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デボラ・クロンビー「警視の接吻」

 公園で女性の死体が発見された。紅茶会社のやり手の経営者であり、多くの男性と浮き名を流す美女でもアナベル・ハモンド。
 ダンカン・キンケイド警視とジェマ・ジェイムズ巡査部長のコンビが捜査に乗り出すと、アナベルが死の直前ひとりのストリーロ・ミュージシャンと話していたことが浮かび上がる。
 アナベルの恋人のひとり、ゴードン・フィンチ。その父親、ルイス・フィンチは地域の再開発を一手に手掛け、救世主とも称えられ、保守的な住民からは批判も集める建築会社社長だった。
 そして、アナベルの父、ウィリアムはそのルイスと長年の確執を抱えていたらしい。

 時はさかのぼって1940年代。第二次世界大戦の勃発で、ロンドンの下町のルイス少年はサリー州に疎開することになる。
 受け入れ先の屋敷で、上流階級の少年、ウィリアム・ハモンドと出会い、彼と友情を結ぶのだったが。

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 シリーズものの6作目というところから手を出してしまって、それも主人公ふたりの関係や境遇に大きな変化が現れるあたりなもので、そのへんの機微を理解するのにちょっと戸惑った。
 現在と過去の二重構造で進行する深みのある(日本の分類でいう)社会派ミステリ。主人公たちの恋愛事情、家庭の問題なんかも平行して描かれるもので、ちょっと詰め込みすぎの感もあるものの、それは上記の通り藤沢が途中の巻から読んじゃったせいでもある。読みごたえということなら十二分以上。
 重要なキーパーソンがかなり終盤にさしかかってから出てくるのが気にはなったけど、個人的には過去編の方が面白かった。

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