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観客を殺した衝撃の映画「パッション」で振り返るイエス・キリストの処刑シーン

はじめに
映画「パッション」(2004)はキリスト教に関する映画です。
以下の文章は映画の個人的な考察であり、キリスト教自体に関する意見ではありません。私自身キリスト教ではありませんが、すべての宗教における信仰の自由を尊重していることを前提におかせてください。

2004年に「パッション」という映画が公開され、その内容が話題となりました。8歳だった私は教会に通っており、「キリストの映画を観て死んだ人がいるらしい」と牧師に話を聞いた記憶があります。当時は12歳以下ということで年齢制限により観ることができませんでしたが、「なぜ人が死んだのか」を確認すべく16年経ってやっと鑑賞することにいたしました。

以下、映画の内容も記しつつ、キリストの処刑について振り返っていこうと思います。

映画「パッション」とは

2004年に公開されたアメリカの映画「パッション」。メル・ギブソン監督により「新約聖書に記されたイエス・キリストの受難(磔刑)」が描かれています。また、タイトルの「Passion」もイエス・キリストの受難という意味があります。「情熱」という意味も含む英単語ですね。

※磔刑(たっけい)とはゴルゴダの丘で神の子イエス・キリストが十字架にかけられ、ロンギヌスの槍で刺された処刑シーンのことを表します。その磔刑は、人々の苦しみをイエス自らが受け止めた「受難」とされています。

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しかしこの映画「ストーリー」が語られていません。
大枠だと聖書というストーリーに基づいてはいますが、127分間に会話のシーンは少なく、登場人物や背景の説明が一切ありません
あくまで「パッション」はイエス・キリストが処刑されるまでの12時間を再現した映像にすぎないということです。

また、日本でのレイティングはPG-12に設定されており、あまりにリアルで過激な映像から、観客がショック死した映画としても有名です。
ちなみに今回の映像に対し、ヨハネ・パウロ2世は「再現性が高い」と個人的に称したそうです。


なにがそこまで過激なのか

私が観たかぎり、過激な要素は大きく分けて3つあります。

① 単純にグロテスク
② ひたすら一人の善人が痛めつけられているシーンが続く
③ だれもが想像していた磔刑のシーンがリアルにビジュアル化されている

①単純にグロテスク
PG-12ということもあり、流血シーンが続きます。傷ついたイエスの肉体は特殊メイクによりかなりリアルで、いわゆる「グロ映画」にあたるでしょう。イエス・キリスト役ジム・カヴィーゼルの叫び声もかなりリアルです。

②ひたすら一人の善人が痛めつけられるシーンが続く
聖書に触れたことのない人からすると、何の説明もなく罪のないイエス・キリストという人間が虐待される映像を眺めることになります。「エレファント・マン」や「異端の鳥」のように、罪なき人間がひたすら迫害される映像は観ていて胸糞悪い印象しか残りません。

③ だれもが想像していた磔刑のシーンがリアルにビジュアル化されている
「フランダースの犬」に出てきたルーベンスの絵が有名ですが、イエス・キリストの受難は宗教画としてとてもポピュラーです。しかし宗教画は「美しさ」も問われるので今回の映像とは比べ物になりません。この映画はおそらく、その想像をはるかに超える残酷さであることは間違いないでしょう。
キリスト教に親しみのある人なら一度は想像する磔刑シーンゆえに、「受難を美化しすぎだ!」と説教をくらった気分になります。


原作はあくまで聖書

映画の概要として、イエス・キリストが処刑されるまでの12時間が再現されていると紹介しましたが、その12時間とは、新約聖書の「ルカによる福音書22章45から24章まで(だいたい2ページほど)」にあたります。

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私自身、時折読み物として聖書を開くことがあります。主に新約聖書を好んで読んでいるのですが、聖書に書かれている内容をザックリ説明しますと、旧約聖書の場合は「伝説的な昔話」が書かれており、その後の新約聖書には「神の子イエス・キリストの伝記」が書かれています

