関しては、以下の記事がよくまとまっているので、詳細は以下を読んでみて欲しいが、日本のテレビ機器の進化が鈍化したことで、制作技術の進化も鈍化していったのです。

対案編、以下につづく。

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