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ワンピースに学ぶビタミンCとコラーゲン

”ビタミンCは肌に良い”、なんとなく共通認識である知識だと思います。
肌に良い理由はたくさんあるのですが、その中の一つであるコラーゲン造成作用についてお話をさせていただきます。


ビタミンCとは

一般名をL-アスコルビン酸といいます。
人間は体内で十分量のビタミンCを作ることが出来ないため、何らかの形で外から取り込む必要があります。
アセロラ、キウイ、ピーマン、ブロッコリーなどに比較的多く含まれていますが、熱に弱いため加熱調理によって分解されてしまうことが多いです。スープなどに入れるために野菜を茹でると大半のビタミンCが分解されてしまいます。

厚生労働省が設けた基準では1日100㎎を経口摂取するように、とされています。
ちなみにレモン1個分(100g)には100㎎のビタミンCが含まれているのでレモンまるごと1個を毎日食べれば厚生労働省の基準はクリア、ということになります。

とはいえ、レモン丸ごと1個を食べるのは
結構大変ですよね


ビタミンCとコラーゲン

コラーゲンはアミノ酸が組み合わさってできた細い糸のようなもので、それが大量に合わさることで太いコラーゲン線維が作られます。
この太いコラーゲン線維は皮膚、血管、骨などに大量に含まれており強度と柔軟性を維持するために必要不可欠となっています。

では、ビタミンCはどのようにしてコラーゲン造成に関わっているのでしょうか?
細い糸であるコラーゲンがたくさん合わさって太いコラーゲン線維になる過程でビタミンCが必要になると言われています。ビタミンCが不足すると太くて立派なコラーゲン線維作成に支障がでるわけです。
その結果、皮膚・血管・骨などコラーゲン線維を多く含む組織が脆く壊れやすくなってしまいます。
その結果の一つが次に説明する壊血病です。

船乗りを苦しめた壊血病

血が壊れる病気と書いて壊血病、脆くなった血管が破れてしまう病気です。その結果、体のあちこちで出血し放っておくと命に係わります。

皮下だけでなく、消化管や口腔粘膜からも
出血するようになります

ビタミンC不足に伴い太いコラーゲン線維が十分に作られないことが原因でこの病気を発症します。
通常人間は体内におよそ1500㎎のビタミンCを貯蔵していると言われています。人間はビタミンCを自前で十分量作ることはできませんから、外から摂取しないと減っていく一方です。
体内のビタミンC量が300㎎以下になると壊血病が発症すると言われています。ビタミンCを摂取せずに60~90日過ごした場合に体内ビタミンCの量は300㎎を下回ってくると言われています。

大航海時代、船乗りたちが何カ月も海の上に居続けることは稀ではありませんでした。
冷蔵庫も無い時代、保存食ばかり食べていた船乗りたちはビタミンC欠乏状態に陥ります。壊血病は当時多くの船乗りたちの命を奪った大変恐ろしい病でした。
その後、柑橘類が壊血病に効くと発見されたのは18世紀になってからでした。


私が初めて壊血病を知ったのは医学生だった頃…ではなく、子供の頃にワンピースを読んだ時でした。
ワンピース第五巻にてゾロの賞金首狩り仲間であるジョニーが登場します。彼は相方のジョニーが病気だと必死で訴えます。

突然青ざめて気絶を繰り返す…!!
原因はまったくわからねェ
しまいにゃ歯も抜け落ちるわ 
古傷が開いて血ィ噴き出すわで
ワンピース 第5巻 42話  ”ヨサクとジョニー”


その様子を見たナミは”ライムの果汁を持ってきて”と指示を出します。この症状は壊血病によるもので、治療はライムの果汁を飲ませることだと彼女は知っていたわけです。

船乗りなら知っていて当然、と
本人は言っていましたがナミさんすごいですよね


この一件で旅を続けるにはきちんとした栄養管理が必要だと気付いたルフィたちはコックを探しに海上レストランバラティエに行く、という流れになっています。


壊血病は陸で暮らす現代人にとっては非常に稀な疾患になりつつあります。
しかし、慢性的なアルコール中毒患者・高度喫煙者・高齢者などはビタミンC不足に陥りやすいとも言われています。
我々が積極的にビタミンCを摂るよう心掛ける必要は尚もあると思われます。



【参考文献】
ビタミンCとコラーゲンの生成 , 佐藤 守 ほか, 日本農芸化学会誌 64(12), 1850-1853, 1990
Vitamin C–squalene bioconjugate promotes epidermal thickening and collagen production in human skin, R. Gref et al, Scientific Reports volume 10,  Article number: 16883 (2020)
壊血病は過去の病気ではない,佐藤 安訓読 ほか, ビタミン 82(11), 609-611, 2008
ワンピース, 尾田 栄一郎, 集英社, 第5巻42話 ”ヨサクとジョニー”




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