そんな伝記の中に磔刑シーンが含まれているわけですが、ルカによる福音書22章45から24章までを再現した映画の流れは大きく分けて4つ。

① 裏切られ捕まる
② 裁判で迫害される
③ 十字架にかけられる
④ 死ぬ

そして登場人物は以下

・神の子イエス・キリスト(ユダヤ教とローマ帝国への反逆者として捕まる)
・聖母マリア(イエスの母)
・マグダラのマリア(イエスを信仰する女性)
・弟子達(主にヨハネ、ペトロ、ユダの3人)
・なぞのサタン(聖書では無い表現)
・司祭やヘロデ王やローマ兵(イエスを迫害し、処刑する側)

弟子に裏切られ、司祭に罵られる。婦人二人に見守られながらローマ兵に処刑され、時折サタンが耳打ちする。というのが一連の流れです。

しかし、関係者や司祭の立ち位置や「そもそもなぜイエスがこんなに多方面から憎まれているのか」という大きなポイントの説明が一切ありません。そこには長い長い経緯があるため今回は省かれています。せめて相関図が欲しいところです。

ちなみに、イエスの関係者はなにもせず、ただ見届けているだけになります。罪人扱いされているイエス自身も一切抵抗はしていません。全ては神(父)の御心(望まれていること)であり、これはイエスが受け止めるべき受難だと悟っています。

この映画を観て伝えたいこと

以下、「パッション」を観たうえで、個人的に感じたことを箇条書きにザッと書き出します。

・キリスト教でない方におすすめできない
・事前に予習が必要
・観たからには目をそらしてはいけない


・キリスト教でない方におすすめできない
説明もないままグロテスクな映像を観させられるだけになります。よっぽどの信仰心が無い限り、観ても何も得られない映画だと思いました。胸糞悪いだけです。
私は信仰心がないものの、キリスト教について学ぶ機会が多く、単純に興味があったので個人的には良い学びとなりました。主の祈りにある「我らが罪を許すごとく、我らの罪をも許したまえ」の「罪を許す」の意味がなんとなくわかった気がします。

・事前に予習が必要
キリスト教に関する知識があった場合でも、セリフ等をあらかじめ振り返ることで、映画の再現性がわかります。ユダの口づけや、民衆のシーンなど、カットされたりアレンジされたシーンがありますので、注意して観てみてください。私は鑑賞中、片手に聖書を持ち、時折内容を確認していました。民衆の描写があまりないことが残念ですが、イエスのセリフはそのまま使われています。

・観たからには目をそらしてはいけない
正直かなりグロテスクな映像なので目をそらしたくなります。しかし、磔刑をここまで再現した資料はありません。貴重な映像としてもしっかり見届けるべきだと思います。
また、フィリピンには実際に自らの体を傷つけ、磔刑を体験するお祭りがあります。キリスト教の中でも、自傷し受難を受ける過激な文化がひっそりと存在する。その文化のヒントがこの映画に描かれている気がしてなりません。

映画自体の評価

書いたとおり、信仰心や知識や耐性が問われる映画ですので点数等での評価はできませんし、おすすめもできません。
ただ、聖書は読み物として奥が深く、本当に面白いです。また、聖書に記されたイエス・キリストのカリスマ性は本物。彼の人柄と話術は見習うべきものがあります。お時間あるとき、読み物として触れてみてはいかがでしょうか?

最後に

以上、映画「パッション」の内容を紹介しつつ、イエス・キリストの受難について軽く振り返りました。少しでもイエス・キリストの受難について知っていただくことはできましたでしょうか?

ただいま2020年11月、来月クリスマスを控えていますね。私もこの間ケーキを選びました。
ぜひケーキを食べながら、「あぁこれから約30年後、イエス・キリストは処刑されるのか」と一瞬思い返してみてください。

マリアは男の子を産む。その子をイエスと名付けなさい。この子は自分の民を罪から救うからである。
ーマタイによる福音書2章21節

イエスは大声で叫ばれた。「父よ、わたしの霊を御手にゆだねます。」こう言って息を引き取られた。
ールカによる福音書23章46節

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。よいクリスマスを。



